654 / 942
2年生3学期
1月17日(火)曇り時々晴れ 後輩との日常・姫宮青蘭の場合その13
しおりを挟む
部活動を行う火曜日。
今日は花園さんが文芸部に入ってから2回目の活動だ。
先日は座学に入るまで時間がかかってしまったので、今回が通常通りの流れになる。
ただ、1年生の方は歓迎していても、花園さんの方はまだとこか遠慮がちで、路ちゃんと話すのが精一杯のようだった。
まぁ、まだ2回目なので慌てる時間ではない。
「副部長。花園先輩について少し言いたいことがあります」
しかし、姫宮さんの方から予想外の反応が返ってくる。
「ど、どうしたの?」
「花園先輩は」
「う、うん」
「私とキャラが被っている気がします」
「……は?」
いや、本当に予想外だった。冗談で言っている感じではないから尚更に。
「いったい何がどうしてそう思ったの……?」
「全体的な雰囲気が似ていると思ったからです。副部長ならわかると思いますが」
そう言われてみると……僕に対する言動がどこか似ているような気もする。
多少からかい気味で、どこか乱雑な感じが……自分で言ってて少し悲しい。
「でも、キャラが被っていると何か悪いことあるの?」
「部活における存在感を奪われてしまうかもしれません。私は文芸部の懐刀なので」
「初耳なんだけど!? いや、もしかして1年生の間ではそういう二つ名的な呼び方をしている……?」
「いいえ。私が自称してるだけです」
「えぇ……」
年明けで久しぶりに浴びる姫宮さんはなかなかに手ごわい。
しかし、理由はともあれ姫宮さんが危機感を覚えているのは確かなようだ。
ここは何とか説得して花園さんと仲良くして貰うきっかけを作らなければ。
「で、でも、似た雰囲気を感じるなら話が合ったりするんじゃないかな。いい意味で花園さんは個性的な人だから、話すと楽しいと思うよ?」
「もう一押し欲しいですね」
「えっ? えっと……聞いたかもしれないけど、実家が和菓子屋で時々手伝ってて……」
「そういうのではなくもっと副部長の視点の評価を」
「ぼ、僕の? うーん……わりと冗談を言いがちで、結構ツッコミが鋭くて……」
「なるほど。理解しました」
姫宮さんはそう宣言すると、そのまま花園さんの方へ行き、何かを話し始める。
数分後、姫宮さんは花園さんを引き連れて戻って来た。
「リョウスケ……あなたは華凛のことを冗談ばかり言う個性が尖った人間だと思っていたのですか」
「ええっ!? なんか情報が混ざってるんだけど!?」
「伝言失敗」
「いや、絶対わざとでしょ!?」
「……ひ、姫宮さん、でしたか」
「はい。青蘭・姫宮です」
「あなたは……リョウスケの扱い方をわかってるみたいですね」
「どこが!?」
「副部長は踏めば踏むほどいい出汁が出ます」
「ふふっ。いい表現です」
僕のツッコミは完全にスルーされ、花園さんと姫宮さんには奇妙な友情が芽生えていた。
そのおかげで2人はその後も少し話していたのは良かったけど……厄介な敵同士がタッグを組んでしまったような、そんな気持ちになった。
今日は花園さんが文芸部に入ってから2回目の活動だ。
先日は座学に入るまで時間がかかってしまったので、今回が通常通りの流れになる。
ただ、1年生の方は歓迎していても、花園さんの方はまだとこか遠慮がちで、路ちゃんと話すのが精一杯のようだった。
まぁ、まだ2回目なので慌てる時間ではない。
「副部長。花園先輩について少し言いたいことがあります」
しかし、姫宮さんの方から予想外の反応が返ってくる。
「ど、どうしたの?」
「花園先輩は」
「う、うん」
「私とキャラが被っている気がします」
「……は?」
いや、本当に予想外だった。冗談で言っている感じではないから尚更に。
「いったい何がどうしてそう思ったの……?」
「全体的な雰囲気が似ていると思ったからです。副部長ならわかると思いますが」
そう言われてみると……僕に対する言動がどこか似ているような気もする。
多少からかい気味で、どこか乱雑な感じが……自分で言ってて少し悲しい。
「でも、キャラが被っていると何か悪いことあるの?」
「部活における存在感を奪われてしまうかもしれません。私は文芸部の懐刀なので」
「初耳なんだけど!? いや、もしかして1年生の間ではそういう二つ名的な呼び方をしている……?」
「いいえ。私が自称してるだけです」
「えぇ……」
年明けで久しぶりに浴びる姫宮さんはなかなかに手ごわい。
しかし、理由はともあれ姫宮さんが危機感を覚えているのは確かなようだ。
ここは何とか説得して花園さんと仲良くして貰うきっかけを作らなければ。
「で、でも、似た雰囲気を感じるなら話が合ったりするんじゃないかな。いい意味で花園さんは個性的な人だから、話すと楽しいと思うよ?」
「もう一押し欲しいですね」
「えっ? えっと……聞いたかもしれないけど、実家が和菓子屋で時々手伝ってて……」
「そういうのではなくもっと副部長の視点の評価を」
「ぼ、僕の? うーん……わりと冗談を言いがちで、結構ツッコミが鋭くて……」
「なるほど。理解しました」
姫宮さんはそう宣言すると、そのまま花園さんの方へ行き、何かを話し始める。
数分後、姫宮さんは花園さんを引き連れて戻って来た。
「リョウスケ……あなたは華凛のことを冗談ばかり言う個性が尖った人間だと思っていたのですか」
「ええっ!? なんか情報が混ざってるんだけど!?」
「伝言失敗」
「いや、絶対わざとでしょ!?」
「……ひ、姫宮さん、でしたか」
「はい。青蘭・姫宮です」
「あなたは……リョウスケの扱い方をわかってるみたいですね」
「どこが!?」
「副部長は踏めば踏むほどいい出汁が出ます」
「ふふっ。いい表現です」
僕のツッコミは完全にスルーされ、花園さんと姫宮さんには奇妙な友情が芽生えていた。
そのおかげで2人はその後も少し話していたのは良かったけど……厄介な敵同士がタッグを組んでしまったような、そんな気持ちになった。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
令嬢の名門女学校で、パンツを初めて履くことになりました
フルーツパフェ
大衆娯楽
とある事件を受けて、財閥のご令嬢が数多く通う女学校で校則が改訂された。
曰く、全校生徒はパンツを履くこと。
生徒の安全を確保するための善意で制定されたこの校則だが、学校側の意図に反して事態は思わぬ方向に?
史実上の事件を元に描かれた近代歴史小説。
幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。
スタジオ.T
青春
幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。
そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。
ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる