上 下
641 / 942
2年生冬休み

1月4日(水)晴れ 友人との冬休み

しおりを挟む
 冬休み12日目。
 社会人の方々は仕事初めの人もいる日であり、テレビ番組も朝の編成は通常通りに戻っていた。

 そんな中、僕を含めたいつもの3人は松永に呼び出されて集まることになる。
 集合場所はいつもならカラオケになるけど、松永はファミレスを指定してきた。

「……今日、皆さんに集まって貰ったのは他でもない」

「新年の挨拶か?」

「そうそう、あけおめことよろー……って、違う! 会って言うのも大事だけど、1日に済ませたでしょうが!」

「だったら、なぜわざわざファミレスなんだ。男子会でも開きたかったのか」

 いつもと違う感じだったせいか、本田くんは松永に色々言っている。
 でも、僕はこの会が何のために開かれたかわかっていた。

「ある意味そうかもしれない。りょうちゃん、1日に会った件だけど、茉奈ちゃんから話を聞かせて貰ったよ。だけど、りょうちゃんの口からも改めて聞かせて貰おうか」

「お、おう……えっと、この度僕は岸本路子さんとお付き合いすることになりました。同じ部活動で、今は同じクラスです」

「りょーちゃん、おめでとう! でも、なんでもっと早く言ってくれなかったんだよぉ! ……あれ?」

 松永のテンションは最高潮になったけど、それに対して本田くんと大倉くんは冷静だった。

「おお、それは良かった。新年からめでたい話が聞けたな」

「ありがとう、本田くん。色々助言してくれたのが助かったよ」

「えっ!? ポンちゃん助言とかしてたの!? 聞いてないんですけど!?」

「言ってないからな」

「じゃ、じゃあ、クラさんは……」

「ぼ、ボクはアドバイスできることはなかったけど……告白が成功したのは当日に聞いたよ」

「なんで!? 俺だけハブられてるじゃん! どういうことなんだ、りょーちゃん!?」

「いや、それで言ったら松永だって伊月さんと付き合い始めたって報告するの遅かったじゃないか」

「うちはうち、よそはよそだから」

「理由になってない。なんかごめんね、2人とも。わざわざこんなことで呼び出して」

 僕が松永の代わりにそう言うと、本田くんと大倉くんはにこやかに笑い返す。
 しかし、松永の熱はまだ収まっていなかった。

「こんなことじゃないわ! あのりょーちゃんが彼女を作ったというのに、2人ともリアクション薄すぎるぞ」

「どのりょーちゃんだよ。ともかく松永の本題は済んだなら、別のところへ遊びに……」

「いーや、まだ終わってないね。茉奈ちゃんもざっくりした情報しか教えてくれなかったし、根掘り葉掘り聞かせて貰う」

「そう言われてもまだ話せるようなネタはないよ。まぁ、一つあるとすれば……誰かさんが路ちゃんを遠回しに後押ししてたって聞いたことくらいか」

 僕がわざとらしくそう言うと、松永は急に目線を逸らした。

「な、なんのことかな?」

「なんで隠すんだよ。さっきから全然知らなかった風に驚かれるから、僕はちょっと困惑してるぞ」

「べ、別に俺と岸本ちゃんの会話の中では産賀良助という特定個人を指すような会話はしてないから……」

「まぁ、そういうことにしておくか。とりあえず祝ってくれてありがとう、松永」

「……どういたしまして」

 僕の素直にお礼を言うと、松永は少し照れているように見えた。
 なんだかんだ言いながらも僕を心配してくれていたのはわかっているので、報告する場を作ってくれたのは感謝しておこう。

