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3年生1学期
6月13日(火)曇り時々雨 後輩との日常・野島結香の場合その4
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昼過ぎには雷が鳴ったはやぶさの日。
そんな今日の放課後は部活だったけど、その前に実香さんに呼び止められる。
「良さんさぁ、結香に伝言お願いしたいんだけど」
「……結局その呼び方で落ち着いたんだ」
「そっちがさん付けなら合わせた方がいいと思って。あと一番言いやすい」
「そ、そっか。それで一応伝言は聞くけど……LINEで送れば良くない?」
「LINEの文面だけじゃ伝えきれないことがある……とか言って、既読スルーされる可能性があるからなんだけどね。伝言は――」
それから30分後。文芸部の活動が一段落ついたところで、僕は結香さんに話しかける。
「結香さん。さっき実香さんから伝言を伝えるように言われたんだけど……」
「えっ。じゃあ、聞かなくてもいいですか」
「いや、聞いて貰わないと僕が困る」
「えー……なんでわざわざ産賀さんを介するんですが」
「それは僕が聞きたい」
「で、なんて言ってたんですか?」
「今日の茶道部でお茶菓子を持って帰れるらしくて、何か希望があれば言って欲しいって。ラインナップはLINE参照」
「マジでLINEで言えばいいことじゃないですか……」
そう言いながら結香さんはスマホを確認する。
「実香さん優しいね。結香さんの分まで持って帰ってくれるなんて」
「どっちかというとがめついだけじゃないですかね」
「そ、そこまで言わなくても……」
「でも、意外でした。同じ文芸部なら女子の路子さんに伝言頼みそうなのに」
「まぁ、路ちゃんと実香さんはあんまり絡みないからね」
「…………」
「うん?」
「いや、三浦くんから聞いてた通り、路子さんのことはちゃん付けで呼ぶんだと」
「も、元からそうだったと思うけど」
「それよりも姉の呼び方も変わったんですね」
「実香さんがそういう流れにしてたから……」
「産賀さん。もしかして……姉のこと狙ってたりします?」
突然の問いかけに僕は一瞬むせる。
「な、なんで!?」
「だって、産賀さんは姉の話題結構出してるし、今日みたいに姉から頼られるようなこともあるから、距離間近いなぁと思って」
「いやいや。週一で話すかどうか怪しいくらいの距離間だから」
「なんで急に否定するんですか。怪しいですね……」
「なにも怪しくないよ! それに僕は……」
「僕は?」
「…………どっちかというと大人しい子の方が好きだから」
「ほうほう。もう少し詳しく」
「こ、これ以上はプライベートな話だから!」
話が変な方向に向かい始めていたので、僕は強引に話題を切り上げる。
今思えばこのタイミングで言っても良かったような気がするけど、結香さんに流されている感じがして口が止まってしまった。
やっぱり野島姉妹はどこか似ていると思う……結香さんの姉への辛辣な態度以外。
そんな今日の放課後は部活だったけど、その前に実香さんに呼び止められる。
「良さんさぁ、結香に伝言お願いしたいんだけど」
「……結局その呼び方で落ち着いたんだ」
「そっちがさん付けなら合わせた方がいいと思って。あと一番言いやすい」
「そ、そっか。それで一応伝言は聞くけど……LINEで送れば良くない?」
「LINEの文面だけじゃ伝えきれないことがある……とか言って、既読スルーされる可能性があるからなんだけどね。伝言は――」
それから30分後。文芸部の活動が一段落ついたところで、僕は結香さんに話しかける。
「結香さん。さっき実香さんから伝言を伝えるように言われたんだけど……」
「えっ。じゃあ、聞かなくてもいいですか」
「いや、聞いて貰わないと僕が困る」
「えー……なんでわざわざ産賀さんを介するんですが」
「それは僕が聞きたい」
「で、なんて言ってたんですか?」
「今日の茶道部でお茶菓子を持って帰れるらしくて、何か希望があれば言って欲しいって。ラインナップはLINE参照」
「マジでLINEで言えばいいことじゃないですか……」
そう言いながら結香さんはスマホを確認する。
「実香さん優しいね。結香さんの分まで持って帰ってくれるなんて」
「どっちかというとがめついだけじゃないですかね」
「そ、そこまで言わなくても……」
「でも、意外でした。同じ文芸部なら女子の路子さんに伝言頼みそうなのに」
「まぁ、路ちゃんと実香さんはあんまり絡みないからね」
「…………」
「うん?」
「いや、三浦くんから聞いてた通り、路子さんのことはちゃん付けで呼ぶんだと」
「も、元からそうだったと思うけど」
「それよりも姉の呼び方も変わったんですね」
「実香さんがそういう流れにしてたから……」
「産賀さん。もしかして……姉のこと狙ってたりします?」
突然の問いかけに僕は一瞬むせる。
「な、なんで!?」
「だって、産賀さんは姉の話題結構出してるし、今日みたいに姉から頼られるようなこともあるから、距離間近いなぁと思って」
「いやいや。週一で話すかどうか怪しいくらいの距離間だから」
「なんで急に否定するんですか。怪しいですね……」
「なにも怪しくないよ! それに僕は……」
「僕は?」
「…………どっちかというと大人しい子の方が好きだから」
「ほうほう。もう少し詳しく」
「こ、これ以上はプライベートな話だから!」
話が変な方向に向かい始めていたので、僕は強引に話題を切り上げる。
今思えばこのタイミングで言っても良かったような気がするけど、結香さんに流されている感じがして口が止まってしまった。
やっぱり野島姉妹はどこか似ていると思う……結香さんの姉への辛辣な態度以外。
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