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2年生2学期
12月14日(水)曇り時々雨 重森美里の介入その5
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期末テスト3日目の水曜日。
天気予報で雪混じりの雨と予報されていた通り、風に舞う雨は薄っすらと白かった。
その中も学校と塾の2回も自転車で走ってきたから、今日は一段と寒く感じる。
「おお、凍えているね、産賀っち」
そんな僕が塾に入ると、重森さんがまた違う呼び方で呼んでくる。
でも、今まで比べるとニックネームの範疇なので、それほどおかしい感じはしない。
「でも、そんな風に呼ばれたことないな……」
「私も他の人をなんとかっちって呼んだことはないなぁ」
「重森さんはどんなニックネームで呼ばれるの?」
僕は純粋な興味で聞き返すけど、重森さんは急に驚いた表情になる。
「ど、どうしたの?」
「いや、産賀く……産賀っちが積極的に話しかけてくると思わなかったから」
「今、くん付けで呼ぼうとしてた!」
「いやぁ、てっきり岸本さん以外の女子とは話せないタイプかと思ってたよ。あっ、それだと1年の時に亜里沙や瑞姫と話せてないか」
勝手に納得されてしまったけど、その2人に関しては話かけてくれる方だったので、本来の僕だと話せないタイプかもしれない。
「良助くん、重森さん、お疲れ様」
そうしていると、路ちゃんも塾に入って来て、会話に混ざってくる。
「何の話で盛り上がっていたの?」
「私がどんなニックネームで呼ばれてるか。岸本さんも予想してみて」
いつの間にか予想することになっていたが、流れを知らない路ちゃんは真剣に考え始める。
重森美里なら……もりみさとかになるんだろうか。
僕も予想してみるけど、路ちゃんの口から出たのは意外な回答だった。
「……しげさん……とか?」
「……産賀っち、これはボケだと思う?」
「いや……普通に答えてると思う」
「ご、ごめんなさい。他人にニックネームを付けたことがほとんど……いえ、全くないから……」
「そうなの? まぁ、ニックネームって気付いたら勝手に決められてるとかあるよね。産賀っちの予想は?」
「もりみさとか」
「おー 小学校の時には呼んでた子いたから正解。実際はみさみさが多いかな。まぁ、一番呼ばれるのはシンプル下の名前呼びなんだけど」
「そうなんだ」
「じゃあ、次は岸本さんのニックネームを予想してみよう……みーたんとか?」
「え、えっと……」
ぐいぐい来る重森さんに路ちゃんは完全に困っていた。
それは恐らく……ニックネームで呼ばれた経験も少ないからだ。
僕が知る限りだと、大山さんのミチ呼びがそれらしい気もするけど、それを今言うべきかは……
「わ、わたし……ニックネームで呼ばれたことがあんまりなくて。だから、重森さんがそう呼んでくれるなら……それもいいのだけれど」
僕が迷っている間に、路ちゃんはしっかりと重森さんに向き合って言う。
それを聞いた重森さんは微笑みを見せた。
「そっかそっか。じゃあ、今日からみーたん……いや、みーちゃんって呼ぶね。いや、かわいいな。みーちゃんにぴったりの呼ばれ方じゃん」
「そ、そんなことは……」
「その代わり、私のことも美里ちゃんと呼ぶように。あっ、産賀っちはどっちも使っちゃダメだからね」
謎に釘を刺されるけど、僕は「使わないよ」と返しておく。
そのやり取りの横で路ちゃんは恥ずかしそうにしながらもどこか嬉しそうだった。
時間はかかっているのかもしれないけど、路ちゃんと重森さんの距離は確実に近づいているようだ。
天気予報で雪混じりの雨と予報されていた通り、風に舞う雨は薄っすらと白かった。
その中も学校と塾の2回も自転車で走ってきたから、今日は一段と寒く感じる。
「おお、凍えているね、産賀っち」
そんな僕が塾に入ると、重森さんがまた違う呼び方で呼んでくる。
でも、今まで比べるとニックネームの範疇なので、それほどおかしい感じはしない。
「でも、そんな風に呼ばれたことないな……」
「私も他の人をなんとかっちって呼んだことはないなぁ」
「重森さんはどんなニックネームで呼ばれるの?」
僕は純粋な興味で聞き返すけど、重森さんは急に驚いた表情になる。
「ど、どうしたの?」
「いや、産賀く……産賀っちが積極的に話しかけてくると思わなかったから」
「今、くん付けで呼ぼうとしてた!」
「いやぁ、てっきり岸本さん以外の女子とは話せないタイプかと思ってたよ。あっ、それだと1年の時に亜里沙や瑞姫と話せてないか」
勝手に納得されてしまったけど、その2人に関しては話かけてくれる方だったので、本来の僕だと話せないタイプかもしれない。
「良助くん、重森さん、お疲れ様」
そうしていると、路ちゃんも塾に入って来て、会話に混ざってくる。
「何の話で盛り上がっていたの?」
「私がどんなニックネームで呼ばれてるか。岸本さんも予想してみて」
いつの間にか予想することになっていたが、流れを知らない路ちゃんは真剣に考え始める。
重森美里なら……もりみさとかになるんだろうか。
僕も予想してみるけど、路ちゃんの口から出たのは意外な回答だった。
「……しげさん……とか?」
「……産賀っち、これはボケだと思う?」
「いや……普通に答えてると思う」
「ご、ごめんなさい。他人にニックネームを付けたことがほとんど……いえ、全くないから……」
「そうなの? まぁ、ニックネームって気付いたら勝手に決められてるとかあるよね。産賀っちの予想は?」
「もりみさとか」
「おー 小学校の時には呼んでた子いたから正解。実際はみさみさが多いかな。まぁ、一番呼ばれるのはシンプル下の名前呼びなんだけど」
「そうなんだ」
「じゃあ、次は岸本さんのニックネームを予想してみよう……みーたんとか?」
「え、えっと……」
ぐいぐい来る重森さんに路ちゃんは完全に困っていた。
それは恐らく……ニックネームで呼ばれた経験も少ないからだ。
僕が知る限りだと、大山さんのミチ呼びがそれらしい気もするけど、それを今言うべきかは……
「わ、わたし……ニックネームで呼ばれたことがあんまりなくて。だから、重森さんがそう呼んでくれるなら……それもいいのだけれど」
僕が迷っている間に、路ちゃんはしっかりと重森さんに向き合って言う。
それを聞いた重森さんは微笑みを見せた。
「そっかそっか。じゃあ、今日からみーたん……いや、みーちゃんって呼ぶね。いや、かわいいな。みーちゃんにぴったりの呼ばれ方じゃん」
「そ、そんなことは……」
「その代わり、私のことも美里ちゃんと呼ぶように。あっ、産賀っちはどっちも使っちゃダメだからね」
謎に釘を刺されるけど、僕は「使わないよ」と返しておく。
そのやり取りの横で路ちゃんは恥ずかしそうにしながらもどこか嬉しそうだった。
時間はかかっているのかもしれないけど、路ちゃんと重森さんの距離は確実に近づいているようだ。
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