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2年生3学期

2月3日(金)曇り 後輩との日常・桐山宗太郎の場合その13

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 今年は南南東やや南の方角らしい金曜日。
 ちょうど節分と被ったことから、文芸部では日葵さんが持ってきた豆を部室内に巻くことになった。
 こういうイベントごとに合わせてくるのは日葵さんらしいし、家でやる節分とは違った趣がある。

「調子乗って全部撒いちゃったから食べる分なくなっちゃった。あとは各自家で食べてくださいー」

 そんなプチ節分を終えた後のことだった。

「産賀先輩……いよいよっすね」

「うん? ああ、来週の修学旅行のこと? まぁ、大したお土産は買って来られないかもしれないけど……」

「違うっすよ。再来週はもうバレンタインって話っす」

 桐山くんは僕の鈍さに少しがっかりするような表情を見せる。
 昨日も明莉から言われたけど、そんなに意識するような時期になったのだろうか。
 テレビでチョコのCMを見たような、そうでないような……

「でも、バレンタインだから何かあるの?」

「それは……何もない可能性もあるっすけど……実際、去年の文芸部ではどうだったんすか?」

「去年は……女子達がチョコ交換をしていた気がする」

「産賀先輩や藤原先輩もそのおこぼれを?」

「貰ったよ」

「よしっ!!!」

 桐山くんは力強くガッツポーズする。

「でも、今年の1年生はどうするんだろうね」

「えっ。そこは路先輩がみんなで作ろうよーって言ってくれるんじゃないですか? もしくは日葵辺り」

「あるとすれば後者かな」

「つまり……姫宮さんのチョコを貰える可能性もあると」

「そ、そうかもね」

 そう言いながらも僕は姫宮さんが僕ら男子にチョコを用意してくれる姿があまり想像できなかった。
 何なら持ってこないことでネタにしてしまいそうな気がする。

「これで安心しました。さすがに女子だらけの部活にいるのに、チョコ0個だったとかえ言えないんで」

「桐山くんはチョコ貰った数とか友達と言い合ってるの?」

「いえ。お互いに傷付く可能性がるので言わないっす。でも、貰っておいて心の余裕を持っておくのは大事じゃないっすか」

「そうかなぁ」

「……いいっすよね。産賀先輩は本命を確定で貰えるんだから。何なら去年から本命だった可能性もあるし」

 桐山くんは妬みの視線で僕を見て来る。
 しまった。無自覚に桐山くんを煽っていたようだ。

「ぼ、僕も中学生以前は妹から貰うくらいだったから」

「いいじゃないっすか。母親よりは十分ランク上っすよ」

「いや、貰ったチョコに優劣は付けるべきじゃないよ。貰えることをありがたいと主w泣きゃ」
 
「な、なるほど。俺、謙虚さが欠けていたかもしれないっす……」

「わかってくれたらいいんだ」

 ちょっと上からになってしまったけど、桐山くんがひとまず落ち着いてくれたので僕は安心する。
 でも、仮に確定でチョコを貰えそうな状況じゃなかったら……僕も桐山くんのようにバレンタインチョコに飢えていたのだろうか。
 なんだかんだ言いつつも、僕も謙虚さを失っている可能性があるので、気を付けようと思った。
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