766 / 942
3年生1学期
5月9日(火)晴れ 後輩との日常・三浦将基の場合その2
しおりを挟む
気温が上り坂になった告白の日。
本日は歓迎会ぶりの文芸部の活動が行われた。
交流したおかげか野島さん(妹)と石渡さんは部内にかなり溶け込んだように見える。
「それじゃあ、今日もお疲れさ――」
「「ま、待って!」」
一方、三浦くんは相変わらず終わったら帰ろうとしていたので、僕と桐山くんは呼び止める。
「な、なにかありました?」
「いや、何かあるわけじゃないけど……三浦くんはこの後用事あるの?」
「ないですけど……」
「じゃあ、ちょっとくらい話をしよう。もちろん、強制はしないけど」
「は、はぁ」
自分で言っておきながら何だけど、先輩2人からそう言われたら帰ろうにも帰れないとは思う。
でも、せっかく三浦くんの事情もわかってきたのだから、もう少しコミュニケーションを取っていきたい。
「で、何の話をするんですか?」
「う、うーん……」
「……三浦的には文芸部の女子ってどんな風に見えてんの?」
大事なところですぐに言葉が出なかった僕の代わりに、桐山くんはそう切り出す。
いきなりぶっこんだなと思ったけど、確かに気になる話題だ。
「ど、どうって言われても……」
「日葵のテンション感に付いていけないのはわかってるから……伊月さんとかどう?」
「……はきはきした人って印象です。勧誘の時に見かけた覚えがあります」
「ほうほう。じゃあ……姫宮さんは?」
「えっと……」
「ほら、文芸部で一番可憐な女子の」
それは私情が入っているだろうと思うけど、今はツッコまないようにしよう。
桐山くんに誘導された姫宮さんを見た三浦くんは――
「ちょっと闇を抱えてそうな雰囲気あります」
「ああん!?」
「お、落ち着いて、桐山くん」
「す、すんません。あんまわかんないので今パッと見の印象を言っただけです」
「ふんっ。まぁ、姫宮さんの魅力を知るのは俺一人で十分だ。それじゃあ、先輩方から……花園先輩は?」
「その先輩も一切絡んでないんですけど……印象で言っていいですか?」
「構わんよ」
「なんか見えない圧があります」
「は?」
という花園さんの声が僕の心の中で聞こえた気がした。
潤滑な会話のためには仕方なかったのかもしれないけど、印象で言うのは許可するのは良くないぞ、桐山くん。
「最後に……岸本路子先輩はどう?」
「…………」
そして、最後に残ってしまった路ちゃんの方を三浦くんは見る。
正直、自分の印象以上に気になるところだったので、僕は息をのんで――
「わからないですね。同じきしもとなら部長の方に印象を持っていかれてるんで」
「は?」
と言ったのは僕自身の声だった。
「う、産賀先輩、落ち着いて」
「な、なんか悪いこと言っちゃいました……?」
「……なんでもない。三浦くんがわりと素直に言う人間だというのはよくわかった」
「そ、そうですか」
そんな感じで僕はちょっとだけ不機嫌になりながら今日の会話は終わってしまった。
振り返ってみると先輩らしくない対応をしてしまったので、その点は反省したい。
でも……今日ばかりは僕の気持ちは桐山くん側に寄っていた。
三浦くんは悪気が無さそうだから何とも言えないけど……今度はもう少し冷静に話していこう。
本日は歓迎会ぶりの文芸部の活動が行われた。
交流したおかげか野島さん(妹)と石渡さんは部内にかなり溶け込んだように見える。
「それじゃあ、今日もお疲れさ――」
「「ま、待って!」」
一方、三浦くんは相変わらず終わったら帰ろうとしていたので、僕と桐山くんは呼び止める。
「な、なにかありました?」
「いや、何かあるわけじゃないけど……三浦くんはこの後用事あるの?」
「ないですけど……」
「じゃあ、ちょっとくらい話をしよう。もちろん、強制はしないけど」
「は、はぁ」
自分で言っておきながら何だけど、先輩2人からそう言われたら帰ろうにも帰れないとは思う。
でも、せっかく三浦くんの事情もわかってきたのだから、もう少しコミュニケーションを取っていきたい。
「で、何の話をするんですか?」
「う、うーん……」
「……三浦的には文芸部の女子ってどんな風に見えてんの?」
大事なところですぐに言葉が出なかった僕の代わりに、桐山くんはそう切り出す。
いきなりぶっこんだなと思ったけど、確かに気になる話題だ。
「ど、どうって言われても……」
「日葵のテンション感に付いていけないのはわかってるから……伊月さんとかどう?」
「……はきはきした人って印象です。勧誘の時に見かけた覚えがあります」
「ほうほう。じゃあ……姫宮さんは?」
「えっと……」
「ほら、文芸部で一番可憐な女子の」
それは私情が入っているだろうと思うけど、今はツッコまないようにしよう。
桐山くんに誘導された姫宮さんを見た三浦くんは――
「ちょっと闇を抱えてそうな雰囲気あります」
「ああん!?」
「お、落ち着いて、桐山くん」
「す、すんません。あんまわかんないので今パッと見の印象を言っただけです」
「ふんっ。まぁ、姫宮さんの魅力を知るのは俺一人で十分だ。それじゃあ、先輩方から……花園先輩は?」
「その先輩も一切絡んでないんですけど……印象で言っていいですか?」
「構わんよ」
「なんか見えない圧があります」
「は?」
という花園さんの声が僕の心の中で聞こえた気がした。
潤滑な会話のためには仕方なかったのかもしれないけど、印象で言うのは許可するのは良くないぞ、桐山くん。
「最後に……岸本路子先輩はどう?」
「…………」
そして、最後に残ってしまった路ちゃんの方を三浦くんは見る。
正直、自分の印象以上に気になるところだったので、僕は息をのんで――
