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2年生3学期
1月12日(木)晴れ時々曇り 花園華凛の前進
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お昼頃は春に近い温かさだったらしい木曜日。
けれども、朝晩が寒いのでそちらの方の印象が残っている。
そして、今日のお昼にはもう一つ印象的なことがあった。
「良助くん、食べ終わったらちょっとわたしの席に来てくれる?」
大倉くんと昼食を取っていた僕に、路ちゃんはそう言ってくる。
僕がそれに頷くと、大倉くんはすぐに弄るような目線を向けてくるけど、何の用事がさっぱりわからなかった僕は少し身構えていた。
5分後に路ちゃんの席へ到着すると、昼食を取り終えたであろう花園さんもまだ残っていた。
「リョウスケ。今日は華凛のために時間を取ってくれてありがとうございます」
「どういたしまし……花園さんのため?」
「ご、ごめん、かりんちゃん。まだ何も話してないから」
「いえ。そうだと思ってわざと言いました」
困惑する僕の顔を見て花園さんはいたずらっぽく笑う。
「いったいどういうこと……?」
「華凛からのご報告、といったところです」
「ま、まさか!?」
「はい。明日から文芸部に入部させて頂きます」
「あっ、そっちか……」
「何を勘違いしているのですか。まったく2人揃って」
何故か巻き込まれる路ちゃんだけど、恐らく同じ冗談で同じようなリアクションを返してしまったのだろう。
去年の段階で言われていたけど、すっかり頭から抜けていた。
「そもそも2人が……という話をするとせっかくの空気を壊してしまうので言うのはやめておきます」
「半分くらい言っているけど……まぁ、僕が悪いのはわかってるよ」
「そ、そんなことないよ? わたしもグズグズしてたから……」
「真に受けられても困るのですが……いえ。正直に言います。華凛も入部する勇気が出なかったのは確かです。やはり……出来上がった仲に入るのは難しいですから」
「花園さん……」
「それでも高校生活で部活をできるのはこの時期しかないわけで……2人がいるなら大丈夫だろうと思いました」
「うん。困ったことがあったら全力で助けるから」
「ありがとう、ミチちゃん」
「僕も協力するよ。うちはみんな優しいからすぐに馴染めると思う」
僕の言葉に花園さんは安心したように頷く。
自分がその立場になると考えたら、緊張や不安でいっぱいになっていたと思う。
部活にいる側はいつ入部してくれても大歓迎だけど、このタイミングで入部する方は色々と考えてしまうものだ。
「それでは明日の初期印象を良くするために、まずはリョウスケに悪役を演じて貰って……」
「悪役って何!?」
「冗談です。いざとなったミチちゃんとリョウスケに部長副部長の権力を行使して貰います」
「わ、わたし達にそんな権力はないのだけど……」
「これも冗談です……2人とも冬の間に華凛の冗談を忘れてしまったのですか……?」
忘れるも何も僕に関してはいつも振り回されていたのであまり変わっていないと思う。
それはそれとして、花園さんがやりたいことがようやくできたのは、喜ばしいことだ。
時間は限られてしまうけど、普段の活動や文化祭に向けての創作を楽しんで貰おう。
そのためには……明日は冗談を封じて挑んで欲しいところだけど。
けれども、朝晩が寒いのでそちらの方の印象が残っている。
そして、今日のお昼にはもう一つ印象的なことがあった。
「良助くん、食べ終わったらちょっとわたしの席に来てくれる?」
大倉くんと昼食を取っていた僕に、路ちゃんはそう言ってくる。
僕がそれに頷くと、大倉くんはすぐに弄るような目線を向けてくるけど、何の用事がさっぱりわからなかった僕は少し身構えていた。
5分後に路ちゃんの席へ到着すると、昼食を取り終えたであろう花園さんもまだ残っていた。
「リョウスケ。今日は華凛のために時間を取ってくれてありがとうございます」
「どういたしまし……花園さんのため?」
「ご、ごめん、かりんちゃん。まだ何も話してないから」
「いえ。そうだと思ってわざと言いました」
困惑する僕の顔を見て花園さんはいたずらっぽく笑う。
「いったいどういうこと……?」
「華凛からのご報告、といったところです」
「ま、まさか!?」
「はい。明日から文芸部に入部させて頂きます」
「あっ、そっちか……」
「何を勘違いしているのですか。まったく2人揃って」
何故か巻き込まれる路ちゃんだけど、恐らく同じ冗談で同じようなリアクションを返してしまったのだろう。
去年の段階で言われていたけど、すっかり頭から抜けていた。
「そもそも2人が……という話をするとせっかくの空気を壊してしまうので言うのはやめておきます」
「半分くらい言っているけど……まぁ、僕が悪いのはわかってるよ」
「そ、そんなことないよ? わたしもグズグズしてたから……」
「真に受けられても困るのですが……いえ。正直に言います。華凛も入部する勇気が出なかったのは確かです。やはり……出来上がった仲に入るのは難しいですから」
「花園さん……」
「それでも高校生活で部活をできるのはこの時期しかないわけで……2人がいるなら大丈夫だろうと思いました」
「うん。困ったことがあったら全力で助けるから」
「ありがとう、ミチちゃん」
「僕も協力するよ。うちはみんな優しいからすぐに馴染めると思う」
僕の言葉に花園さんは安心したように頷く。
自分がその立場になると考えたら、緊張や不安でいっぱいになっていたと思う。
部活にいる側はいつ入部してくれても大歓迎だけど、このタイミングで入部する方は色々と考えてしまうものだ。
「それでは明日の初期印象を良くするために、まずはリョウスケに悪役を演じて貰って……」
「悪役って何!?」
「冗談です。いざとなったミチちゃんとリョウスケに部長副部長の権力を行使して貰います」
「わ、わたし達にそんな権力はないのだけど……」
「これも冗談です……2人とも冬の間に華凛の冗談を忘れてしまったのですか……?」
忘れるも何も僕に関してはいつも振り回されていたのであまり変わっていないと思う。
それはそれとして、花園さんがやりたいことがようやくできたのは、喜ばしいことだ。
時間は限られてしまうけど、普段の活動や文化祭に向けての創作を楽しんで貰おう。
そのためには……明日は冗談を封じて挑んで欲しいところだけど。
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