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2年生春休み
3月31日(金)晴れ 伊月茉奈との日常その14
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春休み8日目かつ3月最後の金曜日。
この日も一応文芸部の活動日になっていたけど、勧誘の準備は大方済んでいたので、午前中で解散することになった。
お昼を持ってきていた僕と路ちゃん、伊月さんはそのまま部室に残っていたけど……
「わたし、やっぱり帰った方が……」
「そんなに気を遣わなくても大丈夫だよ。みんなで食べた方が楽しいし」
「そう言われましても……」
伊月さんは変に空気を読もうとしてくれていた。
僕としても伊月さんを帰すようなまねはしたくなかったので、歓迎する空気を出すけど、なかなか納得してくれない。
そうなれば……悪いとは思うけど緊急連絡をするしかなかった。
「お疲れでーす。おっ、まだみんな食べずに待っててくれたの?」
「こ、浩太くん!?」
「あれ? なんかサプライズ的な驚き方なんだけど、りょーちゃん知らせてなかったの?」
「知らされてないです! どういうことですか、産賀さん!?」
「い、いや。松永も学校にいるみたいだし、せっかくだから一緒に食べたらいいかなって」
僕はそう言いながら路ちゃんに目配せした。
すると、路ちゃんは、
「う、うん! わたしもいいと思う!」
と若干焦り気味だったけど合わせてくれた。
「で、でも、一応は文芸部の部室で……」
「まぁまぁ。細かいことは気にしないで」
「浩太くんが言うことじゃない! というか、テニス部の方は抜けて来て大丈夫なの?」
「全然平気。何なら昼からの練習も適当な感じだし」
「あんまり聞いてこなかったけど、うちのテニス部ってそんなに真剣な感じじゃないのか?」
呼び出したのはいいけど、松永の軽い発言に僕は思わず口を挟んでしまう。
「基本は楽しく運動しようって感じかな。りょーちゃんには結構説明してたと思うけど」
「いや、社交辞令的に言ってるのかとって思って」
「そりゃあ、個人で強い奴もいないことはないけど、団体で見るとエンジョイ勢の方が多いと思う。そもそもうちの高校はスポーツ重視ってわけじゃないし」
「それもそうか」
「わたし達文芸部も大会は出てないから文化部も控えめなのかも……」
「へー 文芸部も大会とかあるんだ」
「うん。作品の品評会とか小説に関するディベート大会とか」
「あー ニュースとかで見たことあるかも。岸本さんは出たら強そう」
「そ、そうかなぁ? 緊張して何も喋れなくなりそうだけれど……」
「いや、岸本さんは好きなことには強く出れるタイプだと思うよ?」
「……産賀さん」
すっかり雑談タイムに入った松永を見て、伊月さんはなぜか僕に話しかける。
「路先輩と浩太くんってこんなに話せたんですね……」
「ああ。いつ頃からかはわからないけど、こうなってたよ。まぁ、松永はコミュ力高いから」
「いえ、浩太くんに驚いたんじゃなくて、路先輩の方です」
「そんなに驚いたの?」
「はい。わたし達ともここまで砕けて話してないような気がして。もちろん、最近はわたし達にも気軽に話してくれているとは思うんですけど……」
「まぁ、伊月さんがそう感じてるのならそうなのかもしれない」
「……産賀さんはあんまり何も思わないんですか?」
「えっ? 何が?」
「……なんでもありません! 浩太くん、話はひとまず中断して。ご飯食べに来たんでしょ」
「はーい。それじゃあ、皆さん。お手を合わせて……いただきます!」
その後も松永を交えて、少し騒がしい昼食の時間を過ごした。
後から考えると伊月さんが言いたかったのは……嫉妬する的な話だったのだろうか。
僕はコミュ力という点で松永に勝てる気がしていないので、路ちゃんが話しやすくしていても羨ましいとは思うことはない。
でも、伊月さん的にはちょっと面白くないと思う気持ちはわからなくはない。
きっと路ちゃんが他の男子と親しげに話していたら、松永の時ほど心安らかではないはずだ。
ただ、今のところは……逆の立場で僕が路ちゃんにそういう感情を抱かせている可能性があるので、気を付けたいと思う。
この日も一応文芸部の活動日になっていたけど、勧誘の準備は大方済んでいたので、午前中で解散することになった。
お昼を持ってきていた僕と路ちゃん、伊月さんはそのまま部室に残っていたけど……
「わたし、やっぱり帰った方が……」
「そんなに気を遣わなくても大丈夫だよ。みんなで食べた方が楽しいし」
「そう言われましても……」
伊月さんは変に空気を読もうとしてくれていた。
僕としても伊月さんを帰すようなまねはしたくなかったので、歓迎する空気を出すけど、なかなか納得してくれない。
そうなれば……悪いとは思うけど緊急連絡をするしかなかった。
「お疲れでーす。おっ、まだみんな食べずに待っててくれたの?」
「こ、浩太くん!?」
「あれ? なんかサプライズ的な驚き方なんだけど、りょーちゃん知らせてなかったの?」
「知らされてないです! どういうことですか、産賀さん!?」
「い、いや。松永も学校にいるみたいだし、せっかくだから一緒に食べたらいいかなって」
僕はそう言いながら路ちゃんに目配せした。
すると、路ちゃんは、
「う、うん! わたしもいいと思う!」
と若干焦り気味だったけど合わせてくれた。
「で、でも、一応は文芸部の部室で……」
「まぁまぁ。細かいことは気にしないで」
「浩太くんが言うことじゃない! というか、テニス部の方は抜けて来て大丈夫なの?」
「全然平気。何なら昼からの練習も適当な感じだし」
「あんまり聞いてこなかったけど、うちのテニス部ってそんなに真剣な感じじゃないのか?」
呼び出したのはいいけど、松永の軽い発言に僕は思わず口を挟んでしまう。
「基本は楽しく運動しようって感じかな。りょーちゃんには結構説明してたと思うけど」
「いや、社交辞令的に言ってるのかとって思って」
「そりゃあ、個人で強い奴もいないことはないけど、団体で見るとエンジョイ勢の方が多いと思う。そもそもうちの高校はスポーツ重視ってわけじゃないし」
「それもそうか」
「わたし達文芸部も大会は出てないから文化部も控えめなのかも……」
「へー 文芸部も大会とかあるんだ」
「うん。作品の品評会とか小説に関するディベート大会とか」
「あー ニュースとかで見たことあるかも。岸本さんは出たら強そう」
「そ、そうかなぁ? 緊張して何も喋れなくなりそうだけれど……」
「いや、岸本さんは好きなことには強く出れるタイプだと思うよ?」
「……産賀さん」
すっかり雑談タイムに入った松永を見て、伊月さんはなぜか僕に話しかける。
「路先輩と浩太くんってこんなに話せたんですね……」
「ああ。いつ頃からかはわからないけど、こうなってたよ。まぁ、松永はコミュ力高いから」
「いえ、浩太くんに驚いたんじゃなくて、路先輩の方です」
「そんなに驚いたの?」
「はい。わたし達ともここまで砕けて話してないような気がして。もちろん、最近はわたし達にも気軽に話してくれているとは思うんですけど……」
「まぁ、伊月さんがそう感じてるのならそうなのかもしれない」
「……産賀さんはあんまり何も思わないんですか?」
「えっ? 何が?」
「……なんでもありません! 浩太くん、話はひとまず中断して。ご飯食べに来たんでしょ」
「はーい。それじゃあ、皆さん。お手を合わせて……いただきます!」
その後も松永を交えて、少し騒がしい昼食の時間を過ごした。
後から考えると伊月さんが言いたかったのは……嫉妬する的な話だったのだろうか。
僕はコミュ力という点で松永に勝てる気がしていないので、路ちゃんが話しやすくしていても羨ましいとは思うことはない。
でも、伊月さん的にはちょっと面白くないと思う気持ちはわからなくはない。
きっと路ちゃんが他の男子と親しげに話していたら、松永の時ほど心安らかではないはずだ。
ただ、今のところは……逆の立場で僕が路ちゃんにそういう感情を抱かせている可能性があるので、気を付けたいと思う。
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