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2年生夏休み
7月28日(木)晴れ 大山亜里沙との夏遊びⅡ
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夏休み8日目。絶好のお出かけ日和というには暑すぎる今日だけど、今日は桜庭くんのために午前中から外に出かけなければならなかった。
明莉に元気よく見送られながら僕はとりあえず高校の方へ足を進めるけど、正直することは何も決まっていない。図書館で本を読むという選択肢も浮かんだけど、気分的に今日はぶらぶらしたかった。腰を落ち着けると今頃自宅で何してるんだろうと考えてしまいそうだったから。
でも、汗がかきたいわけでもないからとりあえず涼しそうな目的地を目指そう。そう思って更に進んで適当にお店に立ち寄ってみては、出て行くのを繰り返す。
今思えば昨日の時点で誰か遊びに誘えば良かった。そうすればカラオケなり何なりに行って暇を大いに潰せたと思う。
こうなったら思い切ってヒトカラデビューでもしてみようか……と思ったその時だった。
「あれ? うぶクン何してんの?」
僕は偶然にも大山さんと出会う。いや、高校の方へ向かっていたから出会う可能性は低くないけど、大山さんとばったり会うのは何だか珍しい。
「暇をつぶしてる」
「おお、夏休みらしいじゃん」
「大山さんはバド部の帰り?」
「そそ……って、なんでわかったの?」
「昼前で制服だったからそうかなと」
加えて言うと大山さんの髪の毛が少しばかり濡れていたからそう思った。暑い日ではあるけど、それほどまでになるのは運動した証拠だろう。決して汗をかいてると言いたいわけじゃない。水を被った可能性もあるから……本人に言ってないのに何を言い訳しているんだろう。
「言われてみるとそっか。で、うぶクンはこれからどこ行くの?」
「何も決まってないよ。お昼を外で食べなきゃいけないこと以外は」
「ふーん? なんか元気ないケド、何かあった?」
「……そうだ。大山さんにはお礼をしたいと思っていたんだ。もしも暇なら何か冷たいモノでもおごるよ」
「えっ!? 何でお礼言われるかわかんないケドいいの!? いただきまーす!」
大山さんは大げさなくらいに喜ぶので僕も普通に嬉しくなる。暇つぶしに付き合って貰うことにはなるけど、お礼をしたかったのは本当だ。
それから僕と大山さんは近くのホームセンターに入り、併設されているアイスクリーム屋に立ち寄る。時々明莉と来ることもあるけど、ここへ来るのは小さい頃の記憶の方が濃いから何だか懐かしい気分になる。
「アタシ、3段……いや、2段……」
「別に3段でいいよ」
「じゃあ、3段で! フレーバーは……」
注文を終えてアイスを受け取った僕と大山さんはそのまま店内の椅子に座る。そこで大山さんがアイスを美味しそうに食べる姿を見ながら、僕は暇つぶしすることになった経緯を話した。
「なるほどな~ 明莉ちゃんもすっかりそういう感じかー……あむ」
「でも、それはそれとして順調なようだし、大山さんにもお世話になったから今日はそのお礼ということで」
「あっ、それだったんだ。うぶクンが事前活動でおごってくれたのかと思ってた」
「どんな事前活動なの。まぁ、部活終わりで暑そうだったから思い付いたのもあるけど」
「思い付いてくれてよかった~ ちょうど何か冷たいモノ欲しかったし」
「僕も……ちょうど愚痴れる相手が欲しかったところだった」
「あれ? 順調だからいいじゃないの?」
「いいけど……家追い出されたし」
「ぷっ……ゴメン。でも、めっちゃ気にしてるんじゃん」
「気にするよ! 自宅に2人きりなんだし!」
その言葉を皮切りに珍しく僕はよく喋って、大山さんは程よく相槌を打ってくれた。アイスを奢っただけでこんな話を聞かされるのは、よく考えなくとも迷惑だったろうけど、アイスに免じて許して貰うしかない。
「……喋り過ぎた。ごめん、時間取って」
「全然。明莉ちゃんの最新情報はアタシも気になるところだし。ふー……あっ、もう12時じゃん」
「本当だ。アイス屋でたむろしたの初めてかもしれない」
