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3年生1学期

5月30日(火)曇り 後輩との日常・三浦将基の場合その3

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 テスト返却数が増えてきた掃除機の日。
 昨日あんなことがあったけど、今日の石渡さんは特に態度を変えるようなことはなかった。
 まぁ、僕がまだ路ちゃんじゃない方の3年生男子という認識のままということにはなるのだけど。

「産賀さん……何読んでるんですか?」

 一方、三浦くんの方は即帰宅せずにあちらから話しかけてくれるようになった。

「文芸部の先輩が勤めてる本屋さんで買った本。梅雨特集で『6月の君に』っていう青春小説だよ」

「へー 文芸部の方でもう働いてる人もいるんですね」

「うん。一個上の先輩で……今年の春から働き始めたんだ」

 本当は学生時代からバイトをしていたけど、文芸部の治安が悪いと思われても良くないので隠しておいた。

「なるほど。ちゃんと文芸部での経験が活かされてるんですね」

「それは……少しはあると思う(たぶん)」

「そうか。ボクも本持って来て読んでれば……」

「三浦は何読むの?」

「うわっ!?」

 突然割り込んで来た結香さんに三浦くんは驚いて大きく後ろに下がる。

「そんなに驚かなくても」

「いや……後ろから話しかけられると驚くっしょ……」

「でも、そこまで驚かれるとあたしがうるさいみたいじゃん。ねぇ、産賀さん?」

「あー……そうだね」

「今のどっちの意味での同意ですか?」

「も、もちろん、そこまでうるさくない方」

 結香さんの圧に僕はそう答えてしまう。
 実際のところは三浦くんが驚くのも無理がない感じだった。

「というか、自己紹介の時に読む本については話してたし……」

「あっ、そういえばそっか。えっと……ラノベ系だっけ?」

「う、うん……」

「あたしも結構読むよ。アニメで気になったやつとか」

「えっ。アニメとか見るの……」

「なんで驚いてるの? あたしってそんなに見ないタイプに見えた」

「……何ならなぜ文芸部にいるのかわからないタイプだと」

「あー、わかるわかる。あたし、普通にインドア派なのにアウトドア派に見られちゃうから」

「……ごめん。人を見た目で判断してしまった」

「別にいいよ。あたしも三浦のこと、8割見た目で判断してるし」

「残りの2割は?」

「態度とか話し方とか。今日は比較的好印象だよ」

「ど、どうも……」

「あっ、それならさ。最近見たアニメとかは――」

 それから暫くの間、三浦くんは結香さんに捕まってしまったけど、意外に会話は弾んでいるようだった。
 この調子でいけば同級生間での会話もいい感じになりそうだから……あとは石渡さん次第かもしれない。
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