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2年生春休み
3月25日(土)曇り 桜庭正弥との日常
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春休み2日目の土曜日。
本日は午後から久しぶりに桜庭くんが我が家に遊びに来る。
合格したお祝いの言葉を直接言っていないから、僕が覚えている限りだと前の訪問からかなり時間が経っていた。
「こんにちは、桜庭くん。改めて高校合格おめでとう」
「あ、ありがとうございます! 4月からは後輩としてもお世話になります!」
「ははっ、そんなに畏まらなくても大丈夫だよ」
「いえ、これから本当にお世話になる機会も多くなると思いますし……小織姉さんからは良助さんに頼っておけば間違いないと言われました」
「さ、桜庭先輩が……」
桜庭くんから寄せられる期待の目からして、桜庭先輩は少々話を盛ったのかもしれないと思った。
いや、頼られるのは嬉しいことなんだけど……
「それより桜庭くん。ほんのちょっと……時間を貰っていいかな?」
「えっ? なんですか?」
「明莉、ちょっと桜庭くんと話していいか?」
「えっ、どしたの急に。今更、彼女の兄としての威厳を知らしめるつもり?」
「そんなことはしない。ただ、個人的な話があるんだ」
「ふーん? まぁ、ちょっとならいいけど」
そう言われたので、僕は桜庭くんの肩を持ちながら一旦廊下に出た。
「な、なんの話でしょうか……」
「あっ、別に桜庭くんに何か物申したいわけじゃなくて、参考までに聞きたいことがあるんだ。その……彼女の家に遊びに行くのって緊張しないのかと」
僕が恥を忍んでそう聞く。
頼られる前に思いっきり頼ってしまって悪いけど、路ちゃん宅に両親がいる状態で訪問するのはほぼ決定してしまった。
それならば既に何度も訪問している桜庭くんから何か有益な情報を得られると思ったのだ。
……我ながら情けない彼女の兄である。
「そ、それって……最近の僕があまり緊張感なく遊びに来てしまってるという……」
「違う違う。かくかくしかじかで……僕も今度行くことになったんだ」
「な、なるほど。おめでとうございます」
「あ、ありがとう」
桜庭くんとの会話が妙にぎこちないのは、久しぶりのくせにこんなことを聞いた僕が悪い。
それでも真面目な桜庭くんは真剣に考えてから答えてくれた。
「緊張は全くしなくなったわけじゃないんですけど、ご両親と一度会ってからはそれほど感じなくなったように思います。お二人の両親は優しかったのもあるとは思いますが」
「そうか……うちの父さん、本当に優しかった?」
「……ちょっと挙動不審で怖かったのが本音です」
「いや、それは間違ってないよ。つまりは……この一回目が大事ってわけだ」
「すみません。あんまりいいアドバイスできなくて……」
「そんなことないよ。というか、年上なのにこんなこと聞いて、ちゃんと答えてくれるだけで十分ありがたい」
「それは……僕も良助さんに頼って貰えると、ちょっと嬉しいのでおあいこです」
桜庭くんは少し恥ずかしそうにしながらそう言う。
それを見た時……不覚にもちょっと可愛いと思ってしまった。
たまに僕の下にできたのが弟だったらどうだったのかと聞かれることがあるけど、この感じなら僕は弟でも明莉と同じように接していたかもしれない。
どっちにしろ周りは微妙な目で見られそうだけど。
「内緒話終わった?」
「お、おお。急に借りてすまなかった」
「いやいや。あかりとしては2人が仲良くしてくれた方がありがたいし」
「失礼します、良助さん」
寛大な妹と丁寧な彼氏に感謝しながら、僕は自分の部屋に戻って行った。
まぁ、結局は最初だから頑張るしかないという根性論しか得られなかったけど、中3の桜庭くんが出来たことを高3になる僕ができないでどうする。
