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2年生2学期
10月14日(金)晴れ ソフィアとシュウの完結編:破
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文化祭準備日の金曜日。
クラスの出し物については文化祭実行委員に任せつつ、僕は路ちゃんと共に文芸部の展示の準備に取り掛かった。
短歌を展示するボードを持ち込み、ボードと机で展示会場としての流れを作った後、事前に用意した装飾を付けていく。
折り紙で作った様々な形の物やリースによって彩られた室内は、去年よりも少し華やかに見えた。
一方で、やはりパーティー会場感があるような気がするので、本番にここでコスプレした部員がいると、何の部活だと思われそうな気もする。
「産賀、ちょっといいか?」
そんな準備がおおよそ終わった頃。僕は水原先輩に呼ばれる。
「どうしたんですか?」
「少しばかり込み入った話があってな……一旦廊下に出るぞ」
そう言われてそのまま付いていくと、そこには森本先輩と路ちゃん、そして……少々恥ずかし気な表情のソフィア先輩が待っていた。
その組み合わせと状況に僕は何かを感じ取る。
「じゃあ、詳しい話はソフィアから」
「う、うん。あのね、ウーブ君。めちゃめちゃ私事で悪いんだけど……ソフィア、告白しようと思ってるの」
どこかで聞いたセリフだった。
だけど、僕は一応ハッとした反応をする。
「だ、誰にですか……?」
「しゅ、シュウに……」
「お、おお……!」
「それでね。その告白の場所として……この展示場を使いたくて。だから、ウーブ君とミチコちゃんには悪いんだけど、日曜日の最後の方に時間を貰いたいの」
「まー あたしが部長の時は勝手にどうぞーだったんだけど、今の部長と副部長は2人だかだねー」
森本先輩はそう言いながら僕と路ちゃんに目で合図する。
2人なら事情を知っているだろうから、ここはひとつよろしくといった感じで。
それに対して路ちゃんはわかりやすく頷いた。
「わ、わたしは……というか、部長としては全然構わないです。ね、良助くん?」
「う、うん」
「2人ともありがとう! それで、もう1つお願いがあって、最後の方の時間を作って貰うために他の部員を誘導しておいて欲しいの」
「任せてください。えっと……一旦打ち上げの予定を話し合うとか、そんな感じでやります」
「本当にありがとう。ソフィアのわがままに付き合わせて……」
「いえいえ。そ、それよりその……2人の馴れ初めとか聞いてもいいですか……?」
謎のスイッチが入った路ちゃんはそのままソフィア先輩へ突っ込んだ話を聞き始める。
一方の僕は……1人だけ様々な感情が渦巻いていた。
ふ、ふたりで同じことを考えていた……!?
これはもうお互いに勝ち確なんじゃないか?
というか、これは藤原先輩の事情を伝えるべきなのか?
いや、それこそ野暮ってものだろう。
でも、藤原先輩が先に告白する可能性も……
いったいどうしたらいいんだ!?
「産賀。何か焦っているようだが、大丈夫か?」
「い、いえ! 何でも大丈夫です!」
「そ、そうか。それならいいが……私からも文化祭の私物化は謝っておくよ。すまないな」
「汐里が言ってどうすんのー などと言いつつ、これは我々の悲願を達成することでもあるから気持ちはわかるー」
「本当に長かった……いや、まだ終わってないんだが、さすがにここで転ぶようなことはないだろうし……」
「フラグを立てていくー まぁ、いい思い出になると思いますよー」
水原先輩と森本先輩が感慨深くなりながら話し始める中、僕の焦燥感はさらに強くなっていく。
勝利が約束されたことだからこそ、余計なことが起こってはならない。
ただ、この場合に優先すべきは……どっちなんだ。
やっぱりどちらか片方には伝えて……でもしかし……
「よし、話は終わったし掃除をして明日に備えよう」
結局、僕はこの日の日記を書く時までどうすべきか悩んでしまった。
ただ、そのことばかり気にしてもしょうがないので、なるようになれで行くことに決める。
あくまで本題は文芸部としての成功だから。
それはそれとして、思った以上にやる事が多い文化祭になりそうだ。
クラスの出し物については文化祭実行委員に任せつつ、僕は路ちゃんと共に文芸部の展示の準備に取り掛かった。
短歌を展示するボードを持ち込み、ボードと机で展示会場としての流れを作った後、事前に用意した装飾を付けていく。
折り紙で作った様々な形の物やリースによって彩られた室内は、去年よりも少し華やかに見えた。
一方で、やはりパーティー会場感があるような気がするので、本番にここでコスプレした部員がいると、何の部活だと思われそうな気もする。
「産賀、ちょっといいか?」
そんな準備がおおよそ終わった頃。僕は水原先輩に呼ばれる。
「どうしたんですか?」
「少しばかり込み入った話があってな……一旦廊下に出るぞ」
そう言われてそのまま付いていくと、そこには森本先輩と路ちゃん、そして……少々恥ずかし気な表情のソフィア先輩が待っていた。
その組み合わせと状況に僕は何かを感じ取る。
「じゃあ、詳しい話はソフィアから」
「う、うん。あのね、ウーブ君。めちゃめちゃ私事で悪いんだけど……ソフィア、告白しようと思ってるの」
どこかで聞いたセリフだった。
だけど、僕は一応ハッとした反応をする。
「だ、誰にですか……?」
「しゅ、シュウに……」
「お、おお……!」
「それでね。その告白の場所として……この展示場を使いたくて。だから、ウーブ君とミチコちゃんには悪いんだけど、日曜日の最後の方に時間を貰いたいの」
「まー あたしが部長の時は勝手にどうぞーだったんだけど、今の部長と副部長は2人だかだねー」
森本先輩はそう言いながら僕と路ちゃんに目で合図する。
2人なら事情を知っているだろうから、ここはひとつよろしくといった感じで。
それに対して路ちゃんはわかりやすく頷いた。
「わ、わたしは……というか、部長としては全然構わないです。ね、良助くん?」
「う、うん」
「2人ともありがとう! それで、もう1つお願いがあって、最後の方の時間を作って貰うために他の部員を誘導しておいて欲しいの」
「任せてください。えっと……一旦打ち上げの予定を話し合うとか、そんな感じでやります」
「本当にありがとう。ソフィアのわがままに付き合わせて……」
「いえいえ。そ、それよりその……2人の馴れ初めとか聞いてもいいですか……?」
謎のスイッチが入った路ちゃんはそのままソフィア先輩へ突っ込んだ話を聞き始める。
一方の僕は……1人だけ様々な感情が渦巻いていた。
ふ、ふたりで同じことを考えていた……!?
これはもうお互いに勝ち確なんじゃないか?
というか、これは藤原先輩の事情を伝えるべきなのか?
いや、それこそ野暮ってものだろう。
でも、藤原先輩が先に告白する可能性も……
いったいどうしたらいいんだ!?
「産賀。何か焦っているようだが、大丈夫か?」
「い、いえ! 何でも大丈夫です!」
「そ、そうか。それならいいが……私からも文化祭の私物化は謝っておくよ。すまないな」
「汐里が言ってどうすんのー などと言いつつ、これは我々の悲願を達成することでもあるから気持ちはわかるー」
「本当に長かった……いや、まだ終わってないんだが、さすがにここで転ぶようなことはないだろうし……」
「フラグを立てていくー まぁ、いい思い出になると思いますよー」
水原先輩と森本先輩が感慨深くなりながら話し始める中、僕の焦燥感はさらに強くなっていく。
勝利が約束されたことだからこそ、余計なことが起こってはならない。
ただ、この場合に優先すべきは……どっちなんだ。
やっぱりどちらか片方には伝えて……でもしかし……
「よし、話は終わったし掃除をして明日に備えよう」
結局、僕はこの日の日記を書く時までどうすべきか悩んでしまった。
ただ、そのことばかり気にしてもしょうがないので、なるようになれで行くことに決める。
あくまで本題は文芸部としての成功だから。
それはそれとして、思った以上にやる事が多い文化祭になりそうだ。
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