上 下
629 / 942
2年生2学期

12月23日(金)雪 大倉伴憲との日常その27

しおりを挟む
 二学期終業式の金曜日。
 目が覚めると少し雪が積もっていて、今年は雪がしっかり振る冬だとわかった。
 昨日、清水先輩と会ったせいか、受験時期の雪の積もり方を心配してしまうけど、そういえば清水先輩本人は雪でテンションが上がるタイプだったことを思い出す。
 一方の僕は、この程度の雪なら送って貰う必要もないと謎の意地から自転車を押しながら登校したけど……ちょっと後悔した。
 雪が降るということは、それだけ寒いということなのに。

 そんな僕の馬鹿な失敗はともかく、結構寒い体育館での終業式も無事に終了する。
 その後、教室で雪による事故や病気に気を付けていう先生の言葉を聞くと、クラス名とは暫しの別れを惜しむ言葉をかけ合う。

「産賀くん、今度の通話だけど……」

 その中で僕と大倉くんは相変わらず次のゲームしながらの通話について話し合っていた。
 もちろん、お互いに勉強や他にやるべきことはあるけど、夜の時間帯はこれまでと変わらずやっていくつもりだ。
 特に年末年始にかけてはゲーム内も何かと忙しい。

「そういえば今日から協力戦も始まるから、何なら今日の夜から……」

「お、大倉くん。ちょっと」

「えっ?」

 僕は大倉くんの言葉を一旦止めて、近づくように手招きする。
 そして、こっそりと話し出した。

「実は……明日は午前中から予定があって。今日はなるべく早めに寝たいと思ってる」

「そ、そうなんだ……なんで小声で?」

「その用事なんだけど……まぁ、その……女子と出かける予定なんだ」

「へー……ええっ!?」

「こ、声抑えて……」

「ご、ごめん……」

 大倉くんはすぐにボリュームを抑えてくれたけど、周りには全く聞こえていないようだった。
 まぁ、みんなそれぞれに話すことがあるから、僕の気にし過ぎである。

「これはまだ松永や本田くんにも言ってないけど……大倉くんには伝えておこうと思う」

「じ、自慢……?」

「違う違う。どちらかというと……今度の通話でテンションが低かったら察して欲しい……」

「な、なぜ失敗する前提……だ、大丈夫だよ。産賀くんなら」

「いや、全然大丈夫じゃないんだ。なんかもう……前日になってよくわかんなくなってきてる。明日も雪の中で色んな意味で滑りまくりそうで……」

「う、産賀くん? その……ボクからアドバイスできることは何もないんだけど、いつも通りの産賀くんなら、きっと変なことにはならないと思う。だから……普通に応援するよ」

「お、大倉くん……!」

 自分から話しておいて何だけど、大倉くんがここまで優しい言葉をかけてくれるとは思わなかった。
 いや、正直なところ、自慢だと弄られてもいいから、誰かに話しておきたかったのだ。
 きっと松永や本田くんに言うと、余計な知恵を仕込まれて僕らしさが失われそうだったから。

「そ、それはそれとして……明日はゆうべはお楽しみでしたまで行くって……」

「ち、違うよ! まだその段階でもないから!」

「めっちゃ声出てる……」

「ご、ごめん。夕飯は自宅で食べる予定だから」

「だったら、その後でも協力戦はできるか……ついでに結果も聞けるし」

「マジで言ってる……?」

「だ、だって、普通に気になるし」

「わ、わかった……それこそ元気があったらになるけど」

 こうして、大倉くんともイブの予定を立てたけれど……果たして明日の僕にそんな寄油はあるんだろうか。
 明日から冬休み……いい始まりになると願って寝よう。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

陰キャの陰キャによる陽に限りなく近い陰キャのための救済措置〜俺の3年間が青くなってしまった件〜

136君
青春
俺に青春など必要ない。 新高校1年生の俺、由良久志はたまたま隣の席になった有田さんと、なんだかんだで同居することに!? 絶対に他には言えない俺の秘密を知ってしまった彼女は、勿論秘密にすることはなく… 本当の思いは自分の奥底に隠して繰り広げる青春ラブコメ! なろう、カクヨムでも連載中! カクヨム→https://kakuyomu.jp/works/16817330647702492601 なろう→https://ncode.syosetu.com/novelview/infotop/ncode/n5319hy/

