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2年生2学期
10月19日(水)晴れ 花園華凛との日常その19
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昨日よりもさらに寒くなった水曜日。
そう思ったのは寒さからいつもよりも少し早く起きてしまったからだ。
寝る前に寒さを甘く見ていると、こういうことになるので、今日からはしっかりと布団を厚くして寝ようと思う。
そんな寒さを感じると、ふと文化祭前に言われた花月堂のおしるこのことを思い出す。
今食べたらさぞ美味しいことだろう。
「リョウスケ」
「うわっ!?」
そう考えた瞬間、花園さんが僕の前に姿を現す。
またしても心を読まれたのか。いや、今回は食べたいと思ってるから花園さん的には良い傾向で……
「改めて文化祭お疲れ様でした。おかげで何事もなく終われました」
「あ、ああ。そっちの話ね。花園さんもお疲れ様。長い時間見張ってくれて」
「いえ。ミチちゃんとしっかり回らせて貰いましたし……なんやかんやでアリサにも引っ張られてたので」
花園さんはそう言いながら後ろの席で今は別の人と話している大山さんに目を向ける。
ちょっとだけ文句を言いたそうに見えるのは……僕の気のせいにしておこう。
「それはそれとして、ミチちゃんとうちに来て貰う予定はちゃんと立てましたか?」
「いや、まだ決まってないけど……」
「でしたら、今日は塾にいる時にでも相談してください」
「わ、わかった。僕もちょうどおしるこを食べたくなってたところだし、早めに行くようにするよ」
「はい。その時は華凛の懐から少々おまけします」
「えっ。そんな気を遣わなくてもいいよ。今回は花園さんだって頑張ったんだから」
「それではなく、純粋に文化祭を終えたことに対してです。正直なところ、リョウスケが副部長としてちゃんと働いているのかと疑問に思っていました」
「なんで!?」
「いえ、ミチちゃんはリョウスケのことを悪く言わないので、実態がわからなかったのです」
花園さんは少しいじわるな表情になる。
そう言われると、路ちゃんは言いそうにないタイプだけど、花園さんの考え方は逆に悪意がある。
「ただ、今回の意思疎通のついでにリョウスケを観察していたら、しっかり働いて安心しました」
「おお、見直してくれたわけだね」
「はい。後輩に弄られるだけの副部長ではなかったと」
「……その話、路ちゃんから聞いたの?」
「直接的には言っていませんが、文脈から何となく読み取りました」
さっきの話と合わせると、路ちゃんは悪気が無く言ったのだと思う。
後輩と分け隔てなく接しているとか、そんな感じで。
ただ、実際は花園さんの表現の方が合っている気もする。
「ま、まぁ、ちゃんとしていると思われたならいいか」
「ふふ。華凛も疑似的に文芸部の一員になった気分でした」
「そうなんだ。花園さんが良ければ、文芸部はいつでも部員を歓迎するよ」
「今更入部するのは少々気まずいものです。しかもよりによって文化祭が終わった後だなんて」
「……いや、本当に入部したければそんなことないと思うよ。文化祭で楽しそうに見えたら入部したくなった、って考えれば全然あると思うし」
僕は何の気なしにそう言うと、花園さんは珍しくはっとした表現になる。
「そう……ですか」
「2年生は2人だけだし……って、無理に勧誘してるわけじゃないから、軽く聞いてくれたらいいよ」
「はい……今度の結果次第で……」
「えっ?」
「いえ。こちらの話です。それよりもミチちゃんとの相談を忘れないように」
花園さんは釘を刺した後、少し考えながら席に戻って行った。
路ちゃんに対しては積極的だけど、文芸部には一歩引いている印象は今までもあった。
それが今回の件で変わったのなら、今度は花園さんがやりたいようにすべきだ。
でも、それを阻む何かがあるようだから、早く解決すればいいなと、僕は思った。
そう思ったのは寒さからいつもよりも少し早く起きてしまったからだ。
寝る前に寒さを甘く見ていると、こういうことになるので、今日からはしっかりと布団を厚くして寝ようと思う。
そんな寒さを感じると、ふと文化祭前に言われた花月堂のおしるこのことを思い出す。
今食べたらさぞ美味しいことだろう。
「リョウスケ」
「うわっ!?」
そう考えた瞬間、花園さんが僕の前に姿を現す。
またしても心を読まれたのか。いや、今回は食べたいと思ってるから花園さん的には良い傾向で……
「改めて文化祭お疲れ様でした。おかげで何事もなく終われました」
「あ、ああ。そっちの話ね。花園さんもお疲れ様。長い時間見張ってくれて」
「いえ。ミチちゃんとしっかり回らせて貰いましたし……なんやかんやでアリサにも引っ張られてたので」
花園さんはそう言いながら後ろの席で今は別の人と話している大山さんに目を向ける。
ちょっとだけ文句を言いたそうに見えるのは……僕の気のせいにしておこう。
「それはそれとして、ミチちゃんとうちに来て貰う予定はちゃんと立てましたか?」
「いや、まだ決まってないけど……」
「でしたら、今日は塾にいる時にでも相談してください」
「わ、わかった。僕もちょうどおしるこを食べたくなってたところだし、早めに行くようにするよ」
「はい。その時は華凛の懐から少々おまけします」
「えっ。そんな気を遣わなくてもいいよ。今回は花園さんだって頑張ったんだから」
「それではなく、純粋に文化祭を終えたことに対してです。正直なところ、リョウスケが副部長としてちゃんと働いているのかと疑問に思っていました」
「なんで!?」
「いえ、ミチちゃんはリョウスケのことを悪く言わないので、実態がわからなかったのです」
花園さんは少しいじわるな表情になる。
そう言われると、路ちゃんは言いそうにないタイプだけど、花園さんの考え方は逆に悪意がある。
「ただ、今回の意思疎通のついでにリョウスケを観察していたら、しっかり働いて安心しました」
「おお、見直してくれたわけだね」
「はい。後輩に弄られるだけの副部長ではなかったと」
「……その話、路ちゃんから聞いたの?」
「直接的には言っていませんが、文脈から何となく読み取りました」
さっきの話と合わせると、路ちゃんは悪気が無く言ったのだと思う。
後輩と分け隔てなく接しているとか、そんな感じで。
ただ、実際は花園さんの表現の方が合っている気もする。
「ま、まぁ、ちゃんとしていると思われたならいいか」
「ふふ。華凛も疑似的に文芸部の一員になった気分でした」
「そうなんだ。花園さんが良ければ、文芸部はいつでも部員を歓迎するよ」
「今更入部するのは少々気まずいものです。しかもよりによって文化祭が終わった後だなんて」
「……いや、本当に入部したければそんなことないと思うよ。文化祭で楽しそうに見えたら入部したくなった、って考えれば全然あると思うし」
僕は何の気なしにそう言うと、花園さんは珍しくはっとした表現になる。
「そう……ですか」
「2年生は2人だけだし……って、無理に勧誘してるわけじゃないから、軽く聞いてくれたらいいよ」
「はい……今度の結果次第で……」
「えっ?」
「いえ。こちらの話です。それよりもミチちゃんとの相談を忘れないように」
花園さんは釘を刺した後、少し考えながら席に戻って行った。
路ちゃんに対しては積極的だけど、文芸部には一歩引いている印象は今までもあった。
それが今回の件で変わったのなら、今度は花園さんがやりたいようにすべきだ。
でも、それを阻む何かがあるようだから、早く解決すればいいなと、僕は思った。
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