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3年生夏休み
8月14日(月)曇り 大山亜里沙の夏焦り
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夏休み24日目の専売特許の日。
再び迫っている台風の影響で場所によっては大雨が降っているようだけど、こちらの地域では昼間も過ごしやすい気温だった。
そんな今日はまだ塾が休みだったので、久しぶりに一人で外出する日になった。
貴重な休みに一人で過ごせる時はどうしても家に籠りがちだけど、たまには外出して気分転換するのもいいと思ったからだ。
とはいっても、目的地は相変わらずゲームショップなのであまり代わり映えはしないのだけど。
「あれ? うぶクンじゃん」
しかし、そんなゲームショップで聞きなじみがある声が聞こえる、
「こんにちは。大山さんは……何をしに?」
「何をって……ウインドウショッピング的な?」
「そうか。大山さんもゲームしないことはないか……」
「うん。まぁ、どっちかというとDVDの方見に来たんだケドね」
そういえばこの店はレンタルショップでもあるからその目的で来る人もいるんだった。
大山さんとは塾で会っていたけど、他の友達といる時が多かったから話すのは久しぶりだ。
「へぇ。何か見たいやつは見つかった?」
「うんとね、気になってたのは――」
「大山?」
大山さんの話を遮ったのは見覚えがないけど、同い年くらいの男子だった。
その男子を見た大山さんは僕の後ろに一歩下がる。
「……知り合い?」
「え、えっと……藤宮。中学の同級生で……」
大山さんは途中で言葉を止めて必死に目で何かを訴えてくる。
それだけではさすがに何も察せなかったけど……
「もしかして……この人が彼氏さん?」
藤宮くんの発言から何となく事情を察する。
この人はイマジナリー彼氏の件を知っている人だ。
ただ、その後の大山さんの行動は予想できなかった。
「そうなの! ねっ、産……原!」
そう言いながら大山さんは急に腕を組んでくる。
その行動に僕は一瞬驚いてしまったけど、ここで否定するわけにはいかなかったので、僕はぎこちないながらも頷いた。
「あ、ああ。そうだよ」
「そうか。邪魔して悪かった。大山、また今度」
「う、うん。じゃーね」
そう言いながら藤宮くんは店内を進んでいったので、僕と大山さんは反対に店を出てしばらく歩いて店から距離と取った。
そして、周りを確認した後、大山さんは大きく頭を下げる。
「ゴメン! うぶクン! 変なこと言っちゃって!」
「い、いや、事情はわかってるから」
「本当にゴメン……あいつなの。アタシにしつこくメッセージ送ってたの……」
「えっ!? 本人だったのか……」
それならば大山さんが焦って僕を彼氏役にするのも納得ができた。
すると、大山さんはスマホを取り出して急に電話をかけ始める。
「もしもし、ミチ?」
「なっ!?」
「ゴメン! 実は今はうぶクンと一緒で……」
それから大山さんは先ほどの一件を路ちゃんに対して丁寧に説明していく。
僕も驚いたけど、いきなり電話をかけてそんなことを言われた路ちゃんはもっと驚いていた。
「だから、全然うぶクンには非は無くて……」
『だ、大丈夫だよ、亜里沙ちゃん。事情はよくわかったから。ちょっと良助くんに代わってもらえる?』
「う、うん。うぶクン、ミチから」
『良助くん、今亜里沙ちゃんは混乱してるから落ち着かせてあげてね』
「わ、わかった」
それから電話が切れた後、大山さんは深呼吸を繰り返す。
「ふー……うぶクン、マジで……」
「もう謝罪は大丈夫だよ。少しは落ち着けた?」
「うん。でも……いくらバレないためだからって、その場で取り繕うのは良くなかった。絶対いつかバレる嘘なのに」
「この辺りでさっきの人に会うということは、今後も遭遇する可能性もあるけど……まぁ、その時はその時で何とかするよ」
「でも……」
「心配しないでいいから。それよりもせっかくの休みなんだから、お互い残りの時間はいい日にしよう」
