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2年生2学期
12月7日(水)晴れ時々曇り 重森美里の介入その4
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テスト一週間前も折り返しの水曜日。
今日は塾がある日だったので、放課後は路ちゃんと早めに塾へ行って自習を始めた。
自習室として解放されている教室でも先生が一人待機していて、質問を受け付けてくれるけど、時間帯によっては全く知らない先生もいるので、僕はあまり利用できていなかった。
同じクラスで受けている同級生はそれを気にせず質問しに行っているので、こういうところで人見知りは少し損していると思ってしまう。
「お疲れ、産賀どん」
そんな僕の愚痴はさておき、自習を始めてから少し経った頃。
教室に入って来た重森さんはまたも違う呼称で僕に挨拶する。
これが重森さん的には定番になっている絡みなんだろうけど、言われた方は少し困る。
「お疲れさま。今日は……なんでどん? 西郷隆盛でしか聞いたことないんだけど」
「どんっていうのは、~殿が柔らかい言い方になったものらしいよ。だから、親しみを込めてどんにしてみた」
「はぁ。親しみを持ってくれたなら……ありがとう」
「いえいえ。岸本さんもお疲れ。今日も可愛いね」
重森さんはナチュラルにそう言って路ちゃんの前の席に座る。
僕としてはさん付けされている路ちゃんの方が親しみを持たれているように感じるけど……まぁ、深い意味ないのだろう。
「岸本さん……何かいい事でもあった?」
「えっ!?」
「ああ、勉強の邪魔してごめん。でも、岸本さんからハッピーオーラを感じたから気になって」
「ハッピーオーラ……?」
「そうそう。冬に入ってメルティーキッスを久しぶりに食べる時にも出るやつ」
重森さんの発言に路ちゃんは首を傾げた。
その会話が聞こえていた僕は心の中でもっといい例えはなかったのかと思う。
いや、限定品を久しぶりに食べる喜びはあるだろうけど、それでハッピーオーラが出るなら、その人は毎日ハッピーな人だ。
「産賀どんはどういう時にハッピーオーラ出す?」
集中が切れて変なことを考えていたら、急に重森さんからパスを渡される。
これは大喜利を求められているのだろうか。
それとも真面目に答えるべきか。
路ちゃんまでこちらに注目し始めたので、中途半端なことは言えない。
僕が周りにわかるほどハッピーになる瞬間……
それはここ最近で言うと……
「い、言えない」
「「えっ」」
「あっ、いや……」
「産賀どん、意外と人に言えないようなえぐい趣味を持ってたりするの……?」
「良助くん……好みは人それぞれだから……」
「ち、違……というか、自習するところだから私語は控えて」
知らない先生からの視線を感じた僕はそう言ってこの話を強引に終わらせる。
ちゃんと釈明した方が良かったような気もするけど、そうなると別のハッピーなことを答えなきゃいけなくなるだろう。
だから……路ちゃんをちゃんと誘えたという事実は、また今度話すとしよう。
今日は塾がある日だったので、放課後は路ちゃんと早めに塾へ行って自習を始めた。
自習室として解放されている教室でも先生が一人待機していて、質問を受け付けてくれるけど、時間帯によっては全く知らない先生もいるので、僕はあまり利用できていなかった。
同じクラスで受けている同級生はそれを気にせず質問しに行っているので、こういうところで人見知りは少し損していると思ってしまう。
「お疲れ、産賀どん」
そんな僕の愚痴はさておき、自習を始めてから少し経った頃。
教室に入って来た重森さんはまたも違う呼称で僕に挨拶する。
これが重森さん的には定番になっている絡みなんだろうけど、言われた方は少し困る。
「お疲れさま。今日は……なんでどん? 西郷隆盛でしか聞いたことないんだけど」
「どんっていうのは、~殿が柔らかい言い方になったものらしいよ。だから、親しみを込めてどんにしてみた」
「はぁ。親しみを持ってくれたなら……ありがとう」
「いえいえ。岸本さんもお疲れ。今日も可愛いね」
重森さんはナチュラルにそう言って路ちゃんの前の席に座る。
僕としてはさん付けされている路ちゃんの方が親しみを持たれているように感じるけど……まぁ、深い意味ないのだろう。
「岸本さん……何かいい事でもあった?」
「えっ!?」
「ああ、勉強の邪魔してごめん。でも、岸本さんからハッピーオーラを感じたから気になって」
「ハッピーオーラ……?」
「そうそう。冬に入ってメルティーキッスを久しぶりに食べる時にも出るやつ」
重森さんの発言に路ちゃんは首を傾げた。
その会話が聞こえていた僕は心の中でもっといい例えはなかったのかと思う。
いや、限定品を久しぶりに食べる喜びはあるだろうけど、それでハッピーオーラが出るなら、その人は毎日ハッピーな人だ。
「産賀どんはどういう時にハッピーオーラ出す?」
集中が切れて変なことを考えていたら、急に重森さんからパスを渡される。
これは大喜利を求められているのだろうか。
それとも真面目に答えるべきか。
路ちゃんまでこちらに注目し始めたので、中途半端なことは言えない。
僕が周りにわかるほどハッピーになる瞬間……
それはここ最近で言うと……
「い、言えない」
「「えっ」」
「あっ、いや……」
「産賀どん、意外と人に言えないようなえぐい趣味を持ってたりするの……?」
「良助くん……好みは人それぞれだから……」
「ち、違……というか、自習するところだから私語は控えて」
知らない先生からの視線を感じた僕はそう言ってこの話を強引に終わらせる。
ちゃんと釈明した方が良かったような気もするけど、そうなると別のハッピーなことを答えなきゃいけなくなるだろう。
だから……路ちゃんをちゃんと誘えたという事実は、また今度話すとしよう。
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