上 下
631 / 942
2年生冬休み

12月25日(日)晴れ イブの後日

しおりを挟む
 冬休み2日目かつクリスマス。
 昨日は帰った後もクリスマスらしい晩ご飯を食べたり、大倉くんへの報告会があったりと盛りだくさんだったけど、今日は大人しく自宅にいた。
 一方の明莉は今日も桜庭くんと出かけるようで……受験生なのにそれでいいのかと少し思ってしまう。
 ただ、カップル的にはクリスマス本番も出かけるのが正解なのだろうか。
 昨日はそんな相談どころか、次に会う約束すらもしていない。
 文芸部の忘年会で会えるから問題はないように思うけど、その辺りはまだまだ不慣れだった。

 そんなわけで今日の僕は勉強や読書で贅沢に休みの時間を使おうと思っていたんだけど……

「良助、良助」

 自分の部屋から出たタイミングで母さんから声をかけられる。
 昨日、付き合い始めた件について、晩ご飯前に両親へ話していた。
明莉には半分くらい話していたし、大倉くんに報告するのに両親へ報告しないのはどうかと思ったからだ。
その報告は予想以上に両親を驚かせたようで、特に母さんはめちゃめちゃ食い付いてきた。
それを見た僕は途端に恥ずかしさが増してきて、詳しい話はしないまま翌日を迎えていたのだ。

だけど、そのせいで母さんはより気になってしまったらしい。

「1年生の時の集合写真持ってきたんだけど、この中に彼女さんはいるの?」

 そう言いながら楽しそうに写真を見せてくる。

「いや、1年生の時は同じクラスじゃないから……」

「ということは、今は同じクラスなの? 名簿とか貰ってたかしら……」

「ど、どうだったかな」

「……というか、普通に誰か教えて欲しいんだけどなぁ。写真も撮ってないって言うし」

 写真を撮っていないのは本当のことだけど、今のテンションの母さんに教えるのは何だか気が引けた。
 僕は目に見えて反抗期もなかったようで、僕自身も母さんに対してマイナスな感情を抱いたことはあまりない。
 でも、この時ばかりは少し……鬱陶しいと思ってしまった。
 いや、僕が付き合い始めた事実を咀嚼し切れないうちに話してしまったのが悪いのだけど。

「名前言ってもわからないと思う。母さんは会ったことないし」

「わからなくても教えて欲しいの。だって、今後は家に来るかもしれないんだし」

「うっ、まぁ……そうか」

 僕の中ではそこまで考えられていなかった。
 それどころか告白というイベントを消化したと思って、僕の意識は読者や進路を考える方に向いている。
 付き合うところがゴールじゃないというのに……なかなか難しいものだ。

「……岸本路子さんだよ」

「あっ、どこかで聞いたことあるような……部活の先輩?」

「ううん。同級生」

「ああ! 2年生2人だけっていう……ええっ!? その2人で付き合い始めちゃったの!?」

「う、うん」

「そうなのねぇ……良助。家に呼ぶ時は事前に言っておいてね。色々準備しなきゃいけないから」

「えっ? 桜庭くんが来る時も色々準備してたの……?」

「それはもちろん。明莉は母さんに話してくれるほうだからわかるけど、良助には言っておかないとね」

「あ、ありがとう……」

「さて。まだ色々聞きたいけど……じっくり聞く方が楽しみが残るし、今日はこれくらいにしときましょう」

 勝手に楽しまれるのは困ってしまうけど、母さんが珍しいテンションになるくらいには喜んでくれているのはよくわかった。
 それにしても……母さんも恋愛話が絡むとこうなるとは。
 明莉はその部分をしっかり受け継いでいる。
 ちなみに父さんは驚いてはいたけど、必要以上に聞いてはこなかったので、この点は僕と父さん……というよりは男性陣だからなのかもしれない。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

同僚くすぐりマッサージ

セナ
大衆娯楽
これは自分の実体験です

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

庭木を切った隣人が刑事訴訟を恐れて小学生の娘を謝罪に来させたアホな実話

フルーツパフェ
大衆娯楽
祝!! 慰謝料30万円獲得記念の知人の体験談! 隣人宅の植木を許可なく切ることは紛れもない犯罪です。 30万円以下の罰金・過料、もしくは3年以下の懲役に処される可能性があります。 そうとは知らずに短気を起こして家の庭木を切った隣人(40代職業不詳・男)。 刑事訴訟になることを恐れた彼が取った行動は、まだ小学生の娘達を謝りに行かせることだった!? 子供ならば許してくれるとでも思ったのか。 「ごめんなさい、お尻ぺんぺんで許してくれますか?」 大人達の事情も知らず、健気に罪滅ぼしをしようとする少女を、あなたは許せるだろうか。 余りに情けない親子の末路を描く実話。 ※一部、演出を含んでいます。

通り道のお仕置き

おしり丸
青春
お尻真っ赤

お嬢様、お仕置の時間です。

moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。 両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。 私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。 私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。 両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。 新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。 私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。 海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。 しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。 海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。 しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。

勝負に勝ったので委員長におっぱいを見せてもらった

矢木羽研
青春
優等生の委員長と「勝ったほうが言うことを聞く」という賭けをしたので、「おっぱい見せて」と頼んでみたら……青春寸止めストーリー。

処理中です...