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2年生2学期
12月8日(木)晴れ 松永浩太との歓談その10
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折り返しで踏ん張りどころの木曜日。
テスト前なので連日同じような内容になってしまうけど、本日も放課後は大倉くんと一緒に勉強することになった。
気分が変わるかわからないけど、今日は自習室に行くことになり、僕らは教室を出ると、ちょうどそのタイミングで4組から松永が出てくる。
「おお、りょーちゃんにクラさん。今から帰り?」
「いや、自習室で勉強する」
「なるほど。それじゃ、俺はこれで……」
「判断が早いな!? せっかくだから一緒に勉強していけばいいのに」
僕がそう言うと大倉くんも頷く。
しかし、松永は心底乗り気じゃない顔をしていた。
「なんだよ。もしかして伊月さんと帰る予定あるとか?」
「いや、ないけど」
「じゃあ、ちょうどいいじゃないか。案外みんなで勉強した方が捗るかもしれないし」
「それはないと思う。それにまだ慌てる時間じゃないだろう」
「て、テスト4日前だと十分慌てる時間じゃない……?」
大倉くんのごもっともな指摘に松永は一歩後ろに下がる。
今まではあまり気にしてこなかったけど、テスト期間前の松永はきちんと勉強しているのだろうか。
なんやかんやでテスト後には何とかなっている印象だったから、全くしていないわけではないはずだ。
「わ、わかったよ……次回までに検討させて頂きます」
「わかってないじゃないか」
「人には向き不向きがあるの。静かな空間が嫌いなわけじゃないけど、他の人の視線とかペンの音とか気になるタイプだから」
「そうなのか。初耳だ」
「産賀くんでも初耳なの……?」
「うん。思い返すと……松永と一緒に勉強した記憶はほとんどないや」
「まぁ、俺がりょーちゃんと関わる時は何かしら遊ぶか話すかだからな。そのおかげで小学生の時のりょーちゃんは色々な遊びを知れたわけだ」
「事実かもしれないけど、自慢げに言うな」
「がははは」
遊び友達と勉強友達という表現があるけれど、松永の場合は圧倒的に前者で、勉強友達にはなれないらしい。
そういう意味では大倉くんは両立できる友達だからかなりタイプが違う。
「やっぱりいいね、産賀くんと松永くんの関係性」
「えっ。今の会話でいいと思えるところあった……?」
「き、気兼ねなく話せてる感じがするから」
「そうそう。クラさんはよくわかってる」
「いや、僕は結構呆れてるよ?」
「そ、そうなんだ。でも、集中できないって言うなら無理に連れて行くのも悪いし、今日はボクらだけで行こう」
「サンキュー、クラさん。じゃあ、また今度」
大倉くんの言葉を聞くや否や松永はすぐに帰っていった。
「まったく……」
「で、でも、松永くんなら何とかするって産賀くんは思ってるんだよね」
「まぁ……進級できるし」
「そういうところは長い間にできた信頼だと思う」
何故か大倉くんはいい方に評価してくれるけど、仮に信頼を感じるならこんな場面じゃない方が良かった気もする。
その後、松永からは一応勉強に誘ったお礼のメッセージが送られて来たので、そういうところだけはちゃんとしていると思った。
受験が近づけば僕と松永も勉強友達として席を並べることもあるのだろうか。
テスト前なので連日同じような内容になってしまうけど、本日も放課後は大倉くんと一緒に勉強することになった。
気分が変わるかわからないけど、今日は自習室に行くことになり、僕らは教室を出ると、ちょうどそのタイミングで4組から松永が出てくる。
「おお、りょーちゃんにクラさん。今から帰り?」
「いや、自習室で勉強する」
「なるほど。それじゃ、俺はこれで……」
「判断が早いな!? せっかくだから一緒に勉強していけばいいのに」
僕がそう言うと大倉くんも頷く。
しかし、松永は心底乗り気じゃない顔をしていた。
「なんだよ。もしかして伊月さんと帰る予定あるとか?」
「いや、ないけど」
「じゃあ、ちょうどいいじゃないか。案外みんなで勉強した方が捗るかもしれないし」
「それはないと思う。それにまだ慌てる時間じゃないだろう」
「て、テスト4日前だと十分慌てる時間じゃない……?」
大倉くんのごもっともな指摘に松永は一歩後ろに下がる。
今まではあまり気にしてこなかったけど、テスト期間前の松永はきちんと勉強しているのだろうか。
なんやかんやでテスト後には何とかなっている印象だったから、全くしていないわけではないはずだ。
「わ、わかったよ……次回までに検討させて頂きます」
「わかってないじゃないか」
「人には向き不向きがあるの。静かな空間が嫌いなわけじゃないけど、他の人の視線とかペンの音とか気になるタイプだから」
「そうなのか。初耳だ」
「産賀くんでも初耳なの……?」
「うん。思い返すと……松永と一緒に勉強した記憶はほとんどないや」
「まぁ、俺がりょーちゃんと関わる時は何かしら遊ぶか話すかだからな。そのおかげで小学生の時のりょーちゃんは色々な遊びを知れたわけだ」
「事実かもしれないけど、自慢げに言うな」
「がははは」
遊び友達と勉強友達という表現があるけれど、松永の場合は圧倒的に前者で、勉強友達にはなれないらしい。
そういう意味では大倉くんは両立できる友達だからかなりタイプが違う。
「やっぱりいいね、産賀くんと松永くんの関係性」
「えっ。今の会話でいいと思えるところあった……?」
「き、気兼ねなく話せてる感じがするから」
「そうそう。クラさんはよくわかってる」
「いや、僕は結構呆れてるよ?」
「そ、そうなんだ。でも、集中できないって言うなら無理に連れて行くのも悪いし、今日はボクらだけで行こう」
「サンキュー、クラさん。じゃあ、また今度」
大倉くんの言葉を聞くや否や松永はすぐに帰っていった。
「まったく……」
「で、でも、松永くんなら何とかするって産賀くんは思ってるんだよね」
「まぁ……進級できるし」
「そういうところは長い間にできた信頼だと思う」
何故か大倉くんはいい方に評価してくれるけど、仮に信頼を感じるならこんな場面じゃない方が良かった気もする。
その後、松永からは一応勉強に誘ったお礼のメッセージが送られて来たので、そういうところだけはちゃんとしていると思った。
受験が近づけば僕と松永も勉強友達として席を並べることもあるのだろうか。
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