終わりに見えた白い明日

kio
青春
寿命の終わりで自動的に人が「灰」と化す世界。 「名無しの権兵衛」を自称する少年は、不良たちに囲まれていた一人の少女と出会う。 ──これは、終末に抗い続ける者たちの物語。 やがて辿り着くのは、希望の未来。 【1】この小説は、2007年に正式公開した同名フリーノベルゲームを加筆修正したものです(内容に変更はありません)。 【2】本作は、徐々に明らかになっていく物語や、伏線回収を好む方にお勧めです。 【3】『ReIce -second-』にて加筆修正前のノベルゲーム版(WINDOWS機対応)を公開しています(作品紹介ページにて登場人物の立ち絵等も載せています)。 ※小説家になろう様でも掲載しています。

サ帝

紅夜蒼星
青春
20××年、日本は100度前後のサウナの熱に包まれた! 数年前からサウナが人体に与える影響が取りだたされてはいた。しかし一過的なブームに過ぎないと、単なるオヤジの趣味だと馬鹿にする勢力も多かった。 だがサウナブームは世を席巻した。 一億の人口のうちサウナに入ったことのない人は存在せず、その遍く全ての人間が、サウナによって進化を遂げた「超人類」となった。   その中で生まれた新たなスポーツが、GTS(Golden Time Sports)。またの名を“輝ける刻の対抗戦”。 サウナ、水風呂、ととのい椅子に座るまでの一連のサウナルーティン。その時間を設定時間に近づけるという、狂っているとしか言いようがないスポーツ。 そんなGTSで、「福良大海」は中学時代に全国制覇を成し遂げた。 しかしとある理由から彼はサウナ室を去り、表舞台から姿を消した。 高校生となった彼は、いきつけのサウナで謎の美少女に声を掛けられる。 「あんた、サウナの帝王になりなさい」 「今ととのってるから後にしてくれる?」 それは、サウナストーンに水をかけられたように、彼の心を再び燃え上がらせる出会いだった。 これはサウナーの、サウナーによる、サウナーのための、サウナ青春ノベル。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

少女が過去を取り戻すまで

tiroro
青春
小学生になり、何気ない日常を過ごしていた少女。 玲美はある日、運命に導かれるように、神社で一人佇む寂しげな少女・恵利佳と偶然出会った。 初めて会ったはずの恵利佳に、玲美は強く惹かれる不思議な感覚に襲われる。 恵利佳を取り巻くいじめ、孤独、悲惨な過去、そして未来に迫る悲劇を打ち破るため、玲美は何度も挫折しかけながら仲間達と共に立ち向かう。 『生まれ変わったら、また君と友達になりたい』 玲美が知らずに追い求めていた前世の想いは、やがて、二人の運命を大きく変えていく──── ※この小説は、なろうで完結済みの小説のリメイクです ※リメイクに伴って追加した話がいくつかあります  内容を一部変更しています ※物語に登場する学校名、周辺の地域名、店舗名、人名はフィクションです ※一部、事実を基にしたフィクションが入っています ※タグは、完結までの間に話数に応じて一部増えます ※イラストは「画像生成AI」を使っています

片思いに未練があるのは、私だけになりそうです

珠宮さくら
青春
髙村心陽は、双子の片割れである姉の心音より、先に初恋をした。 その相手は、幼なじみの男の子で、姉の初恋の相手は彼のお兄さんだった。 姉の初恋は、姉自身が見事なまでにぶち壊したが、その初恋の相手の人生までも狂わせるとは思いもしなかった。 そんな心陽の初恋も、片思いが続くことになるのだが……。

下弦に冴える月

和之
青春
恋に友情は何処まで寛容なのか・・・。

冤罪をかけられ、彼女まで寝取られた俺。潔白が証明され、皆は後悔しても戻れない事を知ったらしい

一本橋
恋愛
痴漢という犯罪者のレッテルを張られた鈴木正俊は、周りの信用を失った。 しかし、その実態は私人逮捕による冤罪だった。 家族をはじめ、友人やクラスメイトまでもが見限り、ひとり孤独へとなってしまう。 そんな正俊を慰めようと現れた彼女だったが、そこへ私人逮捕の首謀者である“山本”の姿が。 そこで、唯一の頼みだった彼女にさえも裏切られていたことを知ることになる。 ……絶望し、身を投げようとする正俊だったが、そこに学校一の美少女と呼ばれている幼馴染みが現れて──

処理中です...