「じゃあ、メインディッシュは終わったから……次はポンちゃんの近況でも聞いとく?」

「なんかついでのように言われている気がするが……」

「全然そんなことない。ポンちゃんもさぞ楽しい冬を……あっ」

 松永が急停止したのは……大倉くんから発せられる謎の気を感じ取ったからだった。

「……い、いいよね。みんなはリア充になっちゃってさ……フフフ。たくさん楽しい話聞かされるんだろうなぁ……」

「ち、違うよ、クラさん! 別にそういうつもりじゃなくて、本題はりょうちゃんを祝うことだから……ね、りょーちゃん」

「あ、ああ。もちろん」

「……産賀くんも最近は通話してくれないし……通話しても無意識に惚気っぽい話題古しさ……でも、爆発しろって言える権利があるのはボクだけなんだ……」

「ご、ごめん! 本当に無意識だから知らなかった!」

「とりあえず次の場所を探そう。なるべく……倉さんが癒される場所へ」

 その後は久しぶりに4人でゲーセンへ行き、大倉くんの無双っぷりを見ながら過ごした。
 まさか僕も大倉くんを苦しめているとは知らなかったので、松永の招集を本当に感謝しなければならない。
 次に集まる時は恋愛の話は抜きにして、純粋に男子だけの馬鹿をやりたいと思った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

あの日の桜‐君との六年の恋‐

鳴宮直人
青春
君は今幸せですか。 君の手を離してから何年たったのだろうか。 笑顔を思い浮かべるほど山桜が脳をよぎる。 16年前の僕にとって、掛け替えのない出会いだった。そんな出会いが変わっていくとは知らずに、、、、、 主人公·田辺佑丞は登校中に 学校の前の染井吉野と山桜の木を見上げる可憐な少女、川城結香と出会う。 桜を儚げに見つめている結香を、可憐で優姿な所に一目惚れをしてしまうのだ。 佑丞の一目惚れはどうなっていくのだろうか

【完結】捨ててください

仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
ずっと貴方の側にいた。 でも、あの人と再会してから貴方は私ではなく、あの人を見つめるようになった。 分かっている。 貴方は私の事を愛していない。 私は貴方の側にいるだけで良かったのに。 貴方が、あの人の側へ行きたいと悩んでいる事が私に伝わってくる。 もういいの。 ありがとう貴方。 もう私の事は、、、 捨ててください。 続編投稿しました。 初回完結6月25日 第2回目完結7月18日

feel

永和
青春
田舎町の地元の高校に通う女子高生の林渚。彼女は、ある劇団の劇団員だ。高校とバイトと劇団。友達や家族。彼女と彼女の周りの人達が繰り広げる熱くて何よりも青春な物語。渚が感じる喜び・悲しみ・悔しさ・ドキドキその全てを一緒に感じて下さい! ※この物語は、割とセリフと状況描写が多いです。私自身ドラマ化希望です(笑)1つのドラマを観ているような気分でお楽しみ下さい。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

静かに過ごしたい冬馬君が学園のマドンナに好かれてしまった件について

おとら@ 書籍発売中
青春
この物語は、とある理由から目立ちたくないぼっちの少年の成長物語である そんなある日、少年は不良に絡まれている女子を助けてしまったが……。 なんと、彼女は学園のマドンナだった……! こうして平穏に過ごしたい少年の生活は一変することになる。 彼女を避けていたが、度々遭遇してしまう。 そんな中、少年は次第に彼女に惹かれていく……。 そして助けられた少女もまた……。 二人の青春、そして成長物語をご覧ください。 ※中盤から甘々にご注意を。 ※性描写ありは保険です。 他サイトにも掲載しております。

部内恋愛はご法度です!

七瀬蓮
青春
演劇部のアイドルと言われていて、人気がある倉橋護と倉橋に近づきたいという邪な気持ちで入部しようと試みる九条みつきの物語です。

麗しのマリリン

松浦どれみ
青春
〜ニックネームしか知らない私たちの、青春のすべて〜 少女漫画を覗き見るような世界観。 2023.08 他作品やコンテストの兼ね合いでお休み中です。 連載再開まで今しばらくお待ちくださいませ。 【あらすじ】 私立清流館学園は学校生活をニックネームで過ごす少し変わったルールがある。 清流館高校1年2組では入学後の自己紹介が始まったところだった。 主人公のマリ、新堂を中心にクラスメイトたちの人間関係が動き出す1年間のお話。 片恋も、友情も、部活も、トラウマも、コンプレックスも、ぜんぶぜんぶ青春だ。 主要メンバー全員恋愛中! 甘くて酸っぱくてじれったい、そんな学園青春ストーリーです。 感想やお気に入り登録してくれると感激です! よろしくお願いします!

処理中です...