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2年生2学期
11月22日(火)曇り 隣接する岸本路子その11
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いい夫婦の日の火曜日。
そう書いてみたものの、これについて特別広げられるような話題がなかった。
強いて言うなら、うちの両親は滅多に喧嘩しないので、いい夫婦と言えるかもしれない。
そんな今日は部活動で作品の感想会が行われるけど……とうとうダイ・アーリー作の『ボクの群青』が取り上げられることになった。
以前、日記に書いた時はどんな評価をされるか楽しみでもあると書いたけど、少々時間が経った現在はまた恥ずかしさの方が強くなってきていた。
みんなから感想や改善点が挙げられる中で、僕の目線は……専ら路ちゃんの方に行ってしまう。
この作品を僕が書いているとわかっているのは、路ちゃんと姫宮さんがいて、姫宮さんについては直接感想を言われたけど、路ちゃんがどう思っているのかは、今日初めて知る。
「それでは路部長からの感想をお願いします」
「はい。わたしは……」
そこから路ちゃんは想像の予知を残したところや共感しやすい内容だったことを評価してくれた。
一方で、一つの文が長くなる傾向があるので、もう少し区切りを入れてもいいかもしれないという改善点を出してくれた。
改善点については少し自覚があったので、次の作品では気を付けようと思う。
「ふぅ……」
感想会を乗り切った僕は、思わず一息ついてしまう。
日葵さんのように褒められた点を素直に喜びたかったけど、今回ばかりはタイミングが悪かった。
「産賀さん、大丈夫ですか?」
そんな僕に対して伊月さんは心配そうにして声をかける。
「大丈夫。ちょっと疲れただけだから。明日は休みで良かったよ」
「それなら良かったですけど……あ、あの。こんなことを聞くの本当は良くないと思うんですけど……」
伊月さんは僕に近づいてひそひそと話す。
「今日の作品って……路部長が書いたものだったりします……?」
「えっ?」
「い、いえ……今日はやけに路部長の方を見ていたので」
そう指摘した伊月さんは申し訳なさそうな表情をする。
僕の余計な行動が思わぬ勘違いを引き起こしてしまったようだ。
……というか、今日の僕はそんなにわかりやすく路ちゃんの方を見ていたのは、わりと大きな問題である。
早く誤解を解かなければ。
「いや、あれは……」
「産賀さん?」
素直に答えようと思ったその時、僕の頭の中でストップがかかった。
これで伊月さんに僕がダイ・アーリーであると明かすことは何も問題はない。
一瞬の恥で済むことだ。
でも、やけに路ちゃんを見ていたことについてはどう言い訳すればいいんだ。
事情を話すわけにもいかないけど、下手に誤魔化すと、それはそれで変に思われてしまうことに……
「すみません。困らせるようなことを言ってしまって」
「い、いや、あの作品を書いたのは僕なんだ」
「あっ、そうだったんですか。それで……うん?」
これ以上悩ませまいと口走ってしまったけど、伊月さんは何かに引っかかる。
こうなったら気付かれないように願うことしか……
「じゃあ、産賀さんが路部長を見ていたのって……」
「そ、それはね。わたしの頭に糸くずが付いてたみたいで……」
すると、突然割り込んで来た路ちゃんがフォローを入れてくれる。
「……なるほど。本当にすみません。余計な詮索をしてしまって……この前の日葵の件もあるから指摘しておいた方がいいと思ったので」
「ううん。別に絶対ペンネームを隠さなきゃいけないわけじゃないから。伊月さんも気になったら聞いてくれて大丈夫。ね、良助くん」
「う、うん。そうだね」
そのまま話は流れていったので、僕は何とか助かった。
この前の塾でもそうだったけど……最近は路ちゃんに助けられる場面が増えている気がする。
それが嫌だというわけじゃないけど……何だか不思議な気持ちになった。
そう書いてみたものの、これについて特別広げられるような話題がなかった。
強いて言うなら、うちの両親は滅多に喧嘩しないので、いい夫婦と言えるかもしれない。
そんな今日は部活動で作品の感想会が行われるけど……とうとうダイ・アーリー作の『ボクの群青』が取り上げられることになった。
以前、日記に書いた時はどんな評価をされるか楽しみでもあると書いたけど、少々時間が経った現在はまた恥ずかしさの方が強くなってきていた。
みんなから感想や改善点が挙げられる中で、僕の目線は……専ら路ちゃんの方に行ってしまう。
この作品を僕が書いているとわかっているのは、路ちゃんと姫宮さんがいて、姫宮さんについては直接感想を言われたけど、路ちゃんがどう思っているのかは、今日初めて知る。
「それでは路部長からの感想をお願いします」
「はい。わたしは……」
そこから路ちゃんは想像の予知を残したところや共感しやすい内容だったことを評価してくれた。
一方で、一つの文が長くなる傾向があるので、もう少し区切りを入れてもいいかもしれないという改善点を出してくれた。
改善点については少し自覚があったので、次の作品では気を付けようと思う。
「ふぅ……」
感想会を乗り切った僕は、思わず一息ついてしまう。
日葵さんのように褒められた点を素直に喜びたかったけど、今回ばかりはタイミングが悪かった。
「産賀さん、大丈夫ですか?」
そんな僕に対して伊月さんは心配そうにして声をかける。
「大丈夫。ちょっと疲れただけだから。明日は休みで良かったよ」
「それなら良かったですけど……あ、あの。こんなことを聞くの本当は良くないと思うんですけど……」
伊月さんは僕に近づいてひそひそと話す。
「今日の作品って……路部長が書いたものだったりします……?」
「えっ?」
「い、いえ……今日はやけに路部長の方を見ていたので」
そう指摘した伊月さんは申し訳なさそうな表情をする。
僕の余計な行動が思わぬ勘違いを引き起こしてしまったようだ。
……というか、今日の僕はそんなにわかりやすく路ちゃんの方を見ていたのは、わりと大きな問題である。
早く誤解を解かなければ。
「いや、あれは……」
「産賀さん?」
素直に答えようと思ったその時、僕の頭の中でストップがかかった。
これで伊月さんに僕がダイ・アーリーであると明かすことは何も問題はない。
一瞬の恥で済むことだ。
でも、やけに路ちゃんを見ていたことについてはどう言い訳すればいいんだ。
事情を話すわけにもいかないけど、下手に誤魔化すと、それはそれで変に思われてしまうことに……
「すみません。困らせるようなことを言ってしまって」
「い、いや、あの作品を書いたのは僕なんだ」
「あっ、そうだったんですか。それで……うん?」
これ以上悩ませまいと口走ってしまったけど、伊月さんは何かに引っかかる。
こうなったら気付かれないように願うことしか……
「じゃあ、産賀さんが路部長を見ていたのって……」
「そ、それはね。わたしの頭に糸くずが付いてたみたいで……」
すると、突然割り込んで来た路ちゃんがフォローを入れてくれる。
「……なるほど。本当にすみません。余計な詮索をしてしまって……この前の日葵の件もあるから指摘しておいた方がいいと思ったので」
「ううん。別に絶対ペンネームを隠さなきゃいけないわけじゃないから。伊月さんも気になったら聞いてくれて大丈夫。ね、良助くん」
「う、うん。そうだね」
そのまま話は流れていったので、僕は何とか助かった。
この前の塾でもそうだったけど……最近は路ちゃんに助けられる場面が増えている気がする。
それが嫌だというわけじゃないけど……何だか不思議な気持ちになった。
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