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2年生3学期
2月21日(火)雪時々曇り 後輩との日常・桐山宗太郎の場合その14
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今年何度目からわからない雪が降った火曜日。
本日はテスト前最後の部活動であり、卒業生に向けた冊子に載せる小説について、最終確認が行われる。
冊子の製作自体は先生方に任せればいいので、来週の月曜の提出期限に間に合えば問題ない。
テスト前の期間には被ってしまうけど、前々か言っているので、この時期にはもう感性が見えている――
「産賀先輩……俺、全然完成形が見えないっす……」
――まぁ、そういう人も1人くらいはいるだろう。期限を長めに取っておいて良かった。
「えっと……現時点でどれくらいできているの?」
「多く見積もって6割っす……」
「う、うーむ……でも、これでテスト勉強を疎かにさせるわけにもいかないからな……」
「提出できなかったら強制退部っすか!?」
「いやいや。そこまではしないから。もうちょっと早めに言ってくれたらありがたかったけど」
そう言いつつも普段は雑談に流れてしまっていたので、そこは僕も反省しなければならない。
あくまで本題は部活動なのだから。
「路ちゃん、どうしようか」
「3年生の先輩方に聞いてみたのだけれど……普通に提出できなかった人もいるみたいだから、無理はしないで大丈夫」
「そっか。じゃあ、桐山くんも無理はしないで――」
「いえ! 一応、金曜日までは粘ってみます! 来年度から副部長を任される予定なのに、こんなザマじゃ良くないっすから!」
「その気持ちはありがたいけど、本当に勉強の方を優先させていいからね? 部活を続けるためにも」
「お気遣い感謝っす!」
元気よく返事する桐山くんを見ると、そこだけ運動部のような雰囲気がある。
まぁ、かく言う僕も色々あって今回の作品が完成したのは直近だったし、実際にアイデアがまるで出ない気持ちもよくわかる。
これで桐山くんが作品づくりを嫌になったら元も子もない――
「桐山」
その時、突然横から姫宮さんが入って来て桐山くんを呼ぶ。
「ひ、姫宮さん!? な、何か……」
「煮詰まっているなら少しアドバイスしてあげてもいい」
「えっ……ええっ!? 姫宮さんが!?」
「せっかく六割くらいできてるなら勿体ないし」
「あ、ありがとう! で、でも、どこから相談すればいいやらで……」
「私はちょっと助言するだけ。全部教えなくても大丈夫」
そう言いながら姫宮さんは僕と路ちゃんの方を見て頷いた。
何とも予想外だったけど、姫宮さんの気遣いはとてもありがたい。
「……産賀先輩!」
「お、おう。どうしたの?」
「俺、がんばってきます……!」
意気込む桐山くんを見て、僕はどっちの話だろうと思ってしまった。
文芸部的には良くない状況かもしれないけど、来年度の文芸部もなんやかんやでやっていけそうな空気を感じたのは良かったと思う。
少なくとも……桐山くんは今回の件で作品づくりが嫌いになることはないだろう。
本日はテスト前最後の部活動であり、卒業生に向けた冊子に載せる小説について、最終確認が行われる。
冊子の製作自体は先生方に任せればいいので、来週の月曜の提出期限に間に合えば問題ない。
テスト前の期間には被ってしまうけど、前々か言っているので、この時期にはもう感性が見えている――
「産賀先輩……俺、全然完成形が見えないっす……」
――まぁ、そういう人も1人くらいはいるだろう。期限を長めに取っておいて良かった。
「えっと……現時点でどれくらいできているの?」
「多く見積もって6割っす……」
「う、うーむ……でも、これでテスト勉強を疎かにさせるわけにもいかないからな……」
「提出できなかったら強制退部っすか!?」
「いやいや。そこまではしないから。もうちょっと早めに言ってくれたらありがたかったけど」
そう言いつつも普段は雑談に流れてしまっていたので、そこは僕も反省しなければならない。
あくまで本題は部活動なのだから。
「路ちゃん、どうしようか」
「3年生の先輩方に聞いてみたのだけれど……普通に提出できなかった人もいるみたいだから、無理はしないで大丈夫」
「そっか。じゃあ、桐山くんも無理はしないで――」
「いえ! 一応、金曜日までは粘ってみます! 来年度から副部長を任される予定なのに、こんなザマじゃ良くないっすから!」
「その気持ちはありがたいけど、本当に勉強の方を優先させていいからね? 部活を続けるためにも」
「お気遣い感謝っす!」
元気よく返事する桐山くんを見ると、そこだけ運動部のような雰囲気がある。
まぁ、かく言う僕も色々あって今回の作品が完成したのは直近だったし、実際にアイデアがまるで出ない気持ちもよくわかる。
これで桐山くんが作品づくりを嫌になったら元も子もない――
「桐山」
その時、突然横から姫宮さんが入って来て桐山くんを呼ぶ。
「ひ、姫宮さん!? な、何か……」
「煮詰まっているなら少しアドバイスしてあげてもいい」
「えっ……ええっ!? 姫宮さんが!?」
「せっかく六割くらいできてるなら勿体ないし」
「あ、ありがとう! で、でも、どこから相談すればいいやらで……」
「私はちょっと助言するだけ。全部教えなくても大丈夫」
そう言いながら姫宮さんは僕と路ちゃんの方を見て頷いた。
何とも予想外だったけど、姫宮さんの気遣いはとてもありがたい。
「……産賀先輩!」
「お、おう。どうしたの?」
「俺、がんばってきます……!」
意気込む桐山くんを見て、僕はどっちの話だろうと思ってしまった。
文芸部的には良くない状況かもしれないけど、来年度の文芸部もなんやかんやでやっていけそうな空気を感じたのは良かったと思う。
少なくとも……桐山くんは今回の件で作品づくりが嫌いになることはないだろう。
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