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3年生1学期

7月7日(金)曇りのち雨 短冊に願いを乗せて

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 生憎の天気となった七夕。
 ニュースの特集で例年の七夕で晴れの日だった日の方が少ないと言われていた。
 だから、1ヶ月の8月に七夕の行事をやる地域もあるらしい。

「ってことで、今日はせっかくのイベントなので、みんなで願い事書いちゃいましょー」

 そんな今日の文芸部では部長の日葵さんが短冊を持ってきてくれたので、七夕らしく願い事を書く時間が設けられる。
 ただ、他の人に願い事を見られるのは嫌かもしれないという配慮から、短冊に書く名前はペンネームでも良いことになった。

「すみません、ボクら1年生にペンネームとかないんすけど」

「いい機会だから考えて! 別に今日だけのやつでもいいから!」

「わ、わかりました……」

 三浦くんの言い分はごもっともだけど、日葵さんの勢いの前では無力化されてしまう。
 僕と路ちゃんは部長と副部長を経験したから1年生以外のペンネームが何となく誰か把握しているので、3人しかいない1年生が書いたら誰かわかってしまうかもしれない。

 そうして、10分ほど経った後。日葵さんが用意した小さな笹の葉(たぶん本物ではない)に部員の短冊を付けていく。

「それじゃあ、せっかくだし、面白そうな願い事をピックアップするか」

「プライバシーガン無視かよ!?」

「別に見られて困るような願い事書いてないでしょ。暫く飾るんだし」

「い、いや、困る人もいるかもしれないだろ……」

 桐山くんはそう言いながら目をキョロキョロさせる。
 その時点で僕は桐山くんの願い事を何となく察してしまった。
 ただ、桐山くんが察するべきなのは……もっと別のことなのだけど。

「えっと……人心掌握って書いてる人がいるけど……ちゃんと大丈夫な範囲の願いだよね?」

「あれじゃないか? 遠回しにあの人の心を掴みたい、的な」

「おお。そう聞くとちょっぴりロマンティックな気がする……いや、だったら人心掌握って書かなくない?」

「まぁ、それは確かに。あとは……身内との平穏」

「……もしかして、みんな心に闇を抱えてる? 何か心配事あるなら相談乗るよ?」

「相談しづらい話題だから書いてるんだろうに」

「そうかもしれないけどさぁ……あっ、これなんか良くない? 関係の進展」

「なんかざっくりとしているような」

「そう? これも恋愛系だと思うけどなー」

 そんな感じで日葵さんと桐山くんが願い事を読み上げていたけど、当然ながら残りの部員はリアクションしづらかった。
 反応したら自分が書いてしまうとバレてしまうからだ。
 でも、全体的にみんな素直に書いているような気がしたので、闇とまでは言わないけど、ちょっとした悩みや望みを抱えているのかもしれない。

 ちなみに僕は……今年の文化祭が無事成功するようにと書いたので、日葵さんや桐山くんから触れられることはなかった。
 こういう時は我欲じゃない方がいいと思ったんだけど、企画の趣旨とは違ったみたいだ。
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