「わからないですね。同じきしもとなら部長の方に印象を持っていかれてるんで」
「は?」
と言ったのは僕自身の声だった。
「う、産賀先輩、落ち着いて」
「な、なんか悪いこと言っちゃいました……?」
「……なんでもない。三浦くんがわりと素直に言う人間だというのはよくわかった」
「そ、そうですか」
そんな感じで僕はちょっとだけ不機嫌になりながら今日の会話は終わってしまった。
振り返ってみると先輩らしくない対応をしてしまったので、その点は反省したい。
でも……今日ばかりは僕の気持ちは桐山くん側に寄っていた。
三浦くんは悪気が無さそうだから何とも言えないけど……今度はもう少し冷静に話していこう。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
幽子さんの謎解きレポート~しんいち君と霊感少女幽子さんの実話を元にした本格心霊ミステリー~
しんいち
キャラ文芸
オカルト好きの少年、「しんいち」は、小学生の時、彼が通う合気道の道場でお婆さんにつれられてきた不思議な少女と出会う。
のちに「幽子」と呼ばれる事になる少女との始めての出会いだった。
彼女には「霊感」と言われる、人の目には見えない物を感じ取る能力を秘めていた。しんいちはそんな彼女と友達になることを決意する。
そして高校生になった二人は、様々な怪奇でミステリアスな事件に関わっていくことになる。 事件を通じて出会う人々や経験は、彼らの成長を促し、友情を深めていく。
しかし、幽子にはしんいちにも秘密にしている一つの「想い」があった。
その想いとは一体何なのか?物語が進むにつれて、彼女の心の奥に秘められた真実が明らかになっていく。
友情と成長、そして幽子の隠された想いが交錯するミステリアスな物語。あなたも、しんいちと幽子の冒険に心を躍らせてみませんか?
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
僕が美少女になったせいで幼馴染が百合に目覚めた
楠富 つかさ
恋愛
ある朝、目覚めたら女の子になっていた主人公と主人公に恋をしていたが、女の子になって主人公を見て百合に目覚めたヒロインのドタバタした日常。
この作品はハーメルン様でも掲載しています。
ほのぼの学園百合小説 キタコミ!
水原渉
青春
ごくごく普通の女子高生の帰り道。帰宅部の仲良し3人+1人が織り成す、青春学園物語。
ほんのりと百合の香るお話です。
ごく稀に男子が出てくることもありますが、男女の恋愛に発展することは一切ありませんのでご安心ください。
イラストはtojo様。「リアルなDカップ」を始め、たくさんの要望にパーフェクトにお応えいただきました。
★Kindle情報★
1巻:第1話~第12話、番外編『帰宅部活動』、書き下ろしを収録。
https://www.amazon.co.jp/dp/B098XLYJG4
2巻:第13話~第19話に、書き下ろしを2本、4コマを1本収録。
https://www.amazon.co.jp/dp/B09L6RM9SP
3巻:第20話~第28話、番外編『チェアリング』、書き下ろしを4本収録。
https://www.amazon.co.jp/dp/B09VTHS1W3
4巻:第29話~第40話、番外編『芝居』、書き下ろし2本、挿絵と1P漫画を収録。
https://www.amazon.co.jp/dp/B0BNQRN12P
5巻:第41話~第49話、番外編2本、書き下ろし2本、イラスト2枚収録。
https://www.amazon.co.jp/dp/B0CHFX4THL
6巻:第50話~第55話、番外編2本、書き下ろし1本、イラスト1枚収録。
https://www.amazon.co.jp/dp/B0D9KFRSLZ
Chit-Chat!1:1話25本のネタを30話750本と、4コマを1本収録。
https://www.amazon.co.jp/dp/B0CTHQX88H
★第1話『アイス』朗読★
https://www.youtube.com/watch?v=8hEfRp8JWwE
★番外編『帰宅部活動 1.ホームドア』朗読★
https://www.youtube.com/watch?v=98vgjHO25XI
★Chit-Chat!1★
https://www.youtube.com/watch?v=cKZypuc0R34
雨上がりに僕らは駆けていく Part2
平木明日香
青春
学校の帰り道に突如現れた謎の女
彼女は、遠い未来から来たと言った。
「甲子園に行くで」
そんなこと言っても、俺たち、初対面だよな?
グラウンドに誘われ、彼女はマウンドに立つ。
ひらりとスカートが舞い、パンツが見えた。
しかしそれとは裏腹に、とんでもないボールを投げてきたんだ。
青天のヘキレキ
ましら佳
青春
⌘ 青天のヘキレキ
高校の保健養護教諭である金沢環《かなざわたまき》。
上司にも同僚にも生徒からも精神的にどつき回される生活。
思わぬ事故に巻き込まれ、修学旅行の引率先の沼に落ちて神将・毘沙門天の手違いで、問題児である生徒と入れ替わってしまう。
可愛い女子とイケメン男子ではなく、オバちゃんと問題児の中身の取り違えで、ギャップの大きい生活に戸惑い、落としどころを探って行く。
お互いの抱えている問題に、否応なく向き合って行くが・・・・。
出会いは化学変化。
いわゆる“入れ替わり”系のお話を一度書いてみたくて考えたものです。
お楽しみいただけますように。
他コンテンツにも掲載中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる