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3年生1学期
4月6日(木)曇り時々雨 最後のクラス分け
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新学期初日のマシュマロの日。
この日のメインイベントはもちろん高校最後のクラス分けだ。
去年と同じく松永と一緒に登校して、下駄箱前に設置されたクラス分けの用紙を確認する。
午前中は雨が降る前だったけど、人混みができていたので自分の名前を見つけるのにもやや時間がかかった。
そして、結果は――
「いつメン全員集合!」
松永はその言葉と共にハイタッチを求めてきた。
大倉くんは今年も引き続き僕の後ろの席からのスタートで、松永と本田くんとは1年ぶりに同じクラスだ。
「まぁ、クラス一緒じゃなくても集まってたろうけどな」
「そんなこと言って、ぽんちゃんも嬉しい癖に~」
「別に嬉しくないとは言ってない」
「うわぁ。男のツンデレ」
「良ちゃん。今年は松永の世話は任せた」
「いや、半分くらい手伝ってよ」
僕と本田くんのやり取りに松永は「ちょいちょーい!」とツッコミを入れる。
一方、大倉くんは安堵した様子だった。
「みんなと同じで良かった……」
「まぁ、少なくとも僕と離れることはなかったんじゃない?」
「そ、そうなのかな……完全ランダムで決めてるわけじゃないだろうけど……」
「もしかしたら宿命づけられていたのかもしれない」
「ふーん……じゃあ、アタシも宿命づけられた1人だったり?」
その声の方に目を向けると、隣の席に大山さんが座っていた。
自分の名前と……もう1人を見つけるのに満足して知らなかったので、僕は普通に驚く。
「こ、こんなこともあるんだなぁ……」
「アタシもちょっとびっくりだケド、なりそうな予感はあったかな。二度あることはってやつ」
「なるほど。それじゃあ、今年もよろしくお願いします」
「ご丁寧にどーも。あっ、ちなみに瑞姫とこじたんも同じだよ」
「産賀くんと大倉くん、おひさ~」
そう言って高めのテンションで絡んでくる栗原さんに、僕と大倉くんはたじろぐ。
最後にまともに喋ったのは本田くんと付き合ったのを知って……もう覚えていないくらいだから、またしても会話のハードルがリセットされている。
「朝からそんなテンションで絡んでやるな」
「えー しんちゃんは私と一緒のクラスで嬉しくないの?」
「……嬉しくないとは言ってない」
「えへへ。どう? かわいいところあるでしょ?」
「……うぶクンと大倉くんさ。本田と瑞姫ってクラスでこういう感じなの知ってた?」
「……知らなかった」
「お、同じく……」
「そ、そっか。なんていうか……程々にして欲しいよね」
そう言った大山さんにすぐ同意はできなかったけど、こちらがリアクション的に困るのは確かだった。
「うんうん。見えてる分には慎ましくあって欲しいよね。産賀くんとみーちゃんみたいに」
そう言いながらやって来たのは重森さんだった。
「重森さんも4組だったんだ」
「その感じ、自分とみーちゃんだけ見つけて満足したやつ」
「うっ……その通りだけど」
「女子の欄まで見たら知り合いくらい把握してもいいのに。ねぇ、華凛ちゃん?」
「はい。リョウスケの中で華凛の優先度がそれほど高くないのはわかっていますが」
その点については何も言えないけど……それよりも重森さんと花園さんの距離が近づいていることに驚く。お店で一回会っただけのはずなのに。
「まぁ、冗談です。それはそれとして……ミチちゃんはどうして恥ずかしそうにしているのですか」
「い、いや……恥ずかしいというよりはなんか新しい空気に緊張しちゃって」
そんな花園さんの後ろに隠れるようにしていたのは……僕以外で唯一名前を確認していた路ちゃんだった。
「でしたら、なおのことリョウスケの傍にいた方がいいのでは?」
「ど、どういう意味!?」
「ミチちゃんもたまにはあの方々くらい公然の場でイチャついてもいいかと」
「そ、それは……はっ!? ち、違うから! そう思ってるわけじゃないから!」
僕が何か言う前に路ちゃんは勝手に焦りだす。
それに対して重森さんや栗原さんが反応して……一瞬にしてガールズトークの空間が形成された。
それはともかく、クラス分けの感想としてはかなり顔馴染みの多いクラスになったので、最後の学校行事も楽しくできそうだと思った。
「う、産賀くん」
「うん? どうしたの大倉くん」
「さっき大山さんが言ってたけど……こじたんって誰?」
「……だ、誰だっけ?」
――楽しく過ごすためにもクラスメイトの名前くらいは把握しておこう。
この日のメインイベントはもちろん高校最後のクラス分けだ。
去年と同じく松永と一緒に登校して、下駄箱前に設置されたクラス分けの用紙を確認する。
午前中は雨が降る前だったけど、人混みができていたので自分の名前を見つけるのにもやや時間がかかった。
そして、結果は――
「いつメン全員集合!」
松永はその言葉と共にハイタッチを求めてきた。
大倉くんは今年も引き続き僕の後ろの席からのスタートで、松永と本田くんとは1年ぶりに同じクラスだ。
「まぁ、クラス一緒じゃなくても集まってたろうけどな」
「そんなこと言って、ぽんちゃんも嬉しい癖に~」
「別に嬉しくないとは言ってない」
「うわぁ。男のツンデレ」
「良ちゃん。今年は松永の世話は任せた」
「いや、半分くらい手伝ってよ」
僕と本田くんのやり取りに松永は「ちょいちょーい!」とツッコミを入れる。
一方、大倉くんは安堵した様子だった。
「みんなと同じで良かった……」
「まぁ、少なくとも僕と離れることはなかったんじゃない?」
「そ、そうなのかな……完全ランダムで決めてるわけじゃないだろうけど……」
「もしかしたら宿命づけられていたのかもしれない」
「ふーん……じゃあ、アタシも宿命づけられた1人だったり?」
その声の方に目を向けると、隣の席に大山さんが座っていた。
自分の名前と……もう1人を見つけるのに満足して知らなかったので、僕は普通に驚く。
「こ、こんなこともあるんだなぁ……」
「アタシもちょっとびっくりだケド、なりそうな予感はあったかな。二度あることはってやつ」
「なるほど。それじゃあ、今年もよろしくお願いします」
「ご丁寧にどーも。あっ、ちなみに瑞姫とこじたんも同じだよ」
「産賀くんと大倉くん、おひさ~」
そう言って高めのテンションで絡んでくる栗原さんに、僕と大倉くんはたじろぐ。
最後にまともに喋ったのは本田くんと付き合ったのを知って……もう覚えていないくらいだから、またしても会話のハードルがリセットされている。
「朝からそんなテンションで絡んでやるな」
「えー しんちゃんは私と一緒のクラスで嬉しくないの?」
「……嬉しくないとは言ってない」
「えへへ。どう? かわいいところあるでしょ?」
「……うぶクンと大倉くんさ。本田と瑞姫ってクラスでこういう感じなの知ってた?」
「……知らなかった」
「お、同じく……」
「そ、そっか。なんていうか……程々にして欲しいよね」
そう言った大山さんにすぐ同意はできなかったけど、こちらがリアクション的に困るのは確かだった。
「うんうん。見えてる分には慎ましくあって欲しいよね。産賀くんとみーちゃんみたいに」
そう言いながらやって来たのは重森さんだった。
「重森さんも4組だったんだ」
「その感じ、自分とみーちゃんだけ見つけて満足したやつ」
「うっ……その通りだけど」
「女子の欄まで見たら知り合いくらい把握してもいいのに。ねぇ、華凛ちゃん?」
「はい。リョウスケの中で華凛の優先度がそれほど高くないのはわかっていますが」
その点については何も言えないけど……それよりも重森さんと花園さんの距離が近づいていることに驚く。お店で一回会っただけのはずなのに。
「まぁ、冗談です。それはそれとして……ミチちゃんはどうして恥ずかしそうにしているのですか」
「い、いや……恥ずかしいというよりはなんか新しい空気に緊張しちゃって」
そんな花園さんの後ろに隠れるようにしていたのは……僕以外で唯一名前を確認していた路ちゃんだった。
「でしたら、なおのことリョウスケの傍にいた方がいいのでは?」
「ど、どういう意味!?」
「ミチちゃんもたまにはあの方々くらい公然の場でイチャついてもいいかと」
「そ、それは……はっ!? ち、違うから! そう思ってるわけじゃないから!」
僕が何か言う前に路ちゃんは勝手に焦りだす。
それに対して重森さんや栗原さんが反応して……一瞬にしてガールズトークの空間が形成された。
それはともかく、クラス分けの感想としてはかなり顔馴染みの多いクラスになったので、最後の学校行事も楽しくできそうだと思った。
「う、産賀くん」
「うん? どうしたの大倉くん」
「さっき大山さんが言ってたけど……こじたんって誰?」
「……だ、誰だっけ?」
――楽しく過ごすためにもクラスメイトの名前くらいは把握しておこう。
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