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3年生1学期
6月22日(木)雨のち曇り 野島実香との日常・再その5
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長らく行っていないボウリングの日。
教室内もいつもの騒がしい雰囲気からテスト前の空気に変わり始めている。
「良さ~ん。テスト範囲で出そうなところ教えてよー」
その流れに乗ってか、実香さんが急にそんなことを聞いてくる。
「なんで?」
「なんでって、2年生の時も聞いてたじゃん」
「そうだったかな……そうだったかも」
「ひどいよ、良さん。私との思い出がそんなにふんわりしてるなんて」
「だって、その……」
「その?」
「2年の途中からあんまり話してなかったし……」
今になって良さんと呼ばれ始めたけど、妹の結香さんが文芸部に入部しなければまた話始める可能性も低かったかもしれない。
それを素直に言ってみたけど、実香さんはキョトンとした顔になった。
「私は逆に話せてなかった覚えがないんだけど……春休み中とかは別として」
「そ、そうなの?」
「うん。1ヶ月に1回くらいは話してなかった?」
「その頻度でもいいなら話してたかもしれない」
「じゃあ、十分でしょ。元々良さんは時々話すくらいの人だったし。それとも良さんは枚に話してLINEも1日3回以上やり取りしないと友情を感じられないタイプ?」
「そこまで重い人じゃないよ。でも、なるほどなぁ。逆に実香さんは定期的に連絡しなくても友達でいてくれるタイプなんだ」
「うーん……人によるかな。結香とは1日5回以上話したいし」
「……それって本当の話」
「うん。良さんも妹ちゃんと話さない日があると悲しくなるでしょ?」
「まぁ、うん……」
そう言われると同意するしかないけど、現状の結香さんにそのノルマを適用しているのだとしたら……実香さんからは相当うっとおしく思われていそうだ。
言うべきかどうか迷ったけど、姉側の気持ちとして僕は否定できなかった。
「男子なら月1でも大丈夫かな。ほら、私みたいな美少女は一度見たら忘れないだろうし」
「ははは」
「良さん……わかってるよ。彼女持ちは安易に他の女を褒められないって」
「何もわかってない」
「おや。もういい時間だ。また話そうねー」
そう言いながら実香さんは本来の目的を忘れて自分の席に帰ってしまった。
恐らくこのテスト中にもう一度聞きにくることはない。
でも、それくらいの距離間でも親しさを保てるのは、人柄なんだろうなぁと思った。
教室内もいつもの騒がしい雰囲気からテスト前の空気に変わり始めている。
「良さ~ん。テスト範囲で出そうなところ教えてよー」
その流れに乗ってか、実香さんが急にそんなことを聞いてくる。
「なんで?」
「なんでって、2年生の時も聞いてたじゃん」
「そうだったかな……そうだったかも」
「ひどいよ、良さん。私との思い出がそんなにふんわりしてるなんて」
「だって、その……」
「その?」
「2年の途中からあんまり話してなかったし……」
今になって良さんと呼ばれ始めたけど、妹の結香さんが文芸部に入部しなければまた話始める可能性も低かったかもしれない。
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「そ、そうなの?」
「うん。1ヶ月に1回くらいは話してなかった?」
「その頻度でもいいなら話してたかもしれない」
「じゃあ、十分でしょ。元々良さんは時々話すくらいの人だったし。それとも良さんは枚に話してLINEも1日3回以上やり取りしないと友情を感じられないタイプ?」
「そこまで重い人じゃないよ。でも、なるほどなぁ。逆に実香さんは定期的に連絡しなくても友達でいてくれるタイプなんだ」
「うーん……人によるかな。結香とは1日5回以上話したいし」
「……それって本当の話」
「うん。良さんも妹ちゃんと話さない日があると悲しくなるでしょ?」
「まぁ、うん……」
そう言われると同意するしかないけど、現状の結香さんにそのノルマを適用しているのだとしたら……実香さんからは相当うっとおしく思われていそうだ。
言うべきかどうか迷ったけど、姉側の気持ちとして僕は否定できなかった。
「男子なら月1でも大丈夫かな。ほら、私みたいな美少女は一度見たら忘れないだろうし」
「ははは」
「良さん……わかってるよ。彼女持ちは安易に他の女を褒められないって」
「何もわかってない」
「おや。もういい時間だ。また話そうねー」
そう言いながら実香さんは本来の目的を忘れて自分の席に帰ってしまった。
恐らくこのテスト中にもう一度聞きにくることはない。
でも、それくらいの距離間でも親しさを保てるのは、人柄なんだろうなぁと思った。
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