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2年生夏休み
7月29日(金)晴れ 後輩との日常・桐山宗太郎の場合その6
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夏休み9日目。文芸部の活動日かつ7月が終わりに近づいているということで、そろそろアイデアを固めたいところだけど……その台詞を繰り返して未だに何も進んでいない。
「産賀先輩……!」
そんな状態でも後輩の頼る声を無視するわけにはいかない。僕に聞いたところで解決できるかはわからないけど……
「どうしたら姫宮さんに弄って貰えるんですか!?」
……別の意味でわからない話が出てきた。
「桐山くんは話してる時弄られてないの」
「そうっすよ。マウントですか?」
「マウント取るならもっと別のことにしたいよ。僕から言えるのはこの前と同じで隙を見せることくらいだ」
「そう言われて隙を見せてるつもりなんすけど……そもそもあんまり話しかけて貰えないっす……」
少し落ち込む桐山くん。1年生が会話している姿を見る限りではみんな満遍なく話していたような気がするけど、そうでもないのだろうか。
「じゃあ……今ちょっと姫宮さんに話しかけてみてよ。それを見て何が悪いのか判断してみるから」
「い、今っすか!? いったい何を話せば……?」
「作業進んでるかどうか聞いてみたらいいんじゃない? ほら、ちょっと気分転換に話したくてとか」
そうしたいのは僕だった。わりと無茶ぶりをしているのは判断するためではあるけど、少しだけ別のことで頭を動かしたかったからでもある。本当にすまない、桐山くん。
「わかりました……行ってきます」
若干震えながらも桐山くんは姫宮さんの傍に近づいていく。すると、姫宮さんもちょうどそのタイミングで顔を上げた。作業中は話しかけづらいから話を振るには絶好のチャンスである。
そして、桐山くん……
「あ、あの……」
「どうしたの桐山」
「……さ、さぎょう」
「さしすせそ」
「えっ!?」
「え。ご希望通りに言ったけど」
「……あ、ありがとうございましたぁ!」
そう言いながら桐山くんは僕のところへ撤退してくる。
「う、産賀先輩! どうでした!?」
「どうもこうも……まともに話できてないじゃないか!?」
「そ、そんなことないっすよ。ちゃんとキャッチボールしてたっす」
「いや、なんか話しかけるのちょっと恥ずかしいなぁとかそういうレベルだと思ってたけど、あそこまで挙動不審になってるとは思ってなかった」
「だ、だって、緊張するから……」
決して人のことを強く言える立場じゃないけど、さすがに僕もびっくりしてしまった。4人でいる時にどう立ち回っているんだ。
「これでプール行って僕が他のみんなの相手してても、桐山くん1人じゃ話せないんじゃないか……?」
「どうしたらいいんすか、産賀先輩~」
「……回答にもう少し時間を貰いたい」
「えー!? プール行くまでに何とかなりません!?」
「桐山くん。まずは姫宮さんも他の人だと思って話しかけるように考えてみよう。それで駄目なら……また考えるから」
自分でそう言いながらも解決できる保証はどこにもなかった。
その後、桐山くんがどうすれば緊張せずに話せるか考えていたら、今日の活動時間は終わっていた。別のことに頭を使いたいと言ったけど、それで新たな悩みを抱えてしまっては本末転倒だ。
でも、今の桐山くんの状況は今の僕と全く関係ないとは言えないのでなるべく考えてあげたい。そのためには……明日の重大ミッションをクリアしなければ。
「産賀先輩……!」
そんな状態でも後輩の頼る声を無視するわけにはいかない。僕に聞いたところで解決できるかはわからないけど……
「どうしたら姫宮さんに弄って貰えるんですか!?」
……別の意味でわからない話が出てきた。
「桐山くんは話してる時弄られてないの」
「そうっすよ。マウントですか?」
「マウント取るならもっと別のことにしたいよ。僕から言えるのはこの前と同じで隙を見せることくらいだ」
「そう言われて隙を見せてるつもりなんすけど……そもそもあんまり話しかけて貰えないっす……」
少し落ち込む桐山くん。1年生が会話している姿を見る限りではみんな満遍なく話していたような気がするけど、そうでもないのだろうか。
「じゃあ……今ちょっと姫宮さんに話しかけてみてよ。それを見て何が悪いのか判断してみるから」
「い、今っすか!? いったい何を話せば……?」
「作業進んでるかどうか聞いてみたらいいんじゃない? ほら、ちょっと気分転換に話したくてとか」
そうしたいのは僕だった。わりと無茶ぶりをしているのは判断するためではあるけど、少しだけ別のことで頭を動かしたかったからでもある。本当にすまない、桐山くん。
「わかりました……行ってきます」
若干震えながらも桐山くんは姫宮さんの傍に近づいていく。すると、姫宮さんもちょうどそのタイミングで顔を上げた。作業中は話しかけづらいから話を振るには絶好のチャンスである。
そして、桐山くん……
「あ、あの……」
「どうしたの桐山」
「……さ、さぎょう」
「さしすせそ」
「えっ!?」
「え。ご希望通りに言ったけど」
「……あ、ありがとうございましたぁ!」
そう言いながら桐山くんは僕のところへ撤退してくる。
「う、産賀先輩! どうでした!?」
「どうもこうも……まともに話できてないじゃないか!?」
「そ、そんなことないっすよ。ちゃんとキャッチボールしてたっす」
「いや、なんか話しかけるのちょっと恥ずかしいなぁとかそういうレベルだと思ってたけど、あそこまで挙動不審になってるとは思ってなかった」
「だ、だって、緊張するから……」
決して人のことを強く言える立場じゃないけど、さすがに僕もびっくりしてしまった。4人でいる時にどう立ち回っているんだ。
「これでプール行って僕が他のみんなの相手してても、桐山くん1人じゃ話せないんじゃないか……?」
「どうしたらいいんすか、産賀先輩~」
「……回答にもう少し時間を貰いたい」
「えー!? プール行くまでに何とかなりません!?」
「桐山くん。まずは姫宮さんも他の人だと思って話しかけるように考えてみよう。それで駄目なら……また考えるから」
自分でそう言いながらも解決できる保証はどこにもなかった。
その後、桐山くんがどうすれば緊張せずに話せるか考えていたら、今日の活動時間は終わっていた。別のことに頭を使いたいと言ったけど、それで新たな悩みを抱えてしまっては本末転倒だ。
でも、今の桐山くんの状況は今の僕と全く関係ないとは言えないのでなるべく考えてあげたい。そのためには……明日の重大ミッションをクリアしなければ。
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