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2年生3学期
2月12日(日)晴れのち曇り 明莉との日常その77
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修学旅行の疲労が残っていた日曜日。
しかし、3学期の授業日数にそれほど余裕がないのか、明日からは普通に授業が行われる。
昨日も実質的には休みのようなものだけど、体力のない僕は今日は全力で回復に努めたい……ところだった。
「それじゃあ、りょうちゃん、サポートよろしくね」
しかし、2日後に迫ったバレンタインのために今日は明莉を手伝わなければならない。
明日は塾があるので明莉を手伝えるタイミングは今日しかなかった。
「明莉、今からどんな料理でもそこそこのクオリティが出せる技を教える」
「えっ。そんな裏技みたいなやつあるの」
「ああ。それは……レシピ通りに作ることだ」
「なぁんだ。それ、前にも言わなかった?」
「いや、真面目に言ってるんだぞ? 3分かけるところを2分40秒にしたり、5g入れるところを目分量にしたり、そういうちょっとの差が大きな失敗を生み出すんだ」
「な、なるほど。でも……あかりはそんなことしないよ?」
冗談ではなく本気でそう思っている目をしていたので僕はため息をついた。
料理中は集中しているのかわからないけど、明莉の料理には物凄くアドリブが多い。
それ以外にも問題点はあるけど、ひとまずそこだけ守って貰いたかった。
「まず今回のガトーショコラは下準備から入る。チョコ以外の混ぜるのに必要な材料を計ろう」
「はーい。レシピ通り……レシピ通り……」
「待て待て! それ小さじじゃなくてスプーンだから!」
「あっ、本当だ。うっかりしてた」
――これがわざとじゃなさそうだから恐ろしい。
料理中の明莉は別の意思に操られているのか……?
「シェフ! 余ったチョコはつまんでいいですか!」
「一応置いといて……って、このレシピだと全部使うんじゃないの?」
「あっ。一個多く開けてました。でも、まだ入れてません!」
「よ、良かった。レシピで大は小を兼ねるは通用しないから」
「でも、1枚あたり25gと考えたら……」
「そういうテクニカルなことは一回成功してからにしよう」
「えー さすがに小学生の計算だし……」
「数値上はそうでも料理だとバランス変わったりする可能性もあるの」
それに関しては僕自身もミスしたことがある。1個あたりで考えて量を増減させたら、なぜか本来出るべきとろみが無くなったり、思っていた味を変わったりするものだ。
ただ、今回に関して言えば、僕は作業自体にはそれほど手を出さずに、要所で指示を出すだけで良かった。
明莉自身がやる気を出していたおかげもあるだろう。
そうして、できあがった生地をオーブントースターに入れて数十分後。
「おー……上手くできた……のかなぁ?」
「うん。いいと思う。あとは冷ましてから冷蔵庫に入れて完成だ」
「あっ、冷たくなるからちょっとひび割れた感じになるんだ。なんかもっとこんがり焼けてできあがると思ってた」
「確かに、僕もレシピ見るまで全然知らなかったよ。でも、量も間違えてなかったし、上出来だと思う」
「やったー!」
「あとは粉砂糖かけたりするらしいけど、ここからはアドリブありで良さそうだ。もちろん、そのままの味をみてからだけど」
「うん。お疲れのところありがとね、りょうちゃん」
「いやいや。今日は結構楽させて貰ったよ」
「じゃあ、あかりはシェフから皆伝を……?」
「それは早いと思う。というか、僕はシェフというよりレシピ読むAIみたいな気分だったよ」
そう言いつつも明莉が無事に完成させたことにちょっと喜びがあった。
この手伝いをしていなかったら寝てるだけで終わる一日だった可能性もあるので、ある意味充実した休みを過ごせたと思う。
しかし、3学期の授業日数にそれほど余裕がないのか、明日からは普通に授業が行われる。
昨日も実質的には休みのようなものだけど、体力のない僕は今日は全力で回復に努めたい……ところだった。
「それじゃあ、りょうちゃん、サポートよろしくね」
しかし、2日後に迫ったバレンタインのために今日は明莉を手伝わなければならない。
明日は塾があるので明莉を手伝えるタイミングは今日しかなかった。
「明莉、今からどんな料理でもそこそこのクオリティが出せる技を教える」
「えっ。そんな裏技みたいなやつあるの」
「ああ。それは……レシピ通りに作ることだ」
「なぁんだ。それ、前にも言わなかった?」
「いや、真面目に言ってるんだぞ? 3分かけるところを2分40秒にしたり、5g入れるところを目分量にしたり、そういうちょっとの差が大きな失敗を生み出すんだ」
「な、なるほど。でも……あかりはそんなことしないよ?」
冗談ではなく本気でそう思っている目をしていたので僕はため息をついた。
料理中は集中しているのかわからないけど、明莉の料理には物凄くアドリブが多い。
それ以外にも問題点はあるけど、ひとまずそこだけ守って貰いたかった。
「まず今回のガトーショコラは下準備から入る。チョコ以外の混ぜるのに必要な材料を計ろう」
「はーい。レシピ通り……レシピ通り……」
「待て待て! それ小さじじゃなくてスプーンだから!」
「あっ、本当だ。うっかりしてた」
――これがわざとじゃなさそうだから恐ろしい。
料理中の明莉は別の意思に操られているのか……?
「シェフ! 余ったチョコはつまんでいいですか!」
「一応置いといて……って、このレシピだと全部使うんじゃないの?」
「あっ。一個多く開けてました。でも、まだ入れてません!」
「よ、良かった。レシピで大は小を兼ねるは通用しないから」
「でも、1枚あたり25gと考えたら……」
「そういうテクニカルなことは一回成功してからにしよう」
「えー さすがに小学生の計算だし……」
「数値上はそうでも料理だとバランス変わったりする可能性もあるの」
それに関しては僕自身もミスしたことがある。1個あたりで考えて量を増減させたら、なぜか本来出るべきとろみが無くなったり、思っていた味を変わったりするものだ。
ただ、今回に関して言えば、僕は作業自体にはそれほど手を出さずに、要所で指示を出すだけで良かった。
明莉自身がやる気を出していたおかげもあるだろう。
そうして、できあがった生地をオーブントースターに入れて数十分後。
「おー……上手くできた……のかなぁ?」
「うん。いいと思う。あとは冷ましてから冷蔵庫に入れて完成だ」
「あっ、冷たくなるからちょっとひび割れた感じになるんだ。なんかもっとこんがり焼けてできあがると思ってた」
「確かに、僕もレシピ見るまで全然知らなかったよ。でも、量も間違えてなかったし、上出来だと思う」
「やったー!」
「あとは粉砂糖かけたりするらしいけど、ここからはアドリブありで良さそうだ。もちろん、そのままの味をみてからだけど」
「うん。お疲れのところありがとね、りょうちゃん」
「いやいや。今日は結構楽させて貰ったよ」
「じゃあ、あかりはシェフから皆伝を……?」
「それは早いと思う。というか、僕はシェフというよりレシピ読むAIみたいな気分だったよ」
そう言いつつも明莉が無事に完成させたことにちょっと喜びがあった。
この手伝いをしていなかったら寝てるだけで終わる一日だった可能性もあるので、ある意味充実した休みを過ごせたと思う。
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