722 / 942
2年生春休み
3月26日(日)雨 明莉との日常その84
しおりを挟む
春休み3日目の日曜日。
休みに入ってから生憎の天気が続いているけど、3月中は温かい天気が続いたおかげか、桜が少し花開いていた。
天気が良くなったらお花見に出かけてみるのもいいかもしれない。
そんな今日は明莉が神妙な面持ちが印象的だった。
なぜそんな表情になっていたかというと……
「お父様。そろそろ機種変更をお願い申し上げたいのですが……」
いつもとは違ってかなり腰を低めにした言い方の明莉。
今のスマホをそこそこ長く使っているようなので、高校入学前を武器に機種変更を狙っていたのだ。
ただ、スマホの本体代は結構高額になるので、さすがの明莉もいつものテンションで頼むわけにもいかなかったのだろう。
「今のスマホは壊れちゃったのか?」
「壊れてはないけど、最近ちょっと調子悪いところがありまして……」
「ふーむ……」
「も、もちろん。貯めてあるお年玉から差し引いて貰っても構わないのですが、できれば……新しめの機種が欲しくて……」
「しかもデータは使い放題の奴がいいと」
「はい……」
そんな明莉に対して、父さんはすぐに首を縦に振らなかった。
いつもは甘々だけど、何でも買い与えるわけではないのは僕もよく知っている。
かく言う僕も高校入学を機に機種変更のお願いをした時には、似たような質問をされた気がする。
「……まぁ、受験頑張ったし、許しましょう」
「……あ、ありがとう! お父さん!」
「ただし、最新機種にできるかはわからないぞ。現時点でお得なやつを選ぶから」
「全然構わないです! わーい!」
だけど、結局なんだかんだ言いながら許してくれるのが父さんである。
明莉もタイミングを狙っていたけど、そこには父さんなら許可してくれる信頼があったからだ。
それから2人は暫くの間、携帯会社のオンラインショップで機種やプランを選んでいた。
そして……
「本当にこの機種でいいんだな?」
「うん。よろしくお願いします!」
「よし。それじゃあ……行こうか、明莉」
「おっす! がんばるぞー!」
そう言いながら2人は恐らく決済前の画面が写ったスマホを持ちながら……母さんの元に向かっていく。
「えっ? まだ使えるんじゃないの?」
「いやー それが通信が悪くなる時がありまして……」
「でも、繋がってはいるんでしょ?」
「そうだけど、明莉も受験頑張ったんだし……」
「それとこれとは話が別でしょ? うーん……相変わらず高いわねぇ」
「お母さん、おねがーい!」
「許してあげてよぉ」
そう。最終的に買うかどうか決めるのは母さんの判断になるので、明莉は最初に父さんを味方に付ける必要があったのだ。
母さんはスマホに対してあまり知識がないのもあって、たとえお得なプランでも理解するまでに時間がかかる。
結局、そこから30分くらい2人で必死に説得して、機種変更の許可をもぎ取っていた。
僕はまったく関与していなかったけど、数年前の自分の再現を見ているようで、ちょっと懐かしい気持ちになった。
休みに入ってから生憎の天気が続いているけど、3月中は温かい天気が続いたおかげか、桜が少し花開いていた。
天気が良くなったらお花見に出かけてみるのもいいかもしれない。
そんな今日は明莉が神妙な面持ちが印象的だった。
なぜそんな表情になっていたかというと……
「お父様。そろそろ機種変更をお願い申し上げたいのですが……」
いつもとは違ってかなり腰を低めにした言い方の明莉。
今のスマホをそこそこ長く使っているようなので、高校入学前を武器に機種変更を狙っていたのだ。
ただ、スマホの本体代は結構高額になるので、さすがの明莉もいつものテンションで頼むわけにもいかなかったのだろう。
「今のスマホは壊れちゃったのか?」
「壊れてはないけど、最近ちょっと調子悪いところがありまして……」
「ふーむ……」
「も、もちろん。貯めてあるお年玉から差し引いて貰っても構わないのですが、できれば……新しめの機種が欲しくて……」
「しかもデータは使い放題の奴がいいと」
「はい……」
そんな明莉に対して、父さんはすぐに首を縦に振らなかった。
いつもは甘々だけど、何でも買い与えるわけではないのは僕もよく知っている。
かく言う僕も高校入学を機に機種変更のお願いをした時には、似たような質問をされた気がする。
「……まぁ、受験頑張ったし、許しましょう」
「……あ、ありがとう! お父さん!」
「ただし、最新機種にできるかはわからないぞ。現時点でお得なやつを選ぶから」
「全然構わないです! わーい!」
だけど、結局なんだかんだ言いながら許してくれるのが父さんである。
明莉もタイミングを狙っていたけど、そこには父さんなら許可してくれる信頼があったからだ。
それから2人は暫くの間、携帯会社のオンラインショップで機種やプランを選んでいた。
そして……
「本当にこの機種でいいんだな?」
「うん。よろしくお願いします!」
「よし。それじゃあ……行こうか、明莉」
「おっす! がんばるぞー!」
そう言いながら2人は恐らく決済前の画面が写ったスマホを持ちながら……母さんの元に向かっていく。
「えっ? まだ使えるんじゃないの?」
「いやー それが通信が悪くなる時がありまして……」
「でも、繋がってはいるんでしょ?」
「そうだけど、明莉も受験頑張ったんだし……」
「それとこれとは話が別でしょ? うーん……相変わらず高いわねぇ」
「お母さん、おねがーい!」
「許してあげてよぉ」
そう。最終的に買うかどうか決めるのは母さんの判断になるので、明莉は最初に父さんを味方に付ける必要があったのだ。
母さんはスマホに対してあまり知識がないのもあって、たとえお得なプランでも理解するまでに時間がかかる。
結局、そこから30分くらい2人で必死に説得して、機種変更の許可をもぎ取っていた。
僕はまったく関与していなかったけど、数年前の自分の再現を見ているようで、ちょっと懐かしい気持ちになった。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
令嬢の名門女学校で、パンツを初めて履くことになりました
フルーツパフェ
大衆娯楽
とある事件を受けて、財閥のご令嬢が数多く通う女学校で校則が改訂された。
曰く、全校生徒はパンツを履くこと。
生徒の安全を確保するための善意で制定されたこの校則だが、学校側の意図に反して事態は思わぬ方向に?
史実上の事件を元に描かれた近代歴史小説。
幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。
スタジオ.T
青春
幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。
そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。
ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる