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3年生2学期

9月20日(水)曇り 大山亜里沙と産賀良助Ⅱ

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 長らく利用していないバスの日。
 夏休み明けからあまり書いていなかったけど、月水の塾は変わらず続いていた。
最近は授業範囲も終えて難しいところを重点的にやったり、小テストを繰り返したりと、より本番に向けた内容になっている。

「やっほー みーちゃんに産賀くん。今日も元気してたー?」

 そんな中でも塾が始まるまでの時間や休憩中は、雑談しながら和やかに過ごせていた。
 ある一人を除いては……

「亜里沙もお疲れ」

「おつー……」

「なんか部活で会わなくなると意外に会わないもんだねぇ。今度、瑞姫と一緒にどっか行っとく?」

「そんな暇はないでしょ」

「ちょっとくらいは暇あると思うけど」

「……考えとく」

 大山さんがそう言うと、重森さんはやれやれという反応を見せた。
 夏休み明け直後から大山さんは少しテンションが低かったけど、体育祭が終わった後もその状況は継続していた。
 教室では隣の席だけど、以前よりは絡む回数は少ないし、どこか気だるげな印象を受ける。
 受験が間近に迫って緊迫しているのか、はたまた別の理由なのか……

「うーん……遊んでリフレッシュしてもらう作戦は失敗か」

「ご、ごめんね。美里ちゃんばっかり言わせて」

「いいのいいの。私は首ツッコむタイプだから。まぁ、時期を考えたらナイーブになってもおかしいわけじゃないし。亜里沙はああ見えて結構繊細だから」

 重森さんは塾しか会う機会がないから色々な方法で真意を探ろうとしているけど……ああ見えてではなく、大山さんは元々繊細だと僕は思っている。
 また何か厄介ごとに巻き込まれているなら、話くらいは聞けるのに――

「うぶクン、ちょっといい?」

「えっ? あっ、うん」

 突然の指名に僕は驚きつつも大山さんの元に駆け寄る。

「ここの問題ってさ。これ使うので合ってる」

「えっと……そうそう。合ってるよ」

「ありがと……それと、2人にもお礼言っといて」

「2人に?」

「その……気遣ってくれてるはわかるから。でも、毎度の如く一時的なものだから、もう少し放っておいてくれたら、いつも通りに戻るから」

 大山さんはそう言いながら微笑みを見せる。
 それを見た僕は色々言いたかったけど、「わかった」と頷いておいた。

 いつもよりは元気がないのは確かだけど、大山さん的には自分で何とかできることだと考えているのだろう。
 それなら大山さんから話そうと思ってくれるまで待つしかない。
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