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3年生夏休み

8月30日(水)晴れのち曇り 岸本路子との夏創作Ⅲその5

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 夏休み最終日のハッピーサンシャインデー。
 高校生活最後の夏休みはほとんど塾の記憶で埋まると思っていたけど、良くも悪くも色々なことが起こったので、想定よりも書くことには困らなかった。
 
 そんな最終日は午後からやや天気が悪くなったものの、雨が降るまではいかなかったので、路ちゃんと無事にデートができた。
 とはいっても蒸し暑さからお互いにあまり動き回る気はしなかったので、大半は路ちゃんお気に入りのカフェで時間を過ごした。

「夏休み中は部活以外だと花園さんとあまり絡まなかったけど、路ちゃんは遊びに行ったりしたの?」

「うん。お盆休みの期間とか、ちょっと時間が空いた時に通話で話したりしたわ」

「それは良かった。僕も昨日がっつり遊べたから……おかげでちょっと喉が変な感じだけど」

「そんなに叫んで歌ったの?」

「いや、どっちかというと喋り過ぎたせいだと思う。もちろん、声張ったのもあるんだろうけど」

「そう考えると……良助くんとこうやってゆっくり話せるのは何だか久しぶりな気がする」

 確かに塾ではあまり盛り上がるような話はしなかったし、部活も基本は作業をするか後輩と話すかだったので、路ちゃんとの会話は最低限になっていたかもしれない。

「じゃあ、今日はがっつり話そう……って、夏休み中は一緒の時間が多かったから知らないことが少なそうだけど」

「それでも話すことはあるわ。たとえば……進路の話とか」

「……休み明けの模試で判定が出たら、志望校も定まってくるのかな」

「正直に言うと……たくさん勉強しても身に付いているかはあまり自信がないわ。だから、次の試験もすごく不安」

「僕も自信があると言ったら嘘になるけど、この休みで頑張った分は無駄じゃないと思う。路ちゃんが頑張ってた姿は近くで見てから、そこは保証するよ」

「ありがとう……ごめんなさい。せっかく夏休み最後の日っていう貴重な時間なのに、盛り上がらない話をして……」

「全然大丈夫。むしろ……夏休み最後の日だからこうして路ちゃんとゆっくりできて良かった」

「……わたしも」

 路ちゃんがそう言った後、お互いに暫く見つめ合う。
 最近になってようやくこういうことを恥ずかしがらずに言えたり行動で示したりできるようになったけど……僕は浸り過ぎていないだろうか。

「……良助くん。今、ちょっと照れた」

「うっ……はい」

「ふふっ。今日はわたしの勝ちってことで」

「じゃあ、話は変わるけど、最近創作のために読んだミステリー作品が……」

 その後、僕と路ちゃんは趣味や遊びの話を中心に話し込んだ。
 迫りつつある試験や進路希望の不安はあるけれど、お互いに助け合えば何とか駆け抜けられると思う。
 さすがに明日は休み明け特有の気だるさはあるだろうけど、今日のおかけで明日からも頑張れそうな気がした。
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