……いや、高2まで彼女できてなかった僕だからできない可能性があるんだ……春休み中は根性も高めていこう。
本日は午後から久しぶりに桜庭くんが我が家に遊びに来る。
合格したお祝いの言葉を直接言っていないから、僕が覚えている限りだと前の訪問からかなり時間が経っていた。
「こんにちは、桜庭くん。改めて高校合格おめでとう」
「あ、ありがとうございます! 4月からは後輩としてもお世話になります!」
「ははっ、そんなに畏まらなくても大丈夫だよ」
「いえ、これから本当にお世話になる機会も多くなると思いますし……小織姉さんからは良助さんに頼っておけば間違いないと言われました」
「さ、桜庭先輩が……」
桜庭くんから寄せられる期待の目からして、桜庭先輩は少々話を盛ったのかもしれないと思った。
いや、頼られるのは嬉しいことなんだけど……
「それより桜庭くん。ほんのちょっと……時間を貰っていいかな?」
「えっ? なんですか?」
「明莉、ちょっと桜庭くんと話していいか?」
「えっ、どしたの急に。今更、彼女の兄としての威厳を知らしめるつもり?」
「そんなことはしない。ただ、個人的な話があるんだ」
「ふーん? まぁ、ちょっとならいいけど」
そう言われたので、僕は桜庭くんの肩を持ちながら一旦廊下に出た。
「な、なんの話でしょうか……」
「あっ、別に桜庭くんに何か物申したいわけじゃなくて、参考までに聞きたいことがあるんだ。その……彼女の家に遊びに行くのって緊張しないのかと」
僕が恥を忍んでそう聞く。
頼られる前に思いっきり頼ってしまって悪いけど、路ちゃん宅に両親がいる状態で訪問するのはほぼ決定してしまった。
それならば既に何度も訪問している桜庭くんから何か有益な情報を得られると思ったのだ。
……我ながら情けない彼女の兄である。
「そ、それって……最近の僕があまり緊張感なく遊びに来てしまってるという……」
「違う違う。かくかくしかじかで……僕も今度行くことになったんだ」
「な、なるほど。おめでとうございます」
「あ、ありがとう」
桜庭くんとの会話が妙にぎこちないのは、久しぶりのくせにこんなことを聞いた僕が悪い。
それでも真面目な桜庭くんは真剣に考えてから答えてくれた。
「緊張は全くしなくなったわけじゃないんですけど、ご両親と一度会ってからはそれほど感じなくなったように思います。お二人の両親は優しかったのもあるとは思いますが」
「そうか……うちの父さん、本当に優しかった?」
「……ちょっと挙動不審で怖かったのが本音です」
「いや、それは間違ってないよ。つまりは……この一回目が大事ってわけだ」
「すみません。あんまりいいアドバイスできなくて……」
「そんなことないよ。というか、年上なのにこんなこと聞いて、ちゃんと答えてくれるだけで十分ありがたい」
「それは……僕も良助さんに頼って貰えると、ちょっと嬉しいのでおあいこです」
桜庭くんは少し恥ずかしそうにしながらそう言う。
それを見た時……不覚にもちょっと可愛いと思ってしまった。
たまに僕の下にできたのが弟だったらどうだったのかと聞かれることがあるけど、この感じなら僕は弟でも明莉と同じように接していたかもしれない。
どっちにしろ周りは微妙な目で見られそうだけど。
「内緒話終わった?」
「お、おお。急に借りてすまなかった」
「いやいや。あかりとしては2人が仲良くしてくれた方がありがたいし」
「失礼します、良助さん」
寛大な妹と丁寧な彼氏に感謝しながら、僕は自分の部屋に戻って行った。
まぁ、結局は最初だから頑張るしかないという根性論しか得られなかったけど、中3の桜庭くんが出来たことを高3になる僕ができないでどうする。
……いや、高2まで彼女できてなかった僕だからできない可能性があるんだ……春休み中は根性も高めていこう。
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