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2年生夏休み
8月4日(木)晴れ 清水夢愛との夏散歩Ⅱその3
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夏休み15日目。清水先輩に誘われる朝からの散歩もさすがにこの時期となると爽やかさよりも暑さの方を感じてしまう。運動不足の体にはちょうどいいのかもしれないけど、水分補給も忘れないようにしなければいけない。
そして、もう1つ忘れてはならないのは……清水先輩の悩んでいることについて。8月に入っても清水先輩はそのことを自ら口にしようとしなかった。まだ迷っていると言われたらそれまでだし、実際のところはまだ猶予はあるのかもしれない。
だけど、大学によっては推薦などを受け付け始める季節であるから、全く焦らずにいるのも違うとは思う。来年の今頃、僕が同じような危機感を抱いていられるかわからないけど、少なくとも今の清水先輩の代わりに僕は焦っていた。
「そうだ、良助。今度手持ち花火やってみないか? あれも長らくやっていない気がする」
「確かに僕も最後にやったのは……小学何年生だったっけ……?」
この日も清水先輩からそのことについて話されることはなった。次に話すのは話がまとまった時と言っていたから、お盆に両親と話すまで事は進まないのだろうか。
「私は……小織と何回かやった記憶がある。たぶん低学年の頃だ」
「なんで急にやらなくなるんでしょうね。あっ、お祭りとかで貰えなくなるからか……」
「そうなのか?」
「自分で買いに行った記憶よりもいつの間にか家に置いてある感じだったので、親が買って来てくれてたのかもしれません」
「そうか……ご両親が」
不意に僕が言ってしまった言葉に清水先輩は少し引っかかったような表情になる。またこの感じだ。両親に対する清水先輩の何とも言えない感じ。これが具体的にわかれば、僕も何か言える気がするのに、清水先輩はそれ以上何も言わない。
「手持ち花火、いつやりますか?」
「うーむ。善は急げというから……今日の夜とか?」
「きょ、今日ですか!? いやまぁ、別に暇ではあるんですけど、どこでやるかにもよるというか……消火できるように水もいりますし」
「じゃあ、別に私の家でもいいけど」
「……い、いいんですか。行っても」
「いいも何も一回来たことあるじゃないか。ちょうど去年の夏休み」
「そうですけど……やっぱり今日はやめておきましょう。ほら、桜庭先輩も誘った方がいいですし」
「それもそうか。でも、花火は事前に買っておいてもいいよな? コンビニとか寄ってみよう」
そう言いながら清水先輩は周りの店を探し始めたので、僕は一安心する。今清水先輩の家に誘われるのは二重の意味で緊張する。
一つは女子の家に行くという意味。以前行った時とは僕の感情が全く違う。
そして、もう一つは……清水先輩の両親に会うかもしれないという意味。直接会えば何かわかるかもしれないけど、会うのが少し怖いとも思ってしまった。
その後、清水先輩と手持ち花火を見ていったけど、この日はお気に召す物が見つからなかった。色々なことはまだ先延ばしだ。
そして、もう1つ忘れてはならないのは……清水先輩の悩んでいることについて。8月に入っても清水先輩はそのことを自ら口にしようとしなかった。まだ迷っていると言われたらそれまでだし、実際のところはまだ猶予はあるのかもしれない。
だけど、大学によっては推薦などを受け付け始める季節であるから、全く焦らずにいるのも違うとは思う。来年の今頃、僕が同じような危機感を抱いていられるかわからないけど、少なくとも今の清水先輩の代わりに僕は焦っていた。
「そうだ、良助。今度手持ち花火やってみないか? あれも長らくやっていない気がする」
「確かに僕も最後にやったのは……小学何年生だったっけ……?」
この日も清水先輩からそのことについて話されることはなった。次に話すのは話がまとまった時と言っていたから、お盆に両親と話すまで事は進まないのだろうか。
「私は……小織と何回かやった記憶がある。たぶん低学年の頃だ」
「なんで急にやらなくなるんでしょうね。あっ、お祭りとかで貰えなくなるからか……」
「そうなのか?」
「自分で買いに行った記憶よりもいつの間にか家に置いてある感じだったので、親が買って来てくれてたのかもしれません」
「そうか……ご両親が」
不意に僕が言ってしまった言葉に清水先輩は少し引っかかったような表情になる。またこの感じだ。両親に対する清水先輩の何とも言えない感じ。これが具体的にわかれば、僕も何か言える気がするのに、清水先輩はそれ以上何も言わない。
「手持ち花火、いつやりますか?」
「うーむ。善は急げというから……今日の夜とか?」
「きょ、今日ですか!? いやまぁ、別に暇ではあるんですけど、どこでやるかにもよるというか……消火できるように水もいりますし」
「じゃあ、別に私の家でもいいけど」
「……い、いいんですか。行っても」
「いいも何も一回来たことあるじゃないか。ちょうど去年の夏休み」
「そうですけど……やっぱり今日はやめておきましょう。ほら、桜庭先輩も誘った方がいいですし」
「それもそうか。でも、花火は事前に買っておいてもいいよな? コンビニとか寄ってみよう」
そう言いながら清水先輩は周りの店を探し始めたので、僕は一安心する。今清水先輩の家に誘われるのは二重の意味で緊張する。
一つは女子の家に行くという意味。以前行った時とは僕の感情が全く違う。
そして、もう一つは……清水先輩の両親に会うかもしれないという意味。直接会えば何かわかるかもしれないけど、会うのが少し怖いとも思ってしまった。
その後、清水先輩と手持ち花火を見ていったけど、この日はお気に召す物が見つからなかった。色々なことはまだ先延ばしだ。
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