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3年生1学期
5月14日(日)曇り 清水夢愛と産賀良助その3
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朝方に雨が降りやんだ母の日。
明莉と相談した結果、今回のプレゼントは最近できたフルーツ店のいちご大福と何か形に残る物1つになったので、傘なしでも外出できそうなタイミングで買い出しへ向かう。
先に形に残る物を買いに行き、一周回ってプレゼントしたことがなかったドライフラワーのカーネーションを選んだ。
「でも、これで向こう10年はカーネーション使えなくなっちゃったよ」
「別に困って選んだわけじゃないから……」
そんな話をしながら10分ほど歩くと、目的のフルーツ店に到着する。
母の日のおかげかはわからないけど、お客さんは結構来ていた。
「おお、良助じゃないか」
突然の呼びかけに驚きながら振り向くと、後ろに清水先輩が立っていた。
「それに妹さんも」
「お、お疲れ様です、清水先輩」
「あっ、清水さん。凄くお久しぶりです」
「ああ。最後に会ったのは……去年の夏休み頃とか、そのくらいかな? そうだ、高校入学おめでとう」
「ありがとうございます! 清水さんは……」
明莉はそう言いながら僕の方を見て様子を窺う。
「今は地元の大学に行ってるよ」
「おお。大学合格おめでとうございます」
「ありがとう。今日はもしかして母の日の買い物か?」
「はい。ということは、清水先輩も?」
「ああ。なんとなく良さそうな店を探してぶらぶらしてたら見つけたんだ。理由はわからないけど、母の日ってなんか赤色のイメージがあるだろう? だから、いちごでもいいかと」
「わかります! 私達もそれでいちご大福がいいって決めたので」
明莉はそう言ったけど、半分……いや、3分の1くらいは自分もちょっと食べたい意識があったとは思う。
まぁ、明莉が嬉しい物は母さんも嬉しいと思う物だからありがたい判断基準ではあるんだけど。
「そうかそうか。2人で仲良く決めてるんだな」
「仲がいいかはわかりませんけど」
「お、おい。そこは濁さなくてもいいだろう」
「ははっ。少なくとも一緒に買い物に行く時点で仲が良いのはよくわかる……っと、話し過ぎたな。それじゃあ、また」
そう言いながら清水先輩は手を振って帰っていった。
「……ねぇ、りょうちゃん。なんで清水さんが地元の大学通ってるの教えといてくれなかったの?」
「いや、聞かれてなかったから……」
「それはそうかもだけど、前はもっと自分から話してくれてたじゃん」
「ぼ、僕も情報を掴むのが遅かったりするから」
「ふーん……」
明莉が納得していないようだけど、清水先輩のことを話さなくなったのは、完全にフラれた時以降になるから、説明しづらかった。
今ならそのことも教えて良さそうな気もするけど……いや、やっぱり駄目だ。
「りょうちゃんと清水さんって不思議な関係だね。高校以外は学校が別だし、部活が同じわけでもないのに」
「よく言われる。でもまぁ、僕はもうこれが普通になってきたから」
「そっかぁ……あっ、りょうちゃん。生大福もあるんだって!」
明莉からそれ以上何も聞かれなかったので、僕は内心ほっとしていた。
それから帰宅後に母の日のプレゼントを渡すと、母さんはとても喜んでくれた。
同じように清水先輩もいちご大福を母親に渡して、良い母の日を過ごしているのだろう。
一時期の清水先輩を考えると、今の形に納まって本当に良かったと思う。
明莉と相談した結果、今回のプレゼントは最近できたフルーツ店のいちご大福と何か形に残る物1つになったので、傘なしでも外出できそうなタイミングで買い出しへ向かう。
先に形に残る物を買いに行き、一周回ってプレゼントしたことがなかったドライフラワーのカーネーションを選んだ。
「でも、これで向こう10年はカーネーション使えなくなっちゃったよ」
「別に困って選んだわけじゃないから……」
そんな話をしながら10分ほど歩くと、目的のフルーツ店に到着する。
母の日のおかげかはわからないけど、お客さんは結構来ていた。
「おお、良助じゃないか」
突然の呼びかけに驚きながら振り向くと、後ろに清水先輩が立っていた。
「それに妹さんも」
「お、お疲れ様です、清水先輩」
「あっ、清水さん。凄くお久しぶりです」
「ああ。最後に会ったのは……去年の夏休み頃とか、そのくらいかな? そうだ、高校入学おめでとう」
「ありがとうございます! 清水さんは……」
明莉はそう言いながら僕の方を見て様子を窺う。
「今は地元の大学に行ってるよ」
「おお。大学合格おめでとうございます」
「ありがとう。今日はもしかして母の日の買い物か?」
「はい。ということは、清水先輩も?」
「ああ。なんとなく良さそうな店を探してぶらぶらしてたら見つけたんだ。理由はわからないけど、母の日ってなんか赤色のイメージがあるだろう? だから、いちごでもいいかと」
「わかります! 私達もそれでいちご大福がいいって決めたので」
明莉はそう言ったけど、半分……いや、3分の1くらいは自分もちょっと食べたい意識があったとは思う。
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「そうかそうか。2人で仲良く決めてるんだな」
「仲がいいかはわかりませんけど」
「お、おい。そこは濁さなくてもいいだろう」
「ははっ。少なくとも一緒に買い物に行く時点で仲が良いのはよくわかる……っと、話し過ぎたな。それじゃあ、また」
そう言いながら清水先輩は手を振って帰っていった。
「……ねぇ、りょうちゃん。なんで清水さんが地元の大学通ってるの教えといてくれなかったの?」
「いや、聞かれてなかったから……」
「それはそうかもだけど、前はもっと自分から話してくれてたじゃん」
「ぼ、僕も情報を掴むのが遅かったりするから」
「ふーん……」
明莉が納得していないようだけど、清水先輩のことを話さなくなったのは、完全にフラれた時以降になるから、説明しづらかった。
今ならそのことも教えて良さそうな気もするけど……いや、やっぱり駄目だ。
「りょうちゃんと清水さんって不思議な関係だね。高校以外は学校が別だし、部活が同じわけでもないのに」
「よく言われる。でもまぁ、僕はもうこれが普通になってきたから」
「そっかぁ……あっ、りょうちゃん。生大福もあるんだって!」
明莉からそれ以上何も聞かれなかったので、僕は内心ほっとしていた。
それから帰宅後に母の日のプレゼントを渡すと、母さんはとても喜んでくれた。
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一時期の清水先輩を考えると、今の形に納まって本当に良かったと思う。
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