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3年生2学期

9月19日(火)曇り 後輩との日常・姫宮青蘭の場合その21

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 祝日明けの苗字の日。
 本日の文芸部では日葵さんが持ち込んだお菓子でささやかながらも部活対抗リレーのお疲れ様会が開かれる。
 日葵さん的にはもっと盛大にしたかったのかもしれないけど、実際に活躍したのは5人だけで、文芸部にとって本番の文化祭が待ち構えているので、小規模に収めてもらった。

 そんな中、リレーで転んだ跡にまだガーゼを付けている姫宮さんは少々元気がないようだった。

「姫宮さん、このお菓子めっちゃ美味しいですよ!」

「そうなんだ」

「そ、そうなんですよ」

「こら桐山。青蘭は今、療養中の身なんだからそっとしてあげなって」

「うぅ……すみません、姫宮さん」

 日葵さんと桐山くんの会話から察するに、部活に来る前からこのテンションは続いているらしい。
 あまり痛くないと言っていたけど、怪我をするとちょっと気持ちが暗くなってしまう気持ちはわかる。
 何か元気づける方法はないだろうかと考えていると、ご褒美を欲しいと言われていた件を思い出す。

「姫宮さん、ちょっといい?」

「どうしたんですか」

「リレーを頑張ったらご褒美が欲しいって言ってたじゃない? あれの内容を聞こうと思って」

「それは。でも私は本番で転んでしまったから」

「転んだ後に頑張って走ってたじゃない。だから、遠慮せずに言ってみてよ」

 実際、姫宮さんが諦めずに頑張ったのは事実なので、姫宮さんから言われたら受けるつもりでいた。
 すると、姫宮さんは少し悩んだ後、僕にもう少し近づくように手招きする。
 そして、耳元で囁くように言う。

「私が欲しいご褒美は――良助先輩とのお出かけです」

「えっ? それは……」

「またの名をデートとも」

「うえっ!?」

 その単語に思わず声を上げてしまったので、周りの注目が集まる。

「あっ、いや……なんでもないよ」

「だから、良助先輩は然るべき相手に許可を取りに行ってもらわなければいけません。それでもいいんですか」

「そ、そう言われても……」

「冗談です」

「は、はぁ?」

「良助先輩を少し困らせてみたかっただけなので。これがご褒美で十分です」

「で、でも……」

「本当に充分です。元気が出ました」

 姫宮さんはそう言い終えると、ようやくお菓子に手を付け始めた。
 元気になったのなら良かったけど……僕としてはかなり複雑な気持ちだった。
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