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3年生2学期

10月2日(月)晴れ 花園華凛との日常その26

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 10月初週の豆腐の日。
 急に秋の涼しさがやって来て少しだけ喉が痛めてしまったので、今日の夜からは寝る時にもう少し布団をかけようと思う。

「リョウスケ、大倉さん。おはようございます」

 そんな今日も花園さんが大倉くんに挨拶する姿を目撃する。
 僕が挨拶を返すと、大倉くんもやや恥ずかしがりながら続けて言う。
 すると、花園さんはわざわざ大倉くんの前まで近づいていく。

「よく聞こえませんでした」

「お……おはようございます」

「しっかり聞こえました」

 そう言いながら花園さんは満足そうにその場を離れていく。
 完全に反応を見るためにやっているので、僕は花園さん本人にどういうつもりか聞きに行く。

「どうと言われても……コミュニケーションですが」

「いや、絶対面白くなってきてるでしょ」

「否定はしません。ですが、大倉さん本人が嫌がっているのですか?」

「嫌がってはないけど……困ってる感じはある」

「でしたら、リョウスケが気にしなくてもいいでしょう」

「ま、まぁ、そうなんだけど……」

 花園さんからすると何でもないことなのかもしれないけど、大倉くんのような男子にとってはなかなか難しい問題なのである。
 高校入学初期の僕も同じようなことをされたら、色々思ってしまうことだろう。

「わかりました。それでは華凛が本人へ聞いてきます」

「えっ!?」

 そう言うと、花園さんは再び大倉くんの席まで行ってしまう。

「大倉さん。ちょっといいですか?」

「な、なに?」

「大倉さんは華凛に話しかけられるのは嫌ですか?」

「い、いや……」

「それでは、近づかれるのは嫌ですか?」

「そ、そんなことはないけど……」

「けど?」

「……花園さんから、その……」

「はっきり言ってください」

「……い、いい匂いがするから……なんか緊張して」

「…………」

 僕が駆け付けた時には大倉くんがその台詞を言って、花園さんが硬直していた。
 その直後、花園さんは珍しく顔を赤くしながら撤収していった。

「ど、どうしよう…………絶対キモいって思われた」

 果たして、大倉くんと花園さんの関係はどうなってしまうのか……関係者であるけど、少しだけ楽しむ自分がいるのはかなり申し訳ない。
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