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2年生夏休み
8月23日(火)曇り 後輩との日常・岸元日葵の場合その7
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夏休み34日目。梅雨の時よりも曇り空を見ている気がするこの頃だけど、気温的にはそれほど涼しくならない。秋の運動会の時期までは暑いと毎年思うので、今年もそうなりそうだ。
そんな今日は文芸部の活動日だ。僕の創作の方は冒頭を書いては消すことを繰り返していて、正直なところ夏休み中に形にできるか怪しくなってきている。
でも、これで妥協して書き始めてしまうと良くない気がするので、夏休みが終わるまでは悩んでいこうと思う。
一方、1年生達の進捗については把握できていないけど、あまり相談を受けないから順調なのだと思っている。自分の進捗を聞かれてしまうと何も言えなくなってしまうので、僕から聞くことはできなかった。
「産賀センパイ! ちょっといいですか?」
そう言ってきたのは日葵さんだった。そこそこの付き合いになってきたからこの言い方は悩み相談ではないことはすぐにわかる。
「どうしたの?」
「今週末って夏祭りあるじゃないですか? だから、文芸部のみんなで行くのもいいかなーって思って。遠出じゃないから3年生も行けそうですし」
「おお。日葵さんは本当に色々提案してくれるね。でも、他の友達とは行かなくていいの?」
「いやぁ、それが……みんなコレと行ったり、コレを作るために行ったりって話になってて……」
日葵さんはわざとらしく小指を立てて見せる。指で表現する人は結構久しぶりに見た気がする。
「な、なるほど」
「うちにも1人いるんですけどねー」
「ちょっ……悪いと思ってるって言ったじゃない」
日葵さんに少し非難する目で見られたのは伊月さんだった。まぁ、去年も8月末の夏祭りに行っていたから不思議ではない。それがあって僕は本田くんの手伝いを……いや、この話はもう掘り返さないでおこう。
「はいはい。茉奈はいいよね~」
「……そこまで言うんだったら日葵だって彼氏作ったらいいじゃない」
「えー……」
「無理にとは言わないけど、今は好きな人いないの?」
「もちろん、いる! 歌い手の……」
「そういう話じゃなくて……あっ、ごめんなさい。産賀さんと話してる途中なのに」
「いや、全然構わないよ」
「そうそう。それで産賀センパイは参加しますか?」
「……今回は遠慮しておこうかな」
僕がそう答えると、何故か日葵さんと伊月さんは一瞬停止する。そして、すぐに僕の方に詰め寄って来た。
「なんでぇ!? 産賀センパイ他に誰かと行く予定なんですか!?」
「もしかして、はわわわ……」
「な、なんで別で行く前提になってるの!? よ、用事があるから行けないだけだよ」
「だって、せっかくの夏祭りをわざわざスルーするなんてあり得ないと思ったから」
「そんなあり得ないと言われるほどではないと思うけど……ねぇ、伊月さん」
「……えっ? あっ、はい」
伊月さんから微妙な反応を返されてしまったので、僕の意見は少しズレているかもしれない。でも、人混みがそれほど得意じゃない僕からすると、最近行っている方が珍しいのだ。
「じゃあ、産賀センパイは不参加ですね。路センパイはどうしますー?」
「わ、わたしは……」
それから日葵さんは来ている人には直接参加するかどうかを聞いて回っていた。その行動力は素直に凄いと思うし、実際に文芸部内の良い夏の思い出になるとは思う。
けれど、僕はまだこの夏祭りへ行くことを確定できなかった。もしも行くなら……僕は清水先輩を誘おうと思っていたから。
だから申し訳ないけど、今回の夏だけは不参加にさせて貰った。
そんな今日は文芸部の活動日だ。僕の創作の方は冒頭を書いては消すことを繰り返していて、正直なところ夏休み中に形にできるか怪しくなってきている。
でも、これで妥協して書き始めてしまうと良くない気がするので、夏休みが終わるまでは悩んでいこうと思う。
一方、1年生達の進捗については把握できていないけど、あまり相談を受けないから順調なのだと思っている。自分の進捗を聞かれてしまうと何も言えなくなってしまうので、僕から聞くことはできなかった。
「産賀センパイ! ちょっといいですか?」
そう言ってきたのは日葵さんだった。そこそこの付き合いになってきたからこの言い方は悩み相談ではないことはすぐにわかる。
「どうしたの?」
「今週末って夏祭りあるじゃないですか? だから、文芸部のみんなで行くのもいいかなーって思って。遠出じゃないから3年生も行けそうですし」
「おお。日葵さんは本当に色々提案してくれるね。でも、他の友達とは行かなくていいの?」
「いやぁ、それが……みんなコレと行ったり、コレを作るために行ったりって話になってて……」
日葵さんはわざとらしく小指を立てて見せる。指で表現する人は結構久しぶりに見た気がする。
「な、なるほど」
「うちにも1人いるんですけどねー」
「ちょっ……悪いと思ってるって言ったじゃない」
日葵さんに少し非難する目で見られたのは伊月さんだった。まぁ、去年も8月末の夏祭りに行っていたから不思議ではない。それがあって僕は本田くんの手伝いを……いや、この話はもう掘り返さないでおこう。
「はいはい。茉奈はいいよね~」
「……そこまで言うんだったら日葵だって彼氏作ったらいいじゃない」
「えー……」
「無理にとは言わないけど、今は好きな人いないの?」
「もちろん、いる! 歌い手の……」
「そういう話じゃなくて……あっ、ごめんなさい。産賀さんと話してる途中なのに」
「いや、全然構わないよ」
「そうそう。それで産賀センパイは参加しますか?」
「……今回は遠慮しておこうかな」
僕がそう答えると、何故か日葵さんと伊月さんは一瞬停止する。そして、すぐに僕の方に詰め寄って来た。
「なんでぇ!? 産賀センパイ他に誰かと行く予定なんですか!?」
「もしかして、はわわわ……」
「な、なんで別で行く前提になってるの!? よ、用事があるから行けないだけだよ」
「だって、せっかくの夏祭りをわざわざスルーするなんてあり得ないと思ったから」
「そんなあり得ないと言われるほどではないと思うけど……ねぇ、伊月さん」
「……えっ? あっ、はい」
伊月さんから微妙な反応を返されてしまったので、僕の意見は少しズレているかもしれない。でも、人混みがそれほど得意じゃない僕からすると、最近行っている方が珍しいのだ。
「じゃあ、産賀センパイは不参加ですね。路センパイはどうしますー?」
「わ、わたしは……」
それから日葵さんは来ている人には直接参加するかどうかを聞いて回っていた。その行動力は素直に凄いと思うし、実際に文芸部内の良い夏の思い出になるとは思う。
けれど、僕はまだこの夏祭りへ行くことを確定できなかった。もしも行くなら……僕は清水先輩を誘おうと思っていたから。
だから申し訳ないけど、今回の夏だけは不参加にさせて貰った。
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