658 / 942
2年生3学期
1月21日(土)晴れ 明莉との日常その73
しおりを挟む
昨日から引き続き寒さが戻ってきた土曜日。
来週はいよいよ明莉の私立入試だ。
一応、本命はうちの高校だから保険で受けるようにはなっているけど、こちらも簡単な試験ではないので、油断してはいけない。
去年……じゃなくて、一昨年の自分を思い出してみると、結果がわかるまで全然安心できていなかった。
「ふぃー……ちょっと休憩~」
そんなわけで先日の共通テストに続いて、また僕は他人のテストで少し緊張していた。
しかも身内中の身内だからこの前以上の緊張が生じしていた。
「……どしたの良ちゃん。硬い表情して」
「いや、その……」
こういう時、安易に「勉強の調子はどう?」と聞くのは良くないことだ。
明莉は根っこが僕と同じだから、心配の言葉もプレッシャーになってしまう可能性がある。
だけど、清水先輩の件から考えると、身内に遠慮するくらいなら素直に応援した方がいい気もする。
「……ゆっくり休んで英気を養って」
「ゲームの宿屋みたいな台詞。もう良ちゃんは心配性なんだから。どうせ入試についてあんまり言わない方がいいとか思ってるんでしょ」
「ば、バレてたか……」
「まぁ、良ちゃんわかりやすいからね。ちなみに正解は……あんまり言わないで欲しい。なんかここに来てめっちゃ不安になってきた……」
明莉は珍しく暗い表情を見せる。
しまった。気を遣ってしまった時点で明莉に意識させることになるのか。
「だ、大丈夫だって。いつもの明莉を出せばそんなに難しいわけじゃないから」
「いつものあかりってなんだっけ……」
「そこまで自信なくなってるの!?」
「だ、だって、あかりは中学受験とかしていないから初めてのことだし、なんか来週は天気悪いからそもそも試験会場に行けるか危ういし、こんな時に限って試験の解答欄が一個ずつズレてたりしたら……」
「いや、うちから試験会場行けなかったらさすがに特別な措置を取られるし、試験の時間も普通にやってれば間違うことはないから」
「初めての受験についてのフォローがない」
「それは……僕もそうだったからやるしかない」
「良ちゃんがそうだったから……確かにあかりよりメンタル弱そうな良ちゃんが行けたなら大丈夫か」
「おいおい」
「でも、実施あかりのメンタルが豆腐なら、良ちゃんのメンタルはメレンゲだと思う」
「メレンゲって脆いというよりは柔らかいような……?」
「もう、とにかくあかりの方が強いの!」
急に会話の内容が小学生の強さ比べのようになってしまった。
でも、明莉は少しばかり元気を取り戻したようだ。
「……まぁ、話したおかげでちょっとは落ち着いたかも」
「それなら良かった。明莉なら本当に大丈夫だと思ってるから、本番までできる限りがんばって」
「りょーかい。あー、本番も良ちゃんが隣で常に励ましてくれたらいいんだけどなぁ」
「そりゃあ、許されるならやってあげたいけど」
「えっ。さすがに許される世界でも実際にやられたら恥ずかしんだけど」
「そっちが言ったのに!?」
最後はいつも通りのやり取りになってしまったけど、変に緊張し過ぎずいつも通りにしていた方がお互いにとっていいのだと思った。
来週はいよいよ明莉の私立入試だ。
一応、本命はうちの高校だから保険で受けるようにはなっているけど、こちらも簡単な試験ではないので、油断してはいけない。
去年……じゃなくて、一昨年の自分を思い出してみると、結果がわかるまで全然安心できていなかった。
「ふぃー……ちょっと休憩~」
そんなわけで先日の共通テストに続いて、また僕は他人のテストで少し緊張していた。
しかも身内中の身内だからこの前以上の緊張が生じしていた。
「……どしたの良ちゃん。硬い表情して」
「いや、その……」
こういう時、安易に「勉強の調子はどう?」と聞くのは良くないことだ。
明莉は根っこが僕と同じだから、心配の言葉もプレッシャーになってしまう可能性がある。
だけど、清水先輩の件から考えると、身内に遠慮するくらいなら素直に応援した方がいい気もする。
「……ゆっくり休んで英気を養って」
「ゲームの宿屋みたいな台詞。もう良ちゃんは心配性なんだから。どうせ入試についてあんまり言わない方がいいとか思ってるんでしょ」
「ば、バレてたか……」
「まぁ、良ちゃんわかりやすいからね。ちなみに正解は……あんまり言わないで欲しい。なんかここに来てめっちゃ不安になってきた……」
明莉は珍しく暗い表情を見せる。
しまった。気を遣ってしまった時点で明莉に意識させることになるのか。
「だ、大丈夫だって。いつもの明莉を出せばそんなに難しいわけじゃないから」
「いつものあかりってなんだっけ……」
「そこまで自信なくなってるの!?」
「だ、だって、あかりは中学受験とかしていないから初めてのことだし、なんか来週は天気悪いからそもそも試験会場に行けるか危ういし、こんな時に限って試験の解答欄が一個ずつズレてたりしたら……」
「いや、うちから試験会場行けなかったらさすがに特別な措置を取られるし、試験の時間も普通にやってれば間違うことはないから」
「初めての受験についてのフォローがない」
「それは……僕もそうだったからやるしかない」
「良ちゃんがそうだったから……確かにあかりよりメンタル弱そうな良ちゃんが行けたなら大丈夫か」
「おいおい」
「でも、実施あかりのメンタルが豆腐なら、良ちゃんのメンタルはメレンゲだと思う」
「メレンゲって脆いというよりは柔らかいような……?」
