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2年生3学期
2月1日(水)曇り 奮起する大山亜里沙その4
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2月が始まる水曜日。
修学旅行がある分、今年の2月はいつも以上に短く感じる可能性がある。
それと同時に身内や知り合いの受験も本格化していくから、引き続き応援や手伝えることはやっていこうと思う。
そんな今日は大山さんが塾に通い始める日だ。
塾では学校の転校のような紹介はされないので、ぬるっと途中参加することになる。
そう考えると、僕なら緊張してしまいそうだけど、大山さんなら周りから聞かれて何とかやっていけそうだ。
「おっ。来たね、亜里沙」
重森さんがそう言うと、僕と路ちゃんも大山さんの方に目線を向ける。
しかし、それに対する大山さんの反応は……
「おはようございます、皆さん」
「亜里沙……?」
「アタシ、前の席に座らせて貰いますね」
何だか学校で会った時より畏まっているように見えた。
「亜里沙ちゃん、もしかして緊張してるのかな……?」
「いや、みーちゃんもわかってるとは思うけど、亜里沙は緊張してもあんな感じになるタイプじゃないよ。もっとわかりやすくテンパってる」
「じゃあ、いったい……」
「まさか……塾ではキャラ変していくつもりか」
「キャラ変……?」
「真面目チャンを装って、インテリ系な彼を捕まえようとしてる、とか」
「そ、そんな。亜里沙ちゃんはちゃんと勉強するつもりで来てるのに」
「でも、ついでに狙うならあり得なくない話じゃない?」
「……そうかも」
そこは納得するのか、と心の中で路ちゃんにツッコんでしまう。
2人の想像はともかく、大山さんが妙な状態なのは確かだ。
前の席に荷物を置いてもこちらへ帰ってくる様子はない。
「僕、ちょっと話しかけてくる」
「えっ、良助くん!?」
路ちゃんの驚きを聞きながらも大山さんのところに着くと、大山さんは尚もいつもとは違う空気を出していた。
「どうしたのかな、うぶクン」
「いや……こっちの台詞なんだけど」
「……ふっ。今のアタシは勉強モードなのだよ」
「勉強モード……とは」
「勉強するのに最も適したテンション、ないし空気感」
「まったく意味がわからない」
「亜里沙、何のネタ振り?」
いつの間にか重森さんと路ちゃんも来ていたけど、大山さんの態度には困惑していた。
「ネタじゃじゃないのだよ。アタシは塾にいる間は勉強へ真剣に向き合うように決めたのだから」
「それでなんかエセインテリっぽい喋りかぁ。いや、インテリキャラぶってるだけというか」
「形から入るのも重要だからね。悪いケド、初日で気合入れてるから」
「亜里沙ちゃん……あんまり気負わないでね」
「ありがと、ミチ」
そんな会話を終えて最初の英語の講義が始まった。
正直、僕はあまり理解できていないけど、大山さんなりの気合の入れ方なら仕方ない
それから次の講義に移る休憩時間。
「……ミチ、美里、うぶクン~!」
「えっ。どしたの、亜里沙」
「前で一人いるのめっちゃ寂しいんですケド!?」
「ええ……」
「やっぱ塾でもみんなと楽しくやった方がいいよね。うん、次の時間からそうする!」
勝手に納得した大山さんはせっかく陣取った前の席から重森さんの近くの席まで移動してきた。
「いや~ 柄でもないことはしない方がいいね。何事もゆっくりやっていかなきゃ」
「う、うん。亜里沙ちゃんはそれでいいと思う」
そんなこんなで僕らは気付かなかったけど、大山さん的には緊張感があって、今日はちょっと空回りしていたようだった。
長い付き合いになって慣れていたせいか、新しい場所での大山さんの反応は何だか新鮮だった。
修学旅行がある分、今年の2月はいつも以上に短く感じる可能性がある。
それと同時に身内や知り合いの受験も本格化していくから、引き続き応援や手伝えることはやっていこうと思う。
そんな今日は大山さんが塾に通い始める日だ。
塾では学校の転校のような紹介はされないので、ぬるっと途中参加することになる。
そう考えると、僕なら緊張してしまいそうだけど、大山さんなら周りから聞かれて何とかやっていけそうだ。
「おっ。来たね、亜里沙」
重森さんがそう言うと、僕と路ちゃんも大山さんの方に目線を向ける。
しかし、それに対する大山さんの反応は……
「おはようございます、皆さん」
「亜里沙……?」
「アタシ、前の席に座らせて貰いますね」
何だか学校で会った時より畏まっているように見えた。
「亜里沙ちゃん、もしかして緊張してるのかな……?」
「いや、みーちゃんもわかってるとは思うけど、亜里沙は緊張してもあんな感じになるタイプじゃないよ。もっとわかりやすくテンパってる」
「じゃあ、いったい……」
「まさか……塾ではキャラ変していくつもりか」
「キャラ変……?」
「真面目チャンを装って、インテリ系な彼を捕まえようとしてる、とか」
「そ、そんな。亜里沙ちゃんはちゃんと勉強するつもりで来てるのに」
「でも、ついでに狙うならあり得なくない話じゃない?」
「……そうかも」
そこは納得するのか、と心の中で路ちゃんにツッコんでしまう。
2人の想像はともかく、大山さんが妙な状態なのは確かだ。
前の席に荷物を置いてもこちらへ帰ってくる様子はない。
「僕、ちょっと話しかけてくる」
「えっ、良助くん!?」
路ちゃんの驚きを聞きながらも大山さんのところに着くと、大山さんは尚もいつもとは違う空気を出していた。
「どうしたのかな、うぶクン」
「いや……こっちの台詞なんだけど」
「……ふっ。今のアタシは勉強モードなのだよ」
「勉強モード……とは」
「勉強するのに最も適したテンション、ないし空気感」
「まったく意味がわからない」
「亜里沙、何のネタ振り?」
いつの間にか重森さんと路ちゃんも来ていたけど、大山さんの態度には困惑していた。
「ネタじゃじゃないのだよ。アタシは塾にいる間は勉強へ真剣に向き合うように決めたのだから」
「それでなんかエセインテリっぽい喋りかぁ。いや、インテリキャラぶってるだけというか」
「形から入るのも重要だからね。悪いケド、初日で気合入れてるから」
「亜里沙ちゃん……あんまり気負わないでね」
「ありがと、ミチ」
そんな会話を終えて最初の英語の講義が始まった。
正直、僕はあまり理解できていないけど、大山さんなりの気合の入れ方なら仕方ない
それから次の講義に移る休憩時間。
「……ミチ、美里、うぶクン~!」
「えっ。どしたの、亜里沙」
「前で一人いるのめっちゃ寂しいんですケド!?」
「ええ……」
「やっぱ塾でもみんなと楽しくやった方がいいよね。うん、次の時間からそうする!」
勝手に納得した大山さんはせっかく陣取った前の席から重森さんの近くの席まで移動してきた。
「いや~ 柄でもないことはしない方がいいね。何事もゆっくりやっていかなきゃ」
「う、うん。亜里沙ちゃんはそれでいいと思う」
そんなこんなで僕らは気付かなかったけど、大山さん的には緊張感があって、今日はちょっと空回りしていたようだった。
長い付き合いになって慣れていたせいか、新しい場所での大山さんの反応は何だか新鮮だった。
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