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2年生2学期
9月19日(月)雨 敬老と台風
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連休最終日の月曜日。
予報通り台風の影響で昨日の夜から風は強く吹き荒れ、朝にはそれに合わさって雨が降り始めていた。
そのことから今日の塾の開講は中止になったけど、僕としては完全休日になった嬉しさよりも何事もないように思う心配の方が勝っていた。
そんな中、今日は敬老の日なので、こちらにいるばあちゃんと京都2人に電話で連絡を入れた。
ただ、僕の気持ちは日頃の感謝よりも台風の話題の方に引っ張られて、つい言ってしまう。
『まー、いざとなったらそっちの家に避難するよ。うちよりは新築で頑丈だろうし』
こちらにいるばあちゃんは冗談混じりにそう言う。
本当はこの連休中にもどこか出かける予定があったようだけど、連日のニュースを見た結果、さすがに家で待機することを選んだらしい。
ニュース内では普通に旅行している人もいたから、ばあちゃんは良い判断をしたと思う(旅行している人を否定したいわけじゃないけど)。
『それよりも京都の方に声かけてあげなよ。距離が離れてる分、心配も大きいだろうから』
「それで言ったらばあちゃんも一人だから……」
『ははっ、良助は健気だね。さっきの感謝の気持ちを今の心配だけで十分だよ』
そう言われてしまうと、これ以上何か言うのも無粋な気がするので、僕は電話を明莉に渡す。
そして、明莉の話が終わったら今度は京都のじいちゃんばあちゃんに連絡する。
『良助の声、低くなったなぁ。正敏くんにそっくりじゃ』
『体育祭は大丈夫なのかい? 問題なく開催できるといいねぇ』
電話をかけてみると2人から言われることはわりと普段通りのことだった。
「僕のところの体育祭は今週末だからたぶん問題ないよ」
『そうかい、それなら良かった。それが終わったら文化祭もあるし、秋は色々忙しいねぇ。体調を崩さないようにしっかり食べて、しっかり寝るんだよぉ』
「うん。また冬休みに行く時には文化祭の冊子持って行くから。あとは貸して貰ったノートも」
『それは楽しみだねぇ。それじゃあ……』
「ああ、待って。明莉にかわるから」
のんびりした会話を終えると、なぜか僕は安心感を覚える。
恐らくそれは危険な台風の中であった不安に対して、ばあちゃんたちの普段通りの対応が染みたからだと思う。
普段なら前にも聞いたと思ってしまう話も今日は何だか心地よかった。
敬老の日で感謝するはずだったけど、僕の方が元気を貰う形になった。
予報通り台風の影響で昨日の夜から風は強く吹き荒れ、朝にはそれに合わさって雨が降り始めていた。
そのことから今日の塾の開講は中止になったけど、僕としては完全休日になった嬉しさよりも何事もないように思う心配の方が勝っていた。
そんな中、今日は敬老の日なので、こちらにいるばあちゃんと京都2人に電話で連絡を入れた。
ただ、僕の気持ちは日頃の感謝よりも台風の話題の方に引っ張られて、つい言ってしまう。
『まー、いざとなったらそっちの家に避難するよ。うちよりは新築で頑丈だろうし』
こちらにいるばあちゃんは冗談混じりにそう言う。
本当はこの連休中にもどこか出かける予定があったようだけど、連日のニュースを見た結果、さすがに家で待機することを選んだらしい。
ニュース内では普通に旅行している人もいたから、ばあちゃんは良い判断をしたと思う(旅行している人を否定したいわけじゃないけど)。
『それよりも京都の方に声かけてあげなよ。距離が離れてる分、心配も大きいだろうから』
「それで言ったらばあちゃんも一人だから……」
『ははっ、良助は健気だね。さっきの感謝の気持ちを今の心配だけで十分だよ』
そう言われてしまうと、これ以上何か言うのも無粋な気がするので、僕は電話を明莉に渡す。
そして、明莉の話が終わったら今度は京都のじいちゃんばあちゃんに連絡する。
『良助の声、低くなったなぁ。正敏くんにそっくりじゃ』
『体育祭は大丈夫なのかい? 問題なく開催できるといいねぇ』
電話をかけてみると2人から言われることはわりと普段通りのことだった。
「僕のところの体育祭は今週末だからたぶん問題ないよ」
『そうかい、それなら良かった。それが終わったら文化祭もあるし、秋は色々忙しいねぇ。体調を崩さないようにしっかり食べて、しっかり寝るんだよぉ』
「うん。また冬休みに行く時には文化祭の冊子持って行くから。あとは貸して貰ったノートも」
『それは楽しみだねぇ。それじゃあ……』
「ああ、待って。明莉にかわるから」
のんびりした会話を終えると、なぜか僕は安心感を覚える。
恐らくそれは危険な台風の中であった不安に対して、ばあちゃんたちの普段通りの対応が染みたからだと思う。
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