「もう、とにかくあかりの方が強いの!」
急に会話の内容が小学生の強さ比べのようになってしまった。
でも、明莉は少しばかり元気を取り戻したようだ。
「……まぁ、話したおかげでちょっとは落ち着いたかも」
「それなら良かった。明莉なら本当に大丈夫だと思ってるから、本番までできる限りがんばって」
「りょーかい。あー、本番も良ちゃんが隣で常に励ましてくれたらいいんだけどなぁ」
「そりゃあ、許されるならやってあげたいけど」
「えっ。さすがに許される世界でも実際にやられたら恥ずかしんだけど」
「そっちが言ったのに!?」
最後はいつも通りのやり取りになってしまったけど、変に緊張し過ぎずいつも通りにしていた方がお互いにとっていいのだと思った。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
2度めの野球人生は軟投派? ~男でも野球ができるって証明するよ~
まほろん
青春
県立高校入学後、地道に練習をして成長した神山伊織。
高校3年時には、最速154キロのストレートを武器に母校を甲子園ベスト4に導く。
ドラフト外れ1位でプロ野球の世界へ。
プロ生活2年目で初めて1軍のマウンドに立つ。
そこで強烈なピッチャーライナーを頭部に受けて倒れる。
目覚めた世界で初めてみたプロ野球選手は女性たちだった。
ジェンダーレス男子と不器用ちゃん
高井うしお
青春
エブリスタ光文社キャラクター文庫大賞 優秀作品
彼氏に振られたOLの真希が泥酔して目を覚ますと、そこに居たのはメイクもネイルも完璧なジェンダーレス男子かのん君。しかも、私の彼氏だって!?
変わってるけど自分を持ってる彼に真希は振り回されたり、励まされたり……。
そんなかのん君の影響で真希の世界は新しい発見で満ちていく。
「自分」ってなんだろう。そんな物語。
実力を隠し「例え長男でも無能に家は継がせん。他家に養子に出す」と親父殿に言われたところまでは計算通りだったが、まさかハーレム生活になるとは
竹井ゴールド
ライト文芸
日本国内トップ5に入る異能力者の名家、東条院。
その宗家本流の嫡子に生まれた東条院青夜は子供の頃に実母に「16歳までに東条院の家を出ないと命を落とす事になる」と予言され、無能を演じ続け、父親や後妻、異母弟や異母妹、親族や許嫁に馬鹿にされながらも、念願適って中学卒業の春休みに東条院家から田中家に養子に出された。
青夜は4月が誕生日なのでギリギリ16歳までに家を出た訳だが。
その後がよろしくない。
青夜を引き取った田中家の義父、一狼は53歳ながら若い妻を持ち、4人の娘の父親でもあったからだ。
妻、21歳、一狼の8人目の妻、愛。
長女、25歳、皇宮警察の異能力部隊所属、弥生。
次女、22歳、田中流空手道場の師範代、葉月。
三女、19歳、離婚したフランス系アメリカ人の3人目の妻が産んだハーフ、アンジェリカ。
四女、17歳、死別した4人目の妻が産んだ中国系ハーフ、シャンリー。
この5人とも青夜は家族となり、
・・・何これ? 少し想定外なんだけど。
【2023/3/23、24hポイント26万4600pt突破】
【2023/7/11、累計ポイント550万pt突破】
【2023/6/5、お気に入り数2130突破】
【アルファポリスのみの投稿です】
【第6回ライト文芸大賞、22万7046pt、2位】
【2023/6/30、メールが来て出版申請、8/1、慰めメール】
【未完】
女豹の恩讐『死闘!兄と妹。禁断のシュートマッチ』
コバひろ
大衆娯楽
前作 “雌蛇の罠『異性異種格闘技戦』男と女、宿命のシュートマッチ”
(全20話)の続編。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/329235482/129667563/episode/6150211
男子キックボクサーを倒したNOZOMIのその後は?
そんな女子格闘家NOZOMIに敗れ命まで落とした父の仇を討つべく、兄と娘の青春、家族愛。
格闘技を通して、ジェンダーフリー、ジェンダーレスとは?を描きたいと思います。
"わたし"が死んで、"私"が生まれた日。
青花美来
ライト文芸
目が覚めたら、病院のベッドの上だった。
大怪我を負っていた私は、その時全ての記憶を失っていた。
私はどうしてこんな怪我をしているのだろう。
私は一体、どんな人生を歩んできたのだろう。
忘れたままなんて、怖いから。
それがどんなに辛い記憶だったとしても、全てを思い出したい。
第5回ライト文芸大賞にて奨励賞を受賞しました。ありがとうございました。
カノジョのいる俺に小悪魔で金髪ギャルの後輩が迫ってくる
中山道れおん
青春
鎌ヶ谷右京(かまがや うきょう)は高校一年生のときに人生で初めてのカノジョができた。
恋人である市川栞梨(いちかわ しおり)と少しずつ関係を深めていき、幸せな日々を送る右京。
しかし高校二年生に進級すると、中学生のときの後輩である野田良子(のだ りょうこ)と再会したことがきっかけとなり、右京の幸せな日々は歪に形を変えていくのであった。
主人公もヒロインもそれぞれ一途な想いを持っている。
だけど、なぜか不純愛の世界へと導かれていく。
果たして、それぞれの一途な想いはどこへ向かっていくのか。
この物語は一途な想いを持つ者たちによる不純愛ラブコメである!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる