706 / 942
2年生3学期
3月10日(金)晴れ 諸先輩方の卒業式
しおりを挟む
今年度の卒業式が行われた金曜日。
まるで祝福するような良い天気……という文言を去年も書いたような気がするから、お天道様は結構空気を読んでいるのかもしれない。
卒業式自体は形式通り順調に進んでいき、行事で何回か顔を見たことがある3年生とクラスは違うけど顔見知りの在校生が挨拶を終えると、恒例の卒業ソングが流れて無事に幕を閉じる。
そして、3年生がそれぞれのクラスで最後の挨拶を終えた後、僕らからすると本題になる学校で最後に話す時間になる。
「ソフィア先輩から今文芸部で集まってるって」
路ちゃんにそう言われていつもより圧倒的に人の多い中庭を探していくと、一番お世話になった4人の3年生が集まっていた。
「あっ、ウーブ君に路子ちゃん……うわーん!」
すると、到着するや否やソフィア先輩は泣きながら路ちゃんに抱き着いた。
恐らく1回以上泣いた後だったのか、鼻は赤くなっている。
「まったくしょうがないな。よく来てくれたよ。産賀に岸も……路子」
「汐里、最後までWきしもと呼び慣れなかったねー あっ、お疲れー」
一方、水原先輩と森本先輩は特に泣いた感じはなく、いつも通りだった。
でも、暫く会ってなかったし、この感じも最後になると思うと、こみ上げてくるものがある。
「1年生が入ってから水原先輩は忙しそうだったので、しょうがないですよ」
「そう言ってくれると助かる。おかげで志望校にも合格できた」
「おお、おめでとうございます!」
「本当はすぐにでも知らせたかったんだがな……」
水原先輩はそう言いながら森本先輩の方を細い目で見つめる。
「いやー 勝負はこれからだから大丈夫―」
「えっ? それって……」
「今のところニートにリーチがかかってる~」
「ええっ!?」
「そういうことなんだ……送り出す会をやって貰ってる場合じゃない」
「それはそれだから普通に出るよー まぁ、どうしようもなかったらバイト先に就職かなー」
「ば、バイトしてたんですか」
「卒業するから自白するけどそうだよー この地区からちょっと離れたところの本屋だから今度の会で教えるねー」
「その前に2次受付をがんばることだな」
「ぐすっ……みんな楽しそうだね」
森本先輩の衝撃の現状を聞いている間に、ソフィア先輩は路ちゃんになだめられていた。
そういう状況なら情報共有できなくても仕方がない。
「あれ? 藤原先輩はどこに?」
「男子で集まってるらしいけど……あっ、シュウ~」
「……遅れた。ソフィア……目が真っ赤」
「しょうがないでしょ。今日で最後……うわーん!」
「うぐっ……産賀くん、わざわざありがとう……でも、ちょっと……」
「大丈夫です。慰めてあげてください」
それに対して藤原先輩は頷きながらソフィア先輩の頭を撫で始めた。
……見ないうちにかなり積極的になったような気がする。
「2人は同じ大学に行くんだって」
「へぇ、そうなんだ。じゃあ、大学に行ってからも……」
「うん?」
「あっ、いや。なんでもない」
路ちゃんとはその話もしたいところだけど、今日の目的は卒業生を見送ることだ。
話は保留して、僕は一旦文芸部の集まりを離れる。
「産賀くん、久しぶりだね。夢愛から聞いたと思うけど、私は遠くへ行ってしまうことになったよ」
校門に到着すると挨拶も早々に桜庭先輩がそう言ってくる。
「小織、卒業式終わりにいきなりその話か?」
「だって、これから産賀くんには夢愛と正弥くんのことを任せなきゃいけないから」
「えっ? 桜庭くん……じゃなくて、正弥くんもですか?」
「合格してたら個々の後輩かつ妹の彼氏という立場なんだから当然じゃない?」
「た、確かに」
「いや、当然は言い過ぎだと思ったんだけど。それに正弥くんは夢愛よりはしっかりしているから問題ないわ」
「なんで私が下にされてるの!?」
「当たり前でしょ。正直、今からでも無理矢理編入させてこっちに連れて行こうと思わなくもないけど……夢愛が自分で考えたから仕方なくここに置いていくんだから」
「小織…………なんか世話のかかるペットみたいな扱いなんだけど」
「間違ってないと思う」
桜庭先輩の容赦ない言い方に清水先輩は必死に抗議しているけど……何だか楽しそうにも見えた。
「さて、私達はそろそろクラスの集まりとやらに行かなきゃいけないから。寂しいけど、産賀くんとは暫くお別れね。春休みに会う可能性もあるけど、さようなら」
「は、はい。お元気で」
「……3年生で色々大変だろうけど、たまに夢愛の相手もしてあげてね」
「……わかりました」
「良助、そういえば……」
「はいはい。夢愛は春休み中も会うんだろうか、またその時ねー」
「な、なんで私だけ……あー、また今度―!」
桜庭先輩は清水先輩を引きずって校門を出ていった。
他の3年生も徐々に学校から離れて……たぶん、打ち上げや友達同士の集まりに行くのだろう。
文芸部の先輩方とはまだ会えるチャンスはあるけど、卒業式という区切りはやっぱり寂しさを感じさせる。
でも、改めて話を聞いて良い先輩達と巡り合えて良かったと思った。
まるで祝福するような良い天気……という文言を去年も書いたような気がするから、お天道様は結構空気を読んでいるのかもしれない。
卒業式自体は形式通り順調に進んでいき、行事で何回か顔を見たことがある3年生とクラスは違うけど顔見知りの在校生が挨拶を終えると、恒例の卒業ソングが流れて無事に幕を閉じる。
そして、3年生がそれぞれのクラスで最後の挨拶を終えた後、僕らからすると本題になる学校で最後に話す時間になる。
「ソフィア先輩から今文芸部で集まってるって」
路ちゃんにそう言われていつもより圧倒的に人の多い中庭を探していくと、一番お世話になった4人の3年生が集まっていた。
