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2年生春休み
3月30日(木)晴れ 清水夢愛との春散歩Ⅱ
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春休み7日目の木曜日。
この日は朝から清水先輩と散歩へ行くことになった……もちろん、路ちゃんの了承を得た上で。
実家から通うことになるので、遠方へ行く新大学生が忙しいこの時期にしては、かなりゆったりと過ごせているらしい。
「あ、そういえば読んだぞ。文芸部が卒業文集に寄稿してたやつ」
「おお。ありがとうございます」
「結構読み応えがあったよ。これって卒業生以外は配ってないのか」
「卒業生や関係者以外は配ってないですね。一応、文芸部と先生方に共有する分はありますけど」
「そうなのか。せっかくなら色んな人に見て貰った方が……と思うのは読んでる側だからか」
「いえ、実際制作したからにはもっとたくさんの人読んで欲しい人もいると思います」
清水先輩のようにしっかり読んでくれる人ばかりではないのは理解している。
だから、卒業生向けた冊子への寄稿は、文章を考えた労力に対して相応の感想が返ってこない作業だ。
まぁ、文芸部としても文章作成の機会になるので、悪いことばかりではないけど。
「その言い方からすると、良助は別にたくさんの人に読んで欲しくないってことか?」
「そ、それはその……」
自分でも気付かずにそう言っていたので、清水先輩の指摘に僕は焦ってしまう。
今回の僕の作品は……2年生の後輩が卒業予定の3人先輩について様々な思いを語っていく話になっていた。
その3人の先輩には少なからず実際にお世話になった先輩方の要素が入っているので……当然ながら清水先輩もモデルの1人となっていた。
もちろん、作品上は性別や所属する部活などが異なるから自伝小説にはなっていないけど、若干私信っぽさがある話になったと僕は思っていた。
「……そんなわけで先輩方に読んで貰えたら十分かと」
「なるほど……ん? ということは、私や小織みたいな登場人物が出る作品が良助が書いた小説ということだ」
「あれ……? 僕って清水先輩にはペンネーム教えてなかった……ですか?」
「よく覚えてないが、少なくとも私は知らずに読み切ったぞ?」
「……さっき言ったの忘れてください!」
「それは……無理! というか、ペンネーム教えてるつもりなら今教えてくれてもいいんじゃないか?」
「い、嫌です! 完全に知ってる体で話してしまった……」
森本先輩や水原先輩は部長・副部長の立場だから知っていたけど、いつの間にか先輩は全員知っている認識になっていた。
清水先輩あたりなら今日みたいに話している時にぽろりと言ってもおかしくないのに……少し前の僕は結構警戒心があったのか。
「まぁ、そこまで言うなら自分で探してみるか」
「さ、探すのもできればやめてください……」
「いいじゃないか。私は暇な方だし、読書週間としてしっかり読ませて貰うよ」
「うぅ……」
「ははっ。油断してた良助が悪いんだぞー」
その後も僕は若干の恥ずかしさを覚えながら清水先輩との朝の時間を過ごした。
冊子を読んでくれた事実は文芸部のみんなに公表したいけど……その度にちょっと恥ずかしさを思い出すことになりそうだ。
でも……清水先輩と同じように他の先輩方も読んでくれていると嬉しい。
この日は朝から清水先輩と散歩へ行くことになった……もちろん、路ちゃんの了承を得た上で。
実家から通うことになるので、遠方へ行く新大学生が忙しいこの時期にしては、かなりゆったりと過ごせているらしい。
「あ、そういえば読んだぞ。文芸部が卒業文集に寄稿してたやつ」
「おお。ありがとうございます」
「結構読み応えがあったよ。これって卒業生以外は配ってないのか」
「卒業生や関係者以外は配ってないですね。一応、文芸部と先生方に共有する分はありますけど」
「そうなのか。せっかくなら色んな人に見て貰った方が……と思うのは読んでる側だからか」
「いえ、実際制作したからにはもっとたくさんの人読んで欲しい人もいると思います」
清水先輩のようにしっかり読んでくれる人ばかりではないのは理解している。
だから、卒業生向けた冊子への寄稿は、文章を考えた労力に対して相応の感想が返ってこない作業だ。
まぁ、文芸部としても文章作成の機会になるので、悪いことばかりではないけど。
「その言い方からすると、良助は別にたくさんの人に読んで欲しくないってことか?」
「そ、それはその……」
自分でも気付かずにそう言っていたので、清水先輩の指摘に僕は焦ってしまう。
今回の僕の作品は……2年生の後輩が卒業予定の3人先輩について様々な思いを語っていく話になっていた。
その3人の先輩には少なからず実際にお世話になった先輩方の要素が入っているので……当然ながら清水先輩もモデルの1人となっていた。
もちろん、作品上は性別や所属する部活などが異なるから自伝小説にはなっていないけど、若干私信っぽさがある話になったと僕は思っていた。
「……そんなわけで先輩方に読んで貰えたら十分かと」
「なるほど……ん? ということは、私や小織みたいな登場人物が出る作品が良助が書いた小説ということだ」
「あれ……? 僕って清水先輩にはペンネーム教えてなかった……ですか?」
「よく覚えてないが、少なくとも私は知らずに読み切ったぞ?」
「……さっき言ったの忘れてください!」
「それは……無理! というか、ペンネーム教えてるつもりなら今教えてくれてもいいんじゃないか?」
「い、嫌です! 完全に知ってる体で話してしまった……」
森本先輩や水原先輩は部長・副部長の立場だから知っていたけど、いつの間にか先輩は全員知っている認識になっていた。
清水先輩あたりなら今日みたいに話している時にぽろりと言ってもおかしくないのに……少し前の僕は結構警戒心があったのか。
「まぁ、そこまで言うなら自分で探してみるか」
「さ、探すのもできればやめてください……」
「いいじゃないか。私は暇な方だし、読書週間としてしっかり読ませて貰うよ」
「うぅ……」
「ははっ。油断してた良助が悪いんだぞー」
その後も僕は若干の恥ずかしさを覚えながら清水先輩との朝の時間を過ごした。
冊子を読んでくれた事実は文芸部のみんなに公表したいけど……その度にちょっと恥ずかしさを思い出すことになりそうだ。
でも……清水先輩と同じように他の先輩方も読んでくれていると嬉しい。
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