上 下
733 / 942
3年生1学期

4月6日(木)曇り時々雨 最後のクラス分け

しおりを挟む
 新学期初日のマシュマロの日。
 この日のメインイベントはもちろん高校最後のクラス分けだ。
 去年と同じく松永と一緒に登校して、下駄箱前に設置されたクラス分けの用紙を確認する。
 午前中は雨が降る前だったけど、人混みができていたので自分の名前を見つけるのにもやや時間がかかった。
 そして、結果は――

「いつメン全員集合!」

 松永はその言葉と共にハイタッチを求めてきた。
 大倉くんは今年も引き続き僕の後ろの席からのスタートで、松永と本田くんとは1年ぶりに同じクラスだ。

「まぁ、クラス一緒じゃなくても集まってたろうけどな」

「そんなこと言って、ぽんちゃんも嬉しい癖に~」

「別に嬉しくないとは言ってない」

「うわぁ。男のツンデレ」

「良ちゃん。今年は松永の世話は任せた」

「いや、半分くらい手伝ってよ」

 僕と本田くんのやり取りに松永は「ちょいちょーい!」とツッコミを入れる。
 一方、大倉くんは安堵した様子だった。

「みんなと同じで良かった……」

「まぁ、少なくとも僕と離れることはなかったんじゃない?」

「そ、そうなのかな……完全ランダムで決めてるわけじゃないだろうけど……」

「もしかしたら宿命づけられていたのかもしれない」

「ふーん……じゃあ、アタシも宿命づけられた1人だったり?」

 その声の方に目を向けると、隣の席に大山さんが座っていた。
 自分の名前と……もう1人を見つけるのに満足して知らなかったので、僕は普通に驚く。

「こ、こんなこともあるんだなぁ……」

「アタシもちょっとびっくりだケド、なりそうな予感はあったかな。二度あることはってやつ」

「なるほど。それじゃあ、今年もよろしくお願いします」

「ご丁寧にどーも。あっ、ちなみに瑞姫とこじたんも同じだよ」

「産賀くんと大倉くん、おひさ~」

 そう言って高めのテンションで絡んでくる栗原さんに、僕と大倉くんはたじろぐ。
 最後にまともに喋ったのは本田くんと付き合ったのを知って……もう覚えていないくらいだから、またしても会話のハードルがリセットされている。

「朝からそんなテンションで絡んでやるな」

「えー しんちゃんは私と一緒のクラスで嬉しくないの?」

「……嬉しくないとは言ってない」

「えへへ。どう? かわいいところあるでしょ?」

「……うぶクンと大倉くんさ。本田と瑞姫ってクラスでこういう感じなの知ってた?」

「……知らなかった」

「お、同じく……」

「そ、そっか。なんていうか……程々にして欲しいよね」

 そう言った大山さんにすぐ同意はできなかったけど、こちらがリアクション的に困るのは確かだった。

「うんうん。見えてる分には慎ましくあって欲しいよね。産賀くんとみーちゃんみたいに」

 そう言いながらやって来たのは重森さんだった。

「重森さんも4組だったんだ」

「その感じ、自分とみーちゃんだけ見つけて満足したやつ」

「うっ……その通りだけど」

「女子の欄まで見たら知り合いくらい把握してもいいのに。ねぇ、華凛ちゃん?」

「はい。リョウスケの中で華凛の優先度がそれほど高くないのはわかっていますが」

 その点については何も言えないけど……それよりも重森さんと花園さんの距離が近づいていることに驚く。お店で一回会っただけのはずなのに。

「まぁ、冗談です。それはそれとして……ミチちゃんはどうして恥ずかしそうにしているのですか」

「い、いや……恥ずかしいというよりはなんか新しい空気に緊張しちゃって」

 そんな花園さんの後ろに隠れるようにしていたのは……僕以外で唯一名前を確認していた路ちゃんだった。

「でしたら、なおのことリョウスケの傍にいた方がいいのでは?」

「ど、どういう意味!?」

「ミチちゃんもたまにはあの方々くらい公然の場でイチャついてもいいかと」

「そ、それは……はっ!? ち、違うから! そう思ってるわけじゃないから!」

 僕が何か言う前に路ちゃんは勝手に焦りだす。
 それに対して重森さんや栗原さんが反応して……一瞬にしてガールズトークの空間が形成された。

 それはともかく、クラス分けの感想としてはかなり顔馴染みの多いクラスになったので、最後の学校行事も楽しくできそうだと思った。

「う、産賀くん」

「うん? どうしたの大倉くん」

「さっき大山さんが言ってたけど……こじたんって誰?」

「……だ、誰だっけ?」

 ――楽しく過ごすためにもクラスメイトの名前くらいは把握しておこう。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

通り道のお仕置き

おしり丸
青春
お尻真っ赤

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

令嬢の名門女学校で、パンツを初めて履くことになりました

フルーツパフェ
大衆娯楽
 とある事件を受けて、財閥のご令嬢が数多く通う女学校で校則が改訂された。  曰く、全校生徒はパンツを履くこと。  生徒の安全を確保するための善意で制定されたこの校則だが、学校側の意図に反して事態は思わぬ方向に?  史実上の事件を元に描かれた近代歴史小説。

幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。

スタジオ.T
青春
 幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。  そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。    ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。

若妻の穴を堪能する夫の話

かめのこたろう
現代文学
内容は題名の通りです。

勝負に勝ったので委員長におっぱいを見せてもらった

矢木羽研
青春
優等生の委員長と「勝ったほうが言うことを聞く」という賭けをしたので、「おっぱい見せて」と頼んでみたら……青春寸止めストーリー。

坊主女子:友情短編集

S.H.L
青春
短編集です

♡蜜壺に指を滑り込ませて蜜をクチュクチュ♡

x頭金x
大衆娯楽
♡ちょっとHなショートショート♡年末まで毎日5本投稿中!!

処理中です...