543 / 942
2年生2学期
9月28日(水)曇り時々雨 桜庭くんと桜庭さんその2
しおりを挟む
三度台風が迫り始めた水曜日。
今年は台風の話題ばかり書いている気がするから去年より接近回数が多いのかもしれない。
そんな今日は今の僕が接近すると少し困ってしまう人物と出会ってしまう。
「あら、産賀くん。お久しぶり」
塾前にいったん帰宅しようと思っていた放課後、桜庭先輩は僕に声をかける。
下駄箱に行く直前に出会ったので、待ち構えられていたのかと思ってしまった。
「お、お久しぶりです。桜庭先輩は……今日はもう帰りで?」
「ううん。部活があるけど、その前にちょっと用事を済ませようと思って、そしたらたたまたま産賀くんが見えたの」
「そうだったんですか。それじゃあ……」
「あら、そんなにすぐ帰ろうとするの?」
「い、いえ……」
会ってしまったからには今一番ホットな話題を振らないといけない気がする。
逆に考えよう……今日会ったのは早めに言っておけという導きだと。
そう思って僕が口を開こうとすると、その前に桜庭先輩は神妙な面持ちになる。
「産賀くん的にはまだ気になってる……わよね」
「えっ……」
「私も直接声をかけるのはどうかと思っていたから、この機会に言っておくわ。夢愛のこと……変わらず接してくれてありがとう。そして、ごめんなさい。私も煽るようなことをしておいて……」
桜庭先輩は僕に向かって頭を下げる。
僕が躊躇していたのが、清水先輩のことだと思われてしまったらしい。
「さ、桜庭先輩は悪くないです。あれは僕が勝手に勘違いしちゃっただけで……」
「それで言うなら産賀くんも悪くないわ。私だって、てっきり……ごめんなさい。掘り返したかったわけじゃないんだけど」
「えっと……全く気にならなくなったと言ったら嘘になりますけど、それで清水先輩や桜庭先輩と距離を置くつもりはないです。清水先輩にもそう言ったので……」
「……そう。それなら……なんで今日は話を切り上げようとしたの?」
「そ、それは……」
「別にいいのよ。はっきり言っておいてくれれば、私も暫くはむやみやたらに絡むようなことはしないから」
「ち、違うんです! 実は……」
桜庭先輩が珍しくしおらしい感じになってしまったので、僕は慌てて本題を話す。
それを聞いた桜庭先輩は一瞬だけぽかんとしていたけど、すぐに吹き出しだ。
「ふふっ。なにそれ。もしかして、それで私と話すのが気まずかったの」
「そ、そうです……」
「なるほどね。それにしても正弥くんの彼女が産賀くんの妹さんだったなんて」
「彼女ができたのは知ってたんですか?」
「本人からは聞いてないけど、両親から伝わる形でね。これは……また弄りがいのある話題が増えたわ」
「まさか桜庭くんのことも僕みたいな扱いなんですか」
「まるで私が産賀くんのことを弄ってるみたいに言うじゃない。まぁ、でも、正解よ」
「……当たりたくなかった」
「産賀くんと正弥くん、そういう意味では少し似ているところがあるのかも」
何だか急に桜庭くんに対して親近感が湧いてきた。
今度会った時はお互いの被害を報告してもいいかもしれない。
「じゃあ、産賀くんが私もお姉ちゃんと言う未来もあるかもしれないと」
「そうなってもたぶん言わないですよ」
「残念。あっ、そろそろ用事を済ませなきゃいけないから、私はこれで」
話してみると桜庭先輩と気まずさを感じるよりも桜庭くんへの共感性が高まったから、何事もやってみるまでわからないものである。
それに、勘違いの流れではあったけど、清水先輩の件を桜庭先輩に話せたことも結果的には良かった。
今度会う時は、桜庭先輩が気にかけずに済む状態にしておきたい。
今年は台風の話題ばかり書いている気がするから去年より接近回数が多いのかもしれない。
そんな今日は今の僕が接近すると少し困ってしまう人物と出会ってしまう。
「あら、産賀くん。お久しぶり」
塾前にいったん帰宅しようと思っていた放課後、桜庭先輩は僕に声をかける。
下駄箱に行く直前に出会ったので、待ち構えられていたのかと思ってしまった。
「お、お久しぶりです。桜庭先輩は……今日はもう帰りで?」
「ううん。部活があるけど、その前にちょっと用事を済ませようと思って、そしたらたたまたま産賀くんが見えたの」
「そうだったんですか。それじゃあ……」
「あら、そんなにすぐ帰ろうとするの?」
「い、いえ……」
会ってしまったからには今一番ホットな話題を振らないといけない気がする。
逆に考えよう……今日会ったのは早めに言っておけという導きだと。
そう思って僕が口を開こうとすると、その前に桜庭先輩は神妙な面持ちになる。
「産賀くん的にはまだ気になってる……わよね」
「えっ……」
「私も直接声をかけるのはどうかと思っていたから、この機会に言っておくわ。夢愛のこと……変わらず接してくれてありがとう。そして、ごめんなさい。私も煽るようなことをしておいて……」
桜庭先輩は僕に向かって頭を下げる。
僕が躊躇していたのが、清水先輩のことだと思われてしまったらしい。
「さ、桜庭先輩は悪くないです。あれは僕が勝手に勘違いしちゃっただけで……」
「それで言うなら産賀くんも悪くないわ。私だって、てっきり……ごめんなさい。掘り返したかったわけじゃないんだけど」
「えっと……全く気にならなくなったと言ったら嘘になりますけど、それで清水先輩や桜庭先輩と距離を置くつもりはないです。清水先輩にもそう言ったので……」
「……そう。それなら……なんで今日は話を切り上げようとしたの?」
「そ、それは……」
「別にいいのよ。はっきり言っておいてくれれば、私も暫くはむやみやたらに絡むようなことはしないから」
「ち、違うんです! 実は……」
桜庭先輩が珍しくしおらしい感じになってしまったので、僕は慌てて本題を話す。
それを聞いた桜庭先輩は一瞬だけぽかんとしていたけど、すぐに吹き出しだ。
「ふふっ。なにそれ。もしかして、それで私と話すのが気まずかったの」
「そ、そうです……」
「なるほどね。それにしても正弥くんの彼女が産賀くんの妹さんだったなんて」
「彼女ができたのは知ってたんですか?」
「本人からは聞いてないけど、両親から伝わる形でね。これは……また弄りがいのある話題が増えたわ」
「まさか桜庭くんのことも僕みたいな扱いなんですか」
「まるで私が産賀くんのことを弄ってるみたいに言うじゃない。まぁ、でも、正解よ」
「……当たりたくなかった」
「産賀くんと正弥くん、そういう意味では少し似ているところがあるのかも」
何だか急に桜庭くんに対して親近感が湧いてきた。
今度会った時はお互いの被害を報告してもいいかもしれない。
「じゃあ、産賀くんが私もお姉ちゃんと言う未来もあるかもしれないと」
「そうなってもたぶん言わないですよ」
「残念。あっ、そろそろ用事を済ませなきゃいけないから、私はこれで」
話してみると桜庭先輩と気まずさを感じるよりも桜庭くんへの共感性が高まったから、何事もやってみるまでわからないものである。
それに、勘違いの流れではあったけど、清水先輩の件を桜庭先輩に話せたことも結果的には良かった。
今度会う時は、桜庭先輩が気にかけずに済む状態にしておきたい。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
令嬢の名門女学校で、パンツを初めて履くことになりました
フルーツパフェ
大衆娯楽
とある事件を受けて、財閥のご令嬢が数多く通う女学校で校則が改訂された。
曰く、全校生徒はパンツを履くこと。
生徒の安全を確保するための善意で制定されたこの校則だが、学校側の意図に反して事態は思わぬ方向に?
史実上の事件を元に描かれた近代歴史小説。
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。
スタジオ.T
青春
幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。
そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。
ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる