860 / 942
3年生夏休み
8月11日(金)晴れ 後輩との日常・三浦将基の場合その7
しおりを挟む
夏休み21日目の山の日。
世間では今日から里帰りが始まっているようだけど、我が家は明日から出かけるので今日はフリーだった。
なので、文芸部の集まりとしてカラオケに参加することになった。
他の部員もこの日は都合が良かったのか全員参加だったので、計9人の大人数でカラオケ屋さんに入っていく。
当然ながら普段使う部屋では入りきらないので、少し大きめの部屋に通された。
「飲み物は以上で良かった? それじゃあ、産賀センパイ達は先に行っててください」
ただ、日葵さんがこういう大人数に慣れているのか先導してスムーズに進めてくれる。
僕もカラオケは久しぶりかつこんな人数で来たことがないので、非常にありがたい。
「産賀さん……」
そんな中、部屋に向かう途中で三浦くんがやや低いテンションで話しかけてくる。
「どうしたの? まさか体調が……」
「カラオケって何歌えばいいんですか!?」
「あー……」
「ボク、普段から来ないし、何なら女子が混ざってる中で歌うの初めてなんですよ!」
不安のせいかいつになく声が出ているけれど、口にしているのは声を出したくない悩みだった。
「あんまり歌う曲は気にしなくていいと思うよ。知らない曲でもなんとなくで盛り上がれるだろうし」
「そう言われても……その盛り上がるような曲を知らないんです」
「三浦くん、普段はあんまり音楽聞かない感じ?」
「聞かないことはないですけど……どっちかというとゲームBGMとか」
「なるほど。でも、小さい頃に見てたアニメとか、学校で習った曲とかは歌えるでしょ?」
「まぁ、たぶん……」
「だったら、それを歌えばいいよ。三浦くんとは2歳差だけど特撮の曲とか、僕や三浦くんも共通して見てる作品はあるだろうし、学校で習った曲ならみんなで歌える」
「そ、そういうもんですか……」
「うん。本当に無理そうなら僕らを巻き込んでいいから」
「わ、わかりました……」
三浦くんは少し不安そうだったけど、周りの盛り上がりを気にするなら今言ったような選曲で何とかなると思う。
それに日葵さんなら本当に知らない曲でも腐すようなことは言わないはずだ。
せっかく来たんだから三浦くんも楽しめるような会に……
「りょ、良助くん」
「うん? どうしたの、路ちゃん?」
「わ、わたし……こんなに大人数の前で歌うのは初めてなのだけれど、何を歌ったらいいと思う」
「あー……」
「ご、ごめんなさい。カラオケに行くのはわかっていたのに……」
まさか同じような質問をこの短時間で2回も受けるとは思わなかった。
その後、それぞれ持ち歌やら流行りの歌やらを披露していたけど、三浦くんと路ちゃんも楽しそうに参加できていた。
緊張しているので曲数はそれほど歌えていなかったけど、実際に歌ったら盛り下がるようなことは一回もなかった。
一方、他の部員は思ったよりも歌が上手い人ばかりで、特に印象的だったのは……
「ヴォォォォイ!」
「……姫宮さん、あんな声出るんだ」
「驚きました? 青蘭のかくし芸なんですよ~」
姫宮さんのデスメタルを歌った時だった。
「力強い姫宮さんも素敵だ……」
「良助先輩。私の美声に聞き惚れましたか」
「う、うん。凄かった」
そう言うと姫宮さんとなぜか日葵さんも満足そうな表情になったので、もしかしたらこれを披露したかったがためのカラオケ会だったのかもしれない。
世間では今日から里帰りが始まっているようだけど、我が家は明日から出かけるので今日はフリーだった。
なので、文芸部の集まりとしてカラオケに参加することになった。
他の部員もこの日は都合が良かったのか全員参加だったので、計9人の大人数でカラオケ屋さんに入っていく。
当然ながら普段使う部屋では入りきらないので、少し大きめの部屋に通された。
「飲み物は以上で良かった? それじゃあ、産賀センパイ達は先に行っててください」
ただ、日葵さんがこういう大人数に慣れているのか先導してスムーズに進めてくれる。
僕もカラオケは久しぶりかつこんな人数で来たことがないので、非常にありがたい。
「産賀さん……」
そんな中、部屋に向かう途中で三浦くんがやや低いテンションで話しかけてくる。
「どうしたの? まさか体調が……」
「カラオケって何歌えばいいんですか!?」
「あー……」
「ボク、普段から来ないし、何なら女子が混ざってる中で歌うの初めてなんですよ!」
不安のせいかいつになく声が出ているけれど、口にしているのは声を出したくない悩みだった。
「あんまり歌う曲は気にしなくていいと思うよ。知らない曲でもなんとなくで盛り上がれるだろうし」
「そう言われても……その盛り上がるような曲を知らないんです」
「三浦くん、普段はあんまり音楽聞かない感じ?」
「聞かないことはないですけど……どっちかというとゲームBGMとか」
「なるほど。でも、小さい頃に見てたアニメとか、学校で習った曲とかは歌えるでしょ?」
「まぁ、たぶん……」
「だったら、それを歌えばいいよ。三浦くんとは2歳差だけど特撮の曲とか、僕や三浦くんも共通して見てる作品はあるだろうし、学校で習った曲ならみんなで歌える」
「そ、そういうもんですか……」
「うん。本当に無理そうなら僕らを巻き込んでいいから」
「わ、わかりました……」
三浦くんは少し不安そうだったけど、周りの盛り上がりを気にするなら今言ったような選曲で何とかなると思う。
それに日葵さんなら本当に知らない曲でも腐すようなことは言わないはずだ。
せっかく来たんだから三浦くんも楽しめるような会に……
「りょ、良助くん」
「うん? どうしたの、路ちゃん?」
「わ、わたし……こんなに大人数の前で歌うのは初めてなのだけれど、何を歌ったらいいと思う」
「あー……」
「ご、ごめんなさい。カラオケに行くのはわかっていたのに……」
まさか同じような質問をこの短時間で2回も受けるとは思わなかった。
その後、それぞれ持ち歌やら流行りの歌やらを披露していたけど、三浦くんと路ちゃんも楽しそうに参加できていた。
緊張しているので曲数はそれほど歌えていなかったけど、実際に歌ったら盛り下がるようなことは一回もなかった。
一方、他の部員は思ったよりも歌が上手い人ばかりで、特に印象的だったのは……
「ヴォォォォイ!」
「……姫宮さん、あんな声出るんだ」
「驚きました? 青蘭のかくし芸なんですよ~」
姫宮さんのデスメタルを歌った時だった。
「力強い姫宮さんも素敵だ……」
「良助先輩。私の美声に聞き惚れましたか」
「う、うん。凄かった」
そう言うと姫宮さんとなぜか日葵さんも満足そうな表情になったので、もしかしたらこれを披露したかったがためのカラオケ会だったのかもしれない。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
彼女は、2.5次元に恋をする。
おか
青春
椿里高校の商業科1年、椋輪 蓮(むくわ れん)。
ある日の放課後、蓮は教室で『孤高の秀才』小石 輝(こいし てる)と遭遇し——!?
笑あり涙あり(あるのか?)の青春ラブコメディー。
少女が過去を取り戻すまで
tiroro
青春
小学生になり、何気ない日常を過ごしていた少女。
玲美はある日、運命に導かれるように、神社で一人佇む寂しげな少女・恵利佳と偶然出会った。
初めて会ったはずの恵利佳に、玲美は強く惹かれる不思議な感覚に襲われる。
恵利佳を取り巻くいじめ、孤独、悲惨な過去、そして未来に迫る悲劇を打ち破るため、玲美は何度も挫折しかけながら仲間達と共に立ち向かう。
『生まれ変わったら、また君と友達になりたい』
玲美が知らずに追い求めていた前世の想いは、やがて、二人の運命を大きく変えていく────
※この小説は、なろうで完結済みの小説のリメイクです
※リメイクに伴って追加した話がいくつかあります
内容を一部変更しています
※物語に登場する学校名、周辺の地域名、店舗名、人名はフィクションです
※一部、事実を基にしたフィクションが入っています
※タグは、完結までの間に話数に応じて一部増えます
※イラストは「画像生成AI」を使っています
檸檬色に染まる泉
鈴懸 嶺
青春
”世界で一番美しいと思ってしまった憧れの女性”
女子高生の私が、生まれてはじめて我を忘れて好きになったひと。
雑誌で見つけたたった一枚の写真しか手掛かりがないその女性が……
手なんか届かくはずがなかった憧れの女性が……
いま……私の目の前ににいる。
奇跡的な出会いを果たしてしまった私の人生は、大きく動き出す……
彼ノ女人禁制地ニテ
フルーツパフェ
ホラー
古より日本に点在する女人禁制の地――
その理由は語られぬまま、時代は令和を迎える。
柏原鈴奈は本業のOLの片手間、動画配信者として活動していた。
今なお日本に根強く残る女性差別を忌み嫌う彼女は、動画配信の一環としてとある地方都市に存在する女人禁制地潜入の動画配信を企てる。
地元住民の監視を警告を無視し、勧誘した協力者達と共に神聖な土地で破廉恥な演出を続けた彼女達は視聴者たちから一定の反応を得た後、帰途に就こうとするが――
18禁NTR鬱ゲーの裏ボス最強悪役貴族に転生したのでスローライフを楽しんでいたら、ヒロイン達が奴隷としてやって来たので幸せにすることにした
田中又雄
ファンタジー
『異世界少女を歪ませたい』はエロゲー+MMORPGの要素も入った神ゲーであった。
しかし、NTR鬱ゲーであるためENDはいつも目を覆いたくなるものばかりであった。
そんなある日、裏ボスの悪役貴族として転生したわけだが...俺は悪役貴族として動く気はない。
そう思っていたのに、そこに奴隷として現れたのは今作のヒロイン達。
なので、酷い目にあってきた彼女達を精一杯愛し、幸せなトゥルーエンドに導くことに決めた。
あらすじを読んでいただきありがとうございます。
併せて、本作品についてはYouTubeで動画を投稿しております。
より、作品に没入できるようつくっているものですので、よければ見ていただければ幸いです!
光のもとで1
葉野りるは
青春
一年間の療養期間を経て、新たに高校へ通いだした翠葉。
小さいころから学校を休みがちだった翠葉は人と話すことが苦手。
自分の身体にコンプレックスを抱え、人に迷惑をかけることを恐れ、人の中に踏み込んでいくことができない。
そんな翠葉が、一歩一歩ゆっくりと歩きだす。
初めて心から信頼できる友達に出逢い、初めての恋をする――
(全15章の長編小説(挿絵あり)。恋愛風味は第三章から出てきます)
10万文字を1冊として、文庫本40冊ほどの長さです。
陰キャの陰キャによる陽に限りなく近い陰キャのための救済措置〜俺の3年間が青くなってしまった件〜
136君
青春
俺に青春など必要ない。
新高校1年生の俺、由良久志はたまたま隣の席になった有田さんと、なんだかんだで同居することに!?
絶対に他には言えない俺の秘密を知ってしまった彼女は、勿論秘密にすることはなく…
本当の思いは自分の奥底に隠して繰り広げる青春ラブコメ!
なろう、カクヨムでも連載中!
カクヨム→https://kakuyomu.jp/works/16817330647702492601
なろう→https://ncode.syosetu.com/novelview/infotop/ncode/n5319hy/
意味がわかると怖い話
邪神 白猫
ホラー
【意味がわかると怖い話】解説付き
基本的には読めば誰でも分かるお話になっていますが、たまに激ムズが混ざっています。
※完結としますが、追加次第随時更新※
YouTubeにて、朗読始めました(*'ω'*)
お休み前や何かの作業のお供に、耳から読書はいかがですか?📕
https://youtube.com/@yuachanRio
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる