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2年生3学期
2月10日(金)曇り 北の修学旅行その3
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各地の天気は荒れたらしい3日目。
北海道は幸いなことに曇りで済んだので、今日のスケジュールは予定通り行われる。
そのスケジュールとは、一番楽しみにしている人も多いであろう班行動だ。
時間内に帰って来られるのであれば、札幌市内のどこでも回っていいことになっていて、最初からしっかり計画を立てる班もあれば、行ってから考える班もあった。
「さて、とりあえずはラーメンを食べるのを目標にするとして……他は何する?」
松永の問いかけに僕らはすぐに答えられずスマホを調べ始めた。
修学旅行前に集まった際に出てきたのは札幌の美味しいラーメンを食べたいという松永の希望だけだった。
「うーん……とりあえず時計塔とか見に行く?」
「て、展示とかあるみたいだし」
「なるほど。それもいいけど……2人は落ち合う場所とか大丈夫なの?」
松永は僕と本田くんを指差しながらそう言う。
だけど、僕は意味がわらかなかったので首を傾げてしまった。
すると、松永は「あちゃー」というリアクションを返す。
「岸本さんとの合流だよ」
「えっ? 路ちゃんは花園さんとかと一緒に……」
「それはそうだろうけど、こっそり抜けて一緒に回るって話!」
「いや、良くないでしょそれ」
「ぽんちゃんは考えてるでしょ」
「……まぁ、終盤ちょっとだけ」
「そ、そうなの!?」
そんな常識は全く知らなかった。
路ちゃんとの会話でも一日二日目で一緒になればいいと……いや、僕が言わなかったせいなのか? みんなやるものなのか?
いやいや、よく考えたら同じ学校の同学年と付き合う人ばかりじゃないから、常識ではないだろう。
「もう、りょーちゃんはそういうとこあるよなぁ。別に最後は班行動に戻ればいいんだから」
「で、でも……」
「松永。言っておくけど、オレも基本はこっちで行動するぞ。時間があったらちょっと一緒に回れるといいって話」
「そんな遠慮しなくても」
「この4人で回るからこそ楽しめることもある。な、倉さん」
「そ、そうだと思う! としかボクは言えないから」
「お前ら……」
「いや、感動するシーンじゃないぞ。とにかく時間がもったいないから移動しよう」
本田くんの言葉を合図に僕らはひとまず時計塔を目指していく。
その間、僕は路ちゃんに連絡を取ろうか悩んでいた。
偶然、行く場所が一緒になると考えれば……でも、路ちゃんも班で楽しんでいるだろうし……あくまでこれは修学旅行だから付き合ってる事情は持ち込むべきでは……
「おー、テレビで見たことあるやつだ。写真撮ろうぜ。時計塔っぽいポーズ」
「と、時計塔っぽい……ハサミの殺人鬼……?」
「なんか物騒な単語が。りょーちゃん、もっと笑って!」
「お、おう」
そこから時計塔の展示室を何となく見学した後、少し早めにラーメン屋へ向かう。
自由時間の間に昼食を取るようになっているけど、ラーメンは別腹にする予定らしい。
「どうせならジンギスカンか海鮮も食べたいし」
「松永。そんなに食いしん坊キャラだったか?」
「建物よりはグルメ旅したいタイプではある。ぽんちゃんは他に行きたいとこないの?」
「食べ物以外のお土産は見たいかな。何か有名なのあるっけ?」
「木刀?」
「空港で止められるだろう」
「ほ、本当に買う人いるのかな……」
そんな話をしつつ、目的のラーメン屋に到着する。
北海道は大きく分けて3種類のラーメンに分かれるようで、札幌は商品でもお馴染みの味噌ラーメンだ。
ただ、行った店では醤油と塩もあり、他にもご当地ラーメンらしきものあった。
こういう時に僕は安定を選ぶので、味噌ラーメンにしたけど……凄く美味しい。
いや、ラーメンは基本美味しいけれど、旅行で来た店というバフが乗っかってより美味しく感じた。
「……普通にお腹いっぱいになるな」
「そ、そうだね……何か食べ歩きするくらいがちょうどいいかも」
「よし、それじゃあお土産を見つけるがてら店先ぶらぶらするかー」
そうして市内の商店街的な場所を歩きながら腹ごなしをしていく。
さすがに木刀はなかったけど、わかりやすく「札幌」と入ったお土産は、すぐに会えない祖父母に渡すのにちょうど良さそうだ。
本当ならみんなにもカニやジンギスカンを食べて欲しいけど……
「おっ、これカニ味だって」
そうだ。清水先輩に言われたカニ味の食べ物もチェックしておかなければ。
そう思いながら色々見ていると、意外にも時間は早く過ぎていって、目的のホテルを目指すことも考えると、移動を始めるべき時間になった。
「……すまん。オレはホテル周辺に行ったらちょっとだけ抜ける」
「おお、連絡来たのね。りょーちゃんは?」
「いや、僕は……あっ」
松永に話を振られたちょうどその時、路ちゃんからメッセージが届く。
――わたしの班、そろそろホテルに向かうところ
「ま、松永。僕も……」
「りょうかい。早く返事してあげな。俺はクラさんとランデブーするから」
「ら、ランデブー……」
「なんでちょっと嫌そうなの」
「い、嫌じゃないよ」
松永と大倉くんのやり取りを横目に、僕は路ちゃんにメッセージを返す。
ホテル周辺で少しぶらぶらしよう――と。
――わかった。
――実は……班のみんなからも会いに行かないのかって言われて
――そういうものなのって驚いちゃった
路ちゃんの返事を見て、僕はちょっと安心する。
そして、ホテル周辺に着いた後、僕と本田くんは少しだけ班を抜けて、別行動させて貰った。
「良助くん……ちょっと美味しそうな匂いがする」
「あっ……ラーメンとか食べちゃったから」
「わたしもお刺身とかスイーツ食べて……正直、旅行終わりは太ってそう」
「それを言うなら僕も……でも、昨日のスキーで消費したから」
「……カロリーゼロ?」
「そういうことにしおこう」
その後、お互いの行動を話し合いながらホテル周りを少しばかり散歩した。
色々書けていないこともあるけど、色んな楽しみが詰まった3日目だった。
北海道は幸いなことに曇りで済んだので、今日のスケジュールは予定通り行われる。
そのスケジュールとは、一番楽しみにしている人も多いであろう班行動だ。
時間内に帰って来られるのであれば、札幌市内のどこでも回っていいことになっていて、最初からしっかり計画を立てる班もあれば、行ってから考える班もあった。
「さて、とりあえずはラーメンを食べるのを目標にするとして……他は何する?」
松永の問いかけに僕らはすぐに答えられずスマホを調べ始めた。
修学旅行前に集まった際に出てきたのは札幌の美味しいラーメンを食べたいという松永の希望だけだった。
「うーん……とりあえず時計塔とか見に行く?」
「て、展示とかあるみたいだし」
「なるほど。それもいいけど……2人は落ち合う場所とか大丈夫なの?」
松永は僕と本田くんを指差しながらそう言う。
だけど、僕は意味がわらかなかったので首を傾げてしまった。
すると、松永は「あちゃー」というリアクションを返す。
「岸本さんとの合流だよ」
「えっ? 路ちゃんは花園さんとかと一緒に……」
「それはそうだろうけど、こっそり抜けて一緒に回るって話!」
「いや、良くないでしょそれ」
「ぽんちゃんは考えてるでしょ」
「……まぁ、終盤ちょっとだけ」
「そ、そうなの!?」
そんな常識は全く知らなかった。
路ちゃんとの会話でも一日二日目で一緒になればいいと……いや、僕が言わなかったせいなのか? みんなやるものなのか?
