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2年生3学期
1月24日(火)曇りのち雪 松永浩太との歓談その12
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いよいよ大寒波がやって来た火曜日。
昨日貰った塾の資料は大山さんへ無事に渡せたので、今日の使命は果たせた。
そして、放課後は文芸部……の予定だったけど、今回の寒波の影響から部活全体が中止される。
正直、朝の時点だと僕もそんなに大変なことになるのかなぁと少し疑っていた。
だけど、お昼を過ぎてちょうど帰りの時間になった頃。
「りょーちゃん、お待たせ。さぁ、帰ろうか」
「……帰れるかなぁ」
「……いや、こんなことになるとは思わなんだ」
同じく部活が中止になった松永と共に外を見ると、辺りは一瞬で真っ白になっていた。
雪の量はそれほどでもないけど、風が強いせいで遠くが全く見えない。
一応、路ちゃんや大倉くんが車で帰るから送ってくれると言ってくれたけど、この中で駐輪場に愛車を放置して帰るわけにはいなかった。
「というか、松永も自転車で来ちゃったんだな」
「だって、朝は晴れてたじゃん」
「確かに」
「いや、これなら朝から降って休校にしてくれた方が良かったよ」
「まぁ、ちょっと遠くから電車で来る人は普通に休んでたしな」
「……全然やみそうにないから進むか」
覚悟を決めて歩き出すけど、本当に視界は最悪だった。
自転車に乗るわけにもいかないから押しているけど、風のせいでより重く感じる。
「何なら久々の雪だし、雪合戦でもしながら帰るか―ってテンションだったのになぁ!」
「明日も外に出る気しないレベルだよ!」
「犬も喜ばないやつ!」
風の音があるのでお互い会話の声はいつも2倍くらい大きくなっていた。
まぁ、周りを歩いている人もほとんどいないので、今日は許されるだろう。
「りょーちゃん! 実は俺……故郷に残してきた彼女がいてさ……」
「なんで急にそんなフラグを!?」
「何だか眠くなってきたよ……」
「いや、寒いし体力奪われるのはわかるけど! そこまでのやつじゃないから!」
「なんかりょーちゃんの方がツッコミで温まってそうなんだけど!?」
「理不尽だ!? そっちがボケたのに!」
これが一人で帰っていたら、かなり長い道のりに感じたかもしれない。
でも、松永とよくわからない会話をしていたおかげか、家に着くまではそんなに長く感じなかった。
「ふー……なんとか辿り着いた」
「お疲れ、りょーちゃん」
「……なんで僕の家に上がってるんだ」
「だって、俺の家までまだちょっとあるんだよ!? 休憩させて!」
「りょうちゃんおかえりー あっ、まっちゃんも生きてたんだ」
「命からがらね。できれば温かい物を頂いてから本拠地に帰りたい」
「えー……あかりは今受験勉強中だからなぁ。部外者が家に来るのはなぁ」
「そこをなんとか! というか、久々に会ってこの仕打ち?」
「冗談だよ。あかりは自分の部屋で勉強するから、おこたで温まっていきな」
「明莉様~」
「意外と元気あるな……」
そうして、松永は僕の家で30分ほど休憩してから自宅へ向かって行った。
残念ながらその間も雪は弱くならなかったけど、この距離なら頑張れると言っていた。
完全に今日の天気を舐めていた僕と松永が悪いけど、雪の中で謎のテンションだった時は少し楽しかったので、結果的には雪も悪くないと思った……嘘。今日のはさすがに降り過ぎだ。
昨日貰った塾の資料は大山さんへ無事に渡せたので、今日の使命は果たせた。
そして、放課後は文芸部……の予定だったけど、今回の寒波の影響から部活全体が中止される。
正直、朝の時点だと僕もそんなに大変なことになるのかなぁと少し疑っていた。
だけど、お昼を過ぎてちょうど帰りの時間になった頃。
「りょーちゃん、お待たせ。さぁ、帰ろうか」
「……帰れるかなぁ」
「……いや、こんなことになるとは思わなんだ」
同じく部活が中止になった松永と共に外を見ると、辺りは一瞬で真っ白になっていた。
雪の量はそれほどでもないけど、風が強いせいで遠くが全く見えない。
一応、路ちゃんや大倉くんが車で帰るから送ってくれると言ってくれたけど、この中で駐輪場に愛車を放置して帰るわけにはいなかった。
「というか、松永も自転車で来ちゃったんだな」
「だって、朝は晴れてたじゃん」
「確かに」
「いや、これなら朝から降って休校にしてくれた方が良かったよ」
「まぁ、ちょっと遠くから電車で来る人は普通に休んでたしな」
「……全然やみそうにないから進むか」
覚悟を決めて歩き出すけど、本当に視界は最悪だった。
自転車に乗るわけにもいかないから押しているけど、風のせいでより重く感じる。
「何なら久々の雪だし、雪合戦でもしながら帰るか―ってテンションだったのになぁ!」
「明日も外に出る気しないレベルだよ!」
「犬も喜ばないやつ!」
風の音があるのでお互い会話の声はいつも2倍くらい大きくなっていた。
まぁ、周りを歩いている人もほとんどいないので、今日は許されるだろう。
「りょーちゃん! 実は俺……故郷に残してきた彼女がいてさ……」
「なんで急にそんなフラグを!?」
「何だか眠くなってきたよ……」
「いや、寒いし体力奪われるのはわかるけど! そこまでのやつじゃないから!」
「なんかりょーちゃんの方がツッコミで温まってそうなんだけど!?」
「理不尽だ!? そっちがボケたのに!」
これが一人で帰っていたら、かなり長い道のりに感じたかもしれない。
でも、松永とよくわからない会話をしていたおかげか、家に着くまではそんなに長く感じなかった。
「ふー……なんとか辿り着いた」
「お疲れ、りょーちゃん」
「……なんで僕の家に上がってるんだ」
「だって、俺の家までまだちょっとあるんだよ!? 休憩させて!」
「りょうちゃんおかえりー あっ、まっちゃんも生きてたんだ」
「命からがらね。できれば温かい物を頂いてから本拠地に帰りたい」
「えー……あかりは今受験勉強中だからなぁ。部外者が家に来るのはなぁ」
「そこをなんとか! というか、久々に会ってこの仕打ち?」
「冗談だよ。あかりは自分の部屋で勉強するから、おこたで温まっていきな」
「明莉様~」
「意外と元気あるな……」
そうして、松永は僕の家で30分ほど休憩してから自宅へ向かって行った。
残念ながらその間も雪は弱くならなかったけど、この距離なら頑張れると言っていた。
完全に今日の天気を舐めていた僕と松永が悪いけど、雪の中で謎のテンションだった時は少し楽しかったので、結果的には雪も悪くないと思った……嘘。今日のはさすがに降り過ぎだ。
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