上 下
558 / 942
2年生2学期

10月13日(木)晴れ 花園華凛との日常その18

しおりを挟む
 快晴で昼間の気温が少し上がった木曜日。
 明日は終日文化祭の準備日になるので、

 そんな日の昼休み。昼食を取り終えたタイミングで、

「リョウスケ、少し話があります」

 と、花園さんから声をかけられる。
 少し前にあった花園さんのお店に行く話だろうかと思ったけど、廊下に出た瞬間に花園さんの表情は真剣な表情になった。

「文化祭直前になりましたが、ミチちゃんの様子は特に変わりないですか?」

「えっ? 特に変わりないと思うけど……?」

「……まさか去年のことを忘れているのですか?」

 花園さんは圧をかけながらそう聞いてくる。
 そのおかげで僕は忘れていた……というよりは気にしなくなっていたことを思い出した。

「わ、忘れてないよ。直近でそういう話は出てないし」

 去年の文化祭で路ちゃんに降りかかった災難。
 中学時代の苦手な同級生が展示にやって来て、嫌な気持ちから思わずに逃げ出してしまったこと。
 その出来事は一応去年でひと区切りついた……と僕は思っていた。

「ですが、今年も遭遇した時に同じ様になる可能性もあります」

「それは……ないとは言い切れないけど、わざわざ指摘するのもちょっと……」

「ええ。だから、リョウスケに改めて警戒するように言っているのです」

「な、なるほど」

「当日は華凛もなるべく文芸部の前を見張っています」

「ええっ!? そこまでやらなくても……」

「やらなきゃいけないのです。今年こそは……ミチちゃんに楽しい気持ちのまま2日間を終えて欲しいから」

 花園さんは力強く言う。
 その言葉に僕はこの件を軽く扱いそうになってしまったことを反省する。
 昨年のことを知っているなら僕も意識しなければいけなかった点だ。
 たとえ路ちゃんが口にしなくても、気にしないというのは間違いだった。

「迷惑をかけるつもりはありません。でも、華凛ができることはやりたいんです」

「……わかった。僕もなるべく協力するよ。ただ、花園さんも文化祭は楽しんで欲しいから……」

「それは……少々誇張して言ってしまいました。さすがに四六時中見張るようなことはしません」

 花園さんがそう言ってくれたので僕は安心する。
 楽しい気持ちで終わって欲しいのは花園さんも同じだ。
 
「でも、件の人が誰かわからないからどうしようか……」

「そこは心配いりません。騒がしい女子グループは全て報告するようにします」

「めちゃくちゃ迷惑なんだけど!?」

 それは冗談だとして、花園さんが路ちゃんを想う気持ちは尊重したいと思う。
 文芸部としては、来てくれる人を拒むわけにはいかないので、何事も起きないように祈っておこう。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

彼ノ女人禁制地ニテ

フルーツパフェ
ホラー
古より日本に点在する女人禁制の地―― その理由は語られぬまま、時代は令和を迎える。 柏原鈴奈は本業のOLの片手間、動画配信者として活動していた。 今なお日本に根強く残る女性差別を忌み嫌う彼女は、動画配信の一環としてとある地方都市に存在する女人禁制地潜入の動画配信を企てる。 地元住民の監視を警告を無視し、勧誘した協力者達と共に神聖な土地で破廉恥な演出を続けた彼女達は視聴者たちから一定の反応を得た後、帰途に就こうとするが――

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

冤罪をかけられ、彼女まで寝取られた俺。潔白が証明され、皆は後悔しても戻れない事を知ったらしい

一本橋
恋愛
痴漢という犯罪者のレッテルを張られた鈴木正俊は、周りの信用を失った。 しかし、その実態は私人逮捕による冤罪だった。 家族をはじめ、友人やクラスメイトまでもが見限り、ひとり孤独へとなってしまう。 そんな正俊を慰めようと現れた彼女だったが、そこへ私人逮捕の首謀者である“山本”の姿が。 そこで、唯一の頼みだった彼女にさえも裏切られていたことを知ることになる。 ……絶望し、身を投げようとする正俊だったが、そこに学校一の美少女と呼ばれている幼馴染みが現れて──

少女が過去を取り戻すまで

tiroro
青春
小学生になり、何気ない日常を過ごしていた少女。 玲美はある日、運命に導かれるように、神社で一人佇む寂しげな少女・恵利佳と偶然出会った。 初めて会ったはずの恵利佳に、玲美は強く惹かれる不思議な感覚に襲われる。 恵利佳を取り巻くいじめ、孤独、悲惨な過去、そして未来に迫る悲劇を打ち破るため、玲美は何度も挫折しかけながら仲間達と共に立ち向かう。 『生まれ変わったら、また君と友達になりたい』 玲美が知らずに追い求めていた前世の想いは、やがて、二人の運命を大きく変えていく──── ※この小説は、なろうで完結済みの小説のリメイクです ※リメイクに伴って追加した話がいくつかあります  内容を一部変更しています ※物語に登場する学校名、周辺の地域名、店舗名、人名はフィクションです ※一部、事実を基にしたフィクションが入っています ※タグは、完結までの間に話数に応じて一部増えます ※イラストは「画像生成AI」を使っています

片思いに未練があるのは、私だけになりそうです

珠宮さくら
青春
髙村心陽は、双子の片割れである姉の心音より、先に初恋をした。 その相手は、幼なじみの男の子で、姉の初恋の相手は彼のお兄さんだった。 姉の初恋は、姉自身が見事なまでにぶち壊したが、その初恋の相手の人生までも狂わせるとは思いもしなかった。 そんな心陽の初恋も、片思いが続くことになるのだが……。

下弦に冴える月

和之
青春
恋に友情は何処まで寛容なのか・・・。

樹企画第二弾作品集(Spoon内自主企画)

樹(いつき)@作品使用時は作者名明記必須
青春
◆こちらはspoonというアプリで、読み手様個人宛てに書いた作品となりますが、spoonに音声投稿後フリー台本として公開許可を頂いたものをこちらにまとめました。 1:30〜8分ほどで読み切れる作品集です。 ⚠動画・音声投稿サイトにご使用になる場合⚠ ・使用許可は不要ですが、自作発言や転載はもちろん禁止です。著作権は放棄しておりません。必ず作者名の樹(いつき)を記載して下さい。(何度注意しても作者名の記載が無い場合には台本使用を禁止します) ・語尾変更や方言などの多少のアレンジはokですが、大幅なアレンジや台本の世界観をぶち壊すようなアレンジやエフェクトなどはご遠慮願います。 その他の詳細は【作品を使用する際の注意点】をご覧下さい。

18禁NTR鬱ゲーの裏ボス最強悪役貴族に転生したのでスローライフを楽しんでいたら、ヒロイン達が奴隷としてやって来たので幸せにすることにした

田中又雄
ファンタジー
『異世界少女を歪ませたい』はエロゲー+MMORPGの要素も入った神ゲーであった。 しかし、NTR鬱ゲーであるためENDはいつも目を覆いたくなるものばかりであった。 そんなある日、裏ボスの悪役貴族として転生したわけだが...俺は悪役貴族として動く気はない。 そう思っていたのに、そこに奴隷として現れたのは今作のヒロイン達。 なので、酷い目にあってきた彼女達を精一杯愛し、幸せなトゥルーエンドに導くことに決めた。 あらすじを読んでいただきありがとうございます。 併せて、本作品についてはYouTubeで動画を投稿しております。 より、作品に没入できるようつくっているものですので、よければ見ていただければ幸いです!

処理中です...