いやいや、よく考えたら同じ学校の同学年と付き合う人ばかりじゃないから、常識ではないだろう。
「もう、りょーちゃんはそういうとこあるよなぁ。別に最後は班行動に戻ればいいんだから」
「で、でも……」
「松永。言っておくけど、オレも基本はこっちで行動するぞ。時間があったらちょっと一緒に回れるといいって話」
「そんな遠慮しなくても」
「この4人で回るからこそ楽しめることもある。な、倉さん」
「そ、そうだと思う! としかボクは言えないから」
「お前ら……」
「いや、感動するシーンじゃないぞ。とにかく時間がもったいないから移動しよう」
本田くんの言葉を合図に僕らはひとまず時計塔を目指していく。
その間、僕は路ちゃんに連絡を取ろうか悩んでいた。
偶然、行く場所が一緒になると考えれば……でも、路ちゃんも班で楽しんでいるだろうし……あくまでこれは修学旅行だから付き合ってる事情は持ち込むべきでは……
「おー、テレビで見たことあるやつだ。写真撮ろうぜ。時計塔っぽいポーズ」
「と、時計塔っぽい……ハサミの殺人鬼……?」
「なんか物騒な単語が。りょーちゃん、もっと笑って!」
「お、おう」
そこから時計塔の展示室を何となく見学した後、少し早めにラーメン屋へ向かう。
自由時間の間に昼食を取るようになっているけど、ラーメンは別腹にする予定らしい。
「どうせならジンギスカンか海鮮も食べたいし」
「松永。そんなに食いしん坊キャラだったか?」
「建物よりはグルメ旅したいタイプではある。ぽんちゃんは他に行きたいとこないの?」
「食べ物以外のお土産は見たいかな。何か有名なのあるっけ?」
「木刀?」
「空港で止められるだろう」
「ほ、本当に買う人いるのかな……」
そんな話をしつつ、目的のラーメン屋に到着する。
北海道は大きく分けて3種類のラーメンに分かれるようで、札幌は商品でもお馴染みの味噌ラーメンだ。
ただ、行った店では醤油と塩もあり、他にもご当地ラーメンらしきものあった。
こういう時に僕は安定を選ぶので、味噌ラーメンにしたけど……凄く美味しい。
いや、ラーメンは基本美味しいけれど、旅行で来た店というバフが乗っかってより美味しく感じた。
「……普通にお腹いっぱいになるな」
「そ、そうだね……何か食べ歩きするくらいがちょうどいいかも」
「よし、それじゃあお土産を見つけるがてら店先ぶらぶらするかー」
そうして市内の商店街的な場所を歩きながら腹ごなしをしていく。
さすがに木刀はなかったけど、わかりやすく「札幌」と入ったお土産は、すぐに会えない祖父母に渡すのにちょうど良さそうだ。
本当ならみんなにもカニやジンギスカンを食べて欲しいけど……
「おっ、これカニ味だって」
そうだ。清水先輩に言われたカニ味の食べ物もチェックしておかなければ。
そう思いながら色々見ていると、意外にも時間は早く過ぎていって、目的のホテルを目指すことも考えると、移動を始めるべき時間になった。
「……すまん。オレはホテル周辺に行ったらちょっとだけ抜ける」
「おお、連絡来たのね。りょーちゃんは?」
「いや、僕は……あっ」
松永に話を振られたちょうどその時、路ちゃんからメッセージが届く。
――わたしの班、そろそろホテルに向かうところ
「ま、松永。僕も……」
「りょうかい。早く返事してあげな。俺はクラさんとランデブーするから」
「ら、ランデブー……」
「なんでちょっと嫌そうなの」
「い、嫌じゃないよ」
松永と大倉くんのやり取りを横目に、僕は路ちゃんにメッセージを返す。
ホテル周辺で少しぶらぶらしよう――と。
――わかった。
――実は……班のみんなからも会いに行かないのかって言われて
――そういうものなのって驚いちゃった
路ちゃんの返事を見て、僕はちょっと安心する。
そして、ホテル周辺に着いた後、僕と本田くんは少しだけ班を抜けて、別行動させて貰った。
「良助くん……ちょっと美味しそうな匂いがする」
「あっ……ラーメンとか食べちゃったから」
「わたしもお刺身とかスイーツ食べて……正直、旅行終わりは太ってそう」
「それを言うなら僕も……でも、昨日のスキーで消費したから」
「……カロリーゼロ?」
「そういうことにしおこう」
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