まるで僕まで良い日じゃないように言ってしまったけど……この後にゲームショップに行けないのはちょっとつらいかもしれない。
今日のところは何とか誤魔化せたけど、今後はどうなるのだろうか。
再び迫っている台風の影響で場所によっては大雨が降っているようだけど、こちらの地域では昼間も過ごしやすい気温だった。
そんな今日はまだ塾が休みだったので、久しぶりに一人で外出する日になった。
貴重な休みに一人で過ごせる時はどうしても家に籠りがちだけど、たまには外出して気分転換するのもいいと思ったからだ。
とはいっても、目的地は相変わらずゲームショップなのであまり代わり映えはしないのだけど。
「あれ? うぶクンじゃん」
しかし、そんなゲームショップで聞きなじみがある声が聞こえる、
「こんにちは。大山さんは……何をしに?」
「何をって……ウインドウショッピング的な?」
「そうか。大山さんもゲームしないことはないか……」
「うん。まぁ、どっちかというとDVDの方見に来たんだケドね」
そういえばこの店はレンタルショップでもあるからその目的で来る人もいるんだった。
大山さんとは塾で会っていたけど、他の友達といる時が多かったから話すのは久しぶりだ。
「へぇ。何か見たいやつは見つかった?」
「うんとね、気になってたのは――」
「大山?」
大山さんの話を遮ったのは見覚えがないけど、同い年くらいの男子だった。
その男子を見た大山さんは僕の後ろに一歩下がる。
「……知り合い?」
「え、えっと……藤宮。中学の同級生で……」
大山さんは途中で言葉を止めて必死に目で何かを訴えてくる。
それだけではさすがに何も察せなかったけど……
「もしかして……この人が彼氏さん?」
藤宮くんの発言から何となく事情を察する。
この人はイマジナリー彼氏の件を知っている人だ。
ただ、その後の大山さんの行動は予想できなかった。
「そうなの! ねっ、産……原!」
そう言いながら大山さんは急に腕を組んでくる。
その行動に僕は一瞬驚いてしまったけど、ここで否定するわけにはいかなかったので、僕はぎこちないながらも頷いた。
「あ、ああ。そうだよ」
「そうか。邪魔して悪かった。大山、また今度」
「う、うん。じゃーね」
そう言いながら藤宮くんは店内を進んでいったので、僕と大山さんは反対に店を出てしばらく歩いて店から距離と取った。
そして、周りを確認した後、大山さんは大きく頭を下げる。
「ゴメン! うぶクン! 変なこと言っちゃって!」
「い、いや、事情はわかってるから」
「本当にゴメン……あいつなの。アタシにしつこくメッセージ送ってたの……」
「えっ!? 本人だったのか……」
それならば大山さんが焦って僕を彼氏役にするのも納得ができた。
すると、大山さんはスマホを取り出して急に電話をかけ始める。
「もしもし、ミチ?」
「なっ!?」
「ゴメン! 実は今はうぶクンと一緒で……」
それから大山さんは先ほどの一件を路ちゃんに対して丁寧に説明していく。
僕も驚いたけど、いきなり電話をかけてそんなことを言われた路ちゃんはもっと驚いていた。
「だから、全然うぶクンには非は無くて……」
『だ、大丈夫だよ、亜里沙ちゃん。事情はよくわかったから。ちょっと良助くんに代わってもらえる?』
「う、うん。うぶクン、ミチから」
『良助くん、今亜里沙ちゃんは混乱してるから落ち着かせてあげてね』
「わ、わかった」
それから電話が切れた後、大山さんは深呼吸を繰り返す。
「ふー……うぶクン、マジで……」
「もう謝罪は大丈夫だよ。少しは落ち着けた?」
「うん。でも……いくらバレないためだからって、その場で取り繕うのは良くなかった。絶対いつかバレる嘘なのに」
「この辺りでさっきの人に会うということは、今後も遭遇する可能性もあるけど……まぁ、その時はその時で何とかするよ」
「でも……」
「心配しないでいいから。それよりもせっかくの休みなんだから、お互い残りの時間はいい日にしよう」
まるで僕まで良い日じゃないように言ってしまったけど……この後にゲームショップに行けないのはちょっとつらいかもしれない。
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