「あっ、ウーブ君に路子ちゃん……うわーん!」
すると、到着するや否やソフィア先輩は泣きながら路ちゃんに抱き着いた。
恐らく1回以上泣いた後だったのか、鼻は赤くなっている。
「まったくしょうがないな。よく来てくれたよ。産賀に岸も……路子」
「汐里、最後までWきしもと呼び慣れなかったねー あっ、お疲れー」
一方、水原先輩と森本先輩は特に泣いた感じはなく、いつも通りだった。
でも、暫く会ってなかったし、この感じも最後になると思うと、こみ上げてくるものがある。
「1年生が入ってから水原先輩は忙しそうだったので、しょうがないですよ」
「そう言ってくれると助かる。おかげで志望校にも合格できた」
「おお、おめでとうございます!」
「本当はすぐにでも知らせたかったんだがな……」
水原先輩はそう言いながら森本先輩の方を細い目で見つめる。
「いやー 勝負はこれからだから大丈夫―」
「えっ? それって……」
「今のところニートにリーチがかかってる~」
「ええっ!?」
「そういうことなんだ……送り出す会をやって貰ってる場合じゃない」
「それはそれだから普通に出るよー まぁ、どうしようもなかったらバイト先に就職かなー」
「ば、バイトしてたんですか」
「卒業するから自白するけどそうだよー この地区からちょっと離れたところの本屋だから今度の会で教えるねー」
「その前に2次受付をがんばることだな」
「ぐすっ……みんな楽しそうだね」
森本先輩の衝撃の現状を聞いている間に、ソフィア先輩は路ちゃんになだめられていた。
そういう状況なら情報共有できなくても仕方がない。
「あれ? 藤原先輩はどこに?」
「男子で集まってるらしいけど……あっ、シュウ~」
「……遅れた。ソフィア……目が真っ赤」
「しょうがないでしょ。今日で最後……うわーん!」
「うぐっ……産賀くん、わざわざありがとう……でも、ちょっと……」
「大丈夫です。慰めてあげてください」
それに対して藤原先輩は頷きながらソフィア先輩の頭を撫で始めた。
……見ないうちにかなり積極的になったような気がする。
「2人は同じ大学に行くんだって」
「へぇ、そうなんだ。じゃあ、大学に行ってからも……」
「うん?」
「あっ、いや。なんでもない」
路ちゃんとはその話もしたいところだけど、今日の目的は卒業生を見送ることだ。
話は保留して、僕は一旦文芸部の集まりを離れる。
「産賀くん、久しぶりだね。夢愛から聞いたと思うけど、私は遠くへ行ってしまうことになったよ」
校門に到着すると挨拶も早々に桜庭先輩がそう言ってくる。
「小織、卒業式終わりにいきなりその話か?」
「だって、これから産賀くんには夢愛と正弥くんのことを任せなきゃいけないから」
「えっ? 桜庭くん……じゃなくて、正弥くんもですか?」
「合格してたら個々の後輩かつ妹の彼氏という立場なんだから当然じゃない?」
「た、確かに」
「いや、当然は言い過ぎだと思ったんだけど。それに正弥くんは夢愛よりはしっかりしているから問題ないわ」
「なんで私が下にされてるの!?」
「当たり前でしょ。正直、今からでも無理矢理編入させてこっちに連れて行こうと思わなくもないけど……夢愛が自分で考えたから仕方なくここに置いていくんだから」
「小織…………なんか世話のかかるペットみたいな扱いなんだけど」
「間違ってないと思う」
桜庭先輩の容赦ない言い方に清水先輩は必死に抗議しているけど……何だか楽しそうにも見えた。
「さて、私達はそろそろクラスの集まりとやらに行かなきゃいけないから。寂しいけど、産賀くんとは暫くお別れね。春休みに会う可能性もあるけど、さようなら」
「は、はい。お元気で」
「……3年生で色々大変だろうけど、たまに夢愛の相手もしてあげてね」
「……わかりました」
「良助、そういえば……」
「はいはい。夢愛は春休み中も会うんだろうか、またその時ねー」
「な、なんで私だけ……あー、また今度―!」
桜庭先輩は清水先輩を引きずって校門を出ていった。
他の3年生も徐々に学校から離れて……たぶん、打ち上げや友達同士の集まりに行くのだろう。
文芸部の先輩方とはまだ会えるチャンスはあるけど、卒業式という区切りはやっぱり寂しさを感じさせる。
でも、改めて話を聞いて良い先輩達と巡り合えて良かったと思った。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。
スタジオ.T
青春
幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。
そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。
ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
[恥辱]りみの強制おむつ生活
rei
大衆娯楽
中学三年生になる主人公倉持りみが集会中にお漏らしをしてしまい、おむつを当てられる。
保健室の先生におむつを当ててもらうようにお願い、クラスメイトの前でおむつ着用宣言、お漏らしで小学一年生へ落第など恥辱にあふれた作品です。
令嬢の名門女学校で、パンツを初めて履くことになりました
フルーツパフェ
大衆娯楽
とある事件を受けて、財閥のご令嬢が数多く通う女学校で校則が改訂された。
曰く、全校生徒はパンツを履くこと。
生徒の安全を確保するための善意で制定されたこの校則だが、学校側の意図に反して事態は思わぬ方向に?
史実上の事件を元に描かれた近代歴史小説。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる