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2年生夏休み
8月1日(月)晴れ 明莉との夏休みⅡその2
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夏休み12日目。そして、8月の始まりの日。今月から夏本番だぞと空がアピールするように晴天の今日は熱中症警戒アラートが発令されるほどのものらしい。
しかし、そんな炎天下の中でも運動部の部活動は行われるので大変である。僕のなんか自転車で行くだけでも危険を感じるのに汗をかいて運動するなんて尚更だろう。
「うげぇ……死ぬかと思った……」
そう言って家に帰ってきたのは午前中にバド部を終えた明莉だった。バドミントンは体育館で行うけど、未だに我が母校の体育館は冷房が設置されていないので、明莉が言っていることは冗談では無さそうだ。
「おかえり。よくぞ生きて帰った」
「りょうちゃん、ずるいよ~ こんな涼しい部屋でぬくぬくと過ごしてたなんて」
「そういう時にぬくぬくは使わないだろう。それに明莉が帰ってくると思って部屋を冷やしておいたんだ」
「じゃあ、ついでに冷たくて甘いモノも用意しといて……」
「ふっふっふっ。そう言うと思って用意しておいた!」
「えっ!? なになに!?」
明莉の食い付きに僕は気を良くしながら用意しておいた物を取り出す。
「じゃん! かき氷機!」
「……かき氷かぁ」
「えっ。な、なんでそんな嬉しくなさそうなの?」
「いや、昨日お祭りで食べたばっかりだったから。りょうちゃんは食べなかったの?」
「う、うん。屋台のかき氷なんて店側にとって最強のコスパ商品だからやめておきなさい……って言われたから」
「ええっ!? そうなの!? あかり損してた……」
「いやいや。そこはお祭りだからこそ食べて美味しかったから良いって言うところだろうに」
「まぁ、お腹に入れば後悔はないんだけど……そうだとしたらなんでかき氷?」
「その話をされてうちにもかき氷機があったのを思い出したから、久々にやってみようかと思って。まぁ、いらないならいいけど……」
「いります! 今すぐ体を冷やしたいです!」
「素直でよろしい」
そう言いながら僕は先に凍らせておいた氷の塊を取り出す。明莉が昨日食べている可能性は完全に失念していたけど、食べない選択はしないだろうと思っていた。氷をセッティングして削り出すと少しずつシャーベット状の山ができていく。
「おお。ちゃんと動いてる。去年ってかき氷機使ったっけ?」
「それが思い出せないからそのレベルで使ってない可能性はある。一応全部洗ってるから汚れとかは大丈夫だと思うけど」
「シロップはどうするの?」
「専用のやつはないからジュースかカルピスの原液で」
「だったらジュース凍らせて削れば良かったのに。なんか前にもやらなかったっけ?」
「あー……あった気がする。それも忘れてた」
今回は昨日の夏祭りの話に出てきたから無性に食べたくなったけど、ひと夏の間にかき氷機の出番がないこともあるのだからそう思うのも何だか不思議だ。最近は最早スイーツみたいなかき氷も販売されるし、家で食べるのは珍しかったりするんだろうか。
「で、できた……結構疲れるな、削るの……」
「りょうちゃんにはいい運動じゃない? それじゃあ……カルピスにしよう。こんなんなんぼかけてもいいですからね」
「僕もカルピスにするか。薄める時と違って分量はわからないけど……これくらいで」
「よし、それではいただきまーす。……くぅー」
「うん、しっかり削れてる」
「りょうちゃん、すごいよ。これならいつでも屋台で売り出せるね!」
「屋台のはもっと早く削れないと回転率が良くないから無理だと思う。でもまぁ、味はあんまり変わらないか」
「あかり、今度はしろくまみたいなやつ食べたいなー」
「さすがにこのかき氷機じゃ無理じゃないかな……それにフルーツたくさんいるでしょ、あれ」
「レパートリーが増やすためにもなんとか」
「ほぼ夏限定のレパートリーはちょっと……」
そんなのんびりした会話をしつつ、僕と明莉は久々の手作りかき氷を味わった。
夏だから夏祭りやプールへ行くべきとは思わないけれど、夏らしいことをすると不思議な充実感がある。今年の夏休みもなんやかんやで夏らしいことはそこそこできそうなので、夏本番の8月も暑さに負けず楽しんでいこうと思った。
しかし、そんな炎天下の中でも運動部の部活動は行われるので大変である。僕のなんか自転車で行くだけでも危険を感じるのに汗をかいて運動するなんて尚更だろう。
「うげぇ……死ぬかと思った……」
そう言って家に帰ってきたのは午前中にバド部を終えた明莉だった。バドミントンは体育館で行うけど、未だに我が母校の体育館は冷房が設置されていないので、明莉が言っていることは冗談では無さそうだ。
「おかえり。よくぞ生きて帰った」
「りょうちゃん、ずるいよ~ こんな涼しい部屋でぬくぬくと過ごしてたなんて」
「そういう時にぬくぬくは使わないだろう。それに明莉が帰ってくると思って部屋を冷やしておいたんだ」
「じゃあ、ついでに冷たくて甘いモノも用意しといて……」
「ふっふっふっ。そう言うと思って用意しておいた!」
「えっ!? なになに!?」
明莉の食い付きに僕は気を良くしながら用意しておいた物を取り出す。
「じゃん! かき氷機!」
「……かき氷かぁ」
「えっ。な、なんでそんな嬉しくなさそうなの?」
「いや、昨日お祭りで食べたばっかりだったから。りょうちゃんは食べなかったの?」
「う、うん。屋台のかき氷なんて店側にとって最強のコスパ商品だからやめておきなさい……って言われたから」
「ええっ!? そうなの!? あかり損してた……」
「いやいや。そこはお祭りだからこそ食べて美味しかったから良いって言うところだろうに」
「まぁ、お腹に入れば後悔はないんだけど……そうだとしたらなんでかき氷?」
「その話をされてうちにもかき氷機があったのを思い出したから、久々にやってみようかと思って。まぁ、いらないならいいけど……」
「いります! 今すぐ体を冷やしたいです!」
「素直でよろしい」
そう言いながら僕は先に凍らせておいた氷の塊を取り出す。明莉が昨日食べている可能性は完全に失念していたけど、食べない選択はしないだろうと思っていた。氷をセッティングして削り出すと少しずつシャーベット状の山ができていく。
「おお。ちゃんと動いてる。去年ってかき氷機使ったっけ?」
「それが思い出せないからそのレベルで使ってない可能性はある。一応全部洗ってるから汚れとかは大丈夫だと思うけど」
「シロップはどうするの?」
「専用のやつはないからジュースかカルピスの原液で」
「だったらジュース凍らせて削れば良かったのに。なんか前にもやらなかったっけ?」
「あー……あった気がする。それも忘れてた」
今回は昨日の夏祭りの話に出てきたから無性に食べたくなったけど、ひと夏の間にかき氷機の出番がないこともあるのだからそう思うのも何だか不思議だ。最近は最早スイーツみたいなかき氷も販売されるし、家で食べるのは珍しかったりするんだろうか。
「で、できた……結構疲れるな、削るの……」
「りょうちゃんにはいい運動じゃない? それじゃあ……カルピスにしよう。こんなんなんぼかけてもいいですからね」
「僕もカルピスにするか。薄める時と違って分量はわからないけど……これくらいで」
「よし、それではいただきまーす。……くぅー」
「うん、しっかり削れてる」
「りょうちゃん、すごいよ。これならいつでも屋台で売り出せるね!」
「屋台のはもっと早く削れないと回転率が良くないから無理だと思う。でもまぁ、味はあんまり変わらないか」
「あかり、今度はしろくまみたいなやつ食べたいなー」
「さすがにこのかき氷機じゃ無理じゃないかな……それにフルーツたくさんいるでしょ、あれ」
「レパートリーが増やすためにもなんとか」
「ほぼ夏限定のレパートリーはちょっと……」
そんなのんびりした会話をしつつ、僕と明莉は久々の手作りかき氷を味わった。
夏だから夏祭りやプールへ行くべきとは思わないけれど、夏らしいことをすると不思議な充実感がある。今年の夏休みもなんやかんやで夏らしいことはそこそこできそうなので、夏本番の8月も暑さに負けず楽しんでいこうと思った。
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