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3年生1学期
6月2日(金)雨 後輩との日常・石渡沙綾の場合その3
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全国的に大雨だったローズの日。
だけど、僕が住む地域では午後から雨の勢いが弱くなって、大事にはならなかった。
そんな今日もいつも通り文芸部の活動を終えて、雑談タイムに入っていく。
「沙綾ちゃんはコンビニで出たやつ知ってる?」
結香さんはそう言いながら石渡さんに絡んでいく。
いつの間にか名前呼びになっているけど、石渡さんの反応はまだ緊張気味だったので、結香さんが積極的に話しかけているのだろう。
「コンビニで……?」
「ふわふわ食感のスイーツ。あっ、沙綾ちゃんは甘いモノ好き?」
「人並みには好き……だと思う」
話題の振り方的には大当たりではないようだけど、結香さんはそれでも怯まず話を続けていく。
こういうところは見習いたいところだ。
「……ええっ!? それホント!?」
「う、うん。実際に話したし」
それから少し目を離した隙に、どうやら石渡さんの方が結香さんにとって当たりの話題を引いたようだ。
何か共通の話題があれば距離が一気に縮まると――
「産賀さん! 沙綾ちゃんから聞いたんですけど、路子さんと一緒に図書室に来たって本当ですか!?」
まさかの話題の中心には僕がいた。
石渡さんが話したのは月曜の出来事だったのか。
「そ、そうだけど……ま、まぁ、同じクラスだし」
「本当にそれだけですかぁ?」
「他に何があるって言うの」
「それは――」
「そ、そうだよ、野島さん。先輩に迷惑かかるから……」
とぼけてやり過ごそうとしていた僕に助け船を出してくれたのは、意外にも石渡さんだった。
「……沙綾ちゃん。その現場を目撃した時、何も感じなかった?」
「感じる……とは?」
「何か2人が隠してる的な」
「なかったと思う」
「よく思い出して」
「な、なんでそんなに聞いてくるの……?」
「だから、それは……ごにょごにょ」
「…………」
実香さんは止める暇なく石渡さんに何かを告げられてしまう。
いや、これは逆にありなのではないか?
ここまで疑われてしまったら、話すタイミングとして――
「それはないと思う」
「えっ」
「だって……ごにょごにょ」
「……あー。確かにそれはわかるかも」
「そうでしょ?」
「な、何が?」
「……なんでもないです。ねっ、野島さん」
「う、うん。そうだとも沙綾ちゃん」
そう言った2人が僕を見る目は、どこか憐れんでいるような、少し馬鹿にしているような……ともかくネガティブな何かを感じた。
しかし、皮肉なことにその後の2人は謎の盛り上がりを見せて、この話題が出る前よりも仲良くなっていたように見えた。
2人が言ったであろう言葉を予想すると、「産賀さんは彼女作るようなタイプじゃない」とか、そんな感じだと思われる。
まぁ、そう見られても仕方がないけど……嘘を付いた。
勝手に予想したくせに、ちょっと凹んでる僕がいる。
昨日はカップルとして褒められたような気がするけど、それは近しい関係の大山さんだからそう感じただけなのかもしれない。
だけど、僕が住む地域では午後から雨の勢いが弱くなって、大事にはならなかった。
そんな今日もいつも通り文芸部の活動を終えて、雑談タイムに入っていく。
「沙綾ちゃんはコンビニで出たやつ知ってる?」
結香さんはそう言いながら石渡さんに絡んでいく。
いつの間にか名前呼びになっているけど、石渡さんの反応はまだ緊張気味だったので、結香さんが積極的に話しかけているのだろう。
「コンビニで……?」
「ふわふわ食感のスイーツ。あっ、沙綾ちゃんは甘いモノ好き?」
「人並みには好き……だと思う」
話題の振り方的には大当たりではないようだけど、結香さんはそれでも怯まず話を続けていく。
こういうところは見習いたいところだ。
「……ええっ!? それホント!?」
「う、うん。実際に話したし」
それから少し目を離した隙に、どうやら石渡さんの方が結香さんにとって当たりの話題を引いたようだ。
何か共通の話題があれば距離が一気に縮まると――
「産賀さん! 沙綾ちゃんから聞いたんですけど、路子さんと一緒に図書室に来たって本当ですか!?」
まさかの話題の中心には僕がいた。
石渡さんが話したのは月曜の出来事だったのか。
「そ、そうだけど……ま、まぁ、同じクラスだし」
「本当にそれだけですかぁ?」
「他に何があるって言うの」
「それは――」
「そ、そうだよ、野島さん。先輩に迷惑かかるから……」
とぼけてやり過ごそうとしていた僕に助け船を出してくれたのは、意外にも石渡さんだった。
「……沙綾ちゃん。その現場を目撃した時、何も感じなかった?」
「感じる……とは?」
「何か2人が隠してる的な」
「なかったと思う」
「よく思い出して」
「な、なんでそんなに聞いてくるの……?」
「だから、それは……ごにょごにょ」
「…………」
実香さんは止める暇なく石渡さんに何かを告げられてしまう。
いや、これは逆にありなのではないか?
ここまで疑われてしまったら、話すタイミングとして――
「それはないと思う」
「えっ」
「だって……ごにょごにょ」
「……あー。確かにそれはわかるかも」
「そうでしょ?」
「な、何が?」
「……なんでもないです。ねっ、野島さん」
「う、うん。そうだとも沙綾ちゃん」
そう言った2人が僕を見る目は、どこか憐れんでいるような、少し馬鹿にしているような……ともかくネガティブな何かを感じた。
しかし、皮肉なことにその後の2人は謎の盛り上がりを見せて、この話題が出る前よりも仲良くなっていたように見えた。
2人が言ったであろう言葉を予想すると、「産賀さんは彼女作るようなタイプじゃない」とか、そんな感じだと思われる。
まぁ、そう見られても仕方がないけど……嘘を付いた。
勝手に予想したくせに、ちょっと凹んでる僕がいる。
昨日はカップルとして褒められたような気がするけど、それは近しい関係の大山さんだからそう感じただけなのかもしれない。
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