「あんまり居座るとこじゃないもんね。じゃあ、2件目行きますかぁ」
「えっ? 2件目」
「ついでだからお昼も一緒に食べよ? アタシはどうせコンビニで買って帰るだけだったし」
「お、おう……いいの?」
「えー? 珍しくうぶクンから誘ったのにもういつもの遠慮モードになったの?」
「い、いや……わかった。どこで食べる?」
「そうだなぁ。今日は結構がっつりいきたいから……」
その後、僕はお昼を食べ終えてからも大山さんに連れまわされて、気付いた時には17時を過ぎていた。具体的に何をしていかというと、午前中と同じように店に立ち寄っては出ていく感じだったけど、大山さんが喋り続ける分、まるで退屈はしなかった。
「た、ただいまぁ……」
「おかえり。今日はありがとね、りょうちゃ……なんでそんなに疲れてるの?」
でも、この夏休み中で一番体力を使ったので僕はヘロヘロだった。これで大山さんは部活後だというのだから体力の差がはっきりわかる。そろそろ向き合うべきだろうか……筋トレの件。
明莉に元気よく見送られながら僕はとりあえず高校の方へ足を進めるけど、正直することは何も決まっていない。図書館で本を読むという選択肢も浮かんだけど、気分的に今日はぶらぶらしたかった。腰を落ち着けると今頃自宅で何してるんだろうと考えてしまいそうだったから。
でも、汗がかきたいわけでもないからとりあえず涼しそうな目的地を目指そう。そう思って更に進んで適当にお店に立ち寄ってみては、出て行くのを繰り返す。
今思えば昨日の時点で誰か遊びに誘えば良かった。そうすればカラオケなり何なりに行って暇を大いに潰せたと思う。
こうなったら思い切ってヒトカラデビューでもしてみようか……と思ったその時だった。
「あれ? うぶクン何してんの?」
僕は偶然にも大山さんと出会う。いや、高校の方へ向かっていたから出会う可能性は低くないけど、大山さんとばったり会うのは何だか珍しい。
「暇をつぶしてる」
「おお、夏休みらしいじゃん」
「大山さんはバド部の帰り?」
「そそ……って、なんでわかったの?」
「昼前で制服だったからそうかなと」
加えて言うと大山さんの髪の毛が少しばかり濡れていたからそう思った。暑い日ではあるけど、それほどまでになるのは運動した証拠だろう。決して汗をかいてると言いたいわけじゃない。水を被った可能性もあるから……本人に言ってないのに何を言い訳しているんだろう。
「言われてみるとそっか。で、うぶクンはこれからどこ行くの?」
「何も決まってないよ。お昼を外で食べなきゃいけないこと以外は」
「ふーん? なんか元気ないケド、何かあった?」
「……そうだ。大山さんにはお礼をしたいと思っていたんだ。もしも暇なら何か冷たいモノでもおごるよ」
「えっ!? 何でお礼言われるかわかんないケドいいの!? いただきまーす!」
大山さんは大げさなくらいに喜ぶので僕も普通に嬉しくなる。暇つぶしに付き合って貰うことにはなるけど、お礼をしたかったのは本当だ。
それから僕と大山さんは近くのホームセンターに入り、併設されているアイスクリーム屋に立ち寄る。時々明莉と来ることもあるけど、ここへ来るのは小さい頃の記憶の方が濃いから何だか懐かしい気分になる。
「アタシ、3段……いや、2段……」
「別に3段でいいよ」
「じゃあ、3段で! フレーバーは……」
注文を終えてアイスを受け取った僕と大山さんはそのまま店内の椅子に座る。そこで大山さんがアイスを美味しそうに食べる姿を見ながら、僕は暇つぶしすることになった経緯を話した。
「なるほどな~ 明莉ちゃんもすっかりそういう感じかー……あむ」
「でも、それはそれとして順調なようだし、大山さんにもお世話になったから今日はそのお礼ということで」
「あっ、それだったんだ。うぶクンが事前活動でおごってくれたのかと思ってた」
「どんな事前活動なの。まぁ、部活終わりで暑そうだったから思い付いたのもあるけど」
「思い付いてくれてよかった~ ちょうど何か冷たいモノ欲しかったし」
「僕も……ちょうど愚痴れる相手が欲しかったところだった」
「あれ? 順調だからいいじゃないの?」
「いいけど……家追い出されたし」
「ぷっ……ゴメン。でも、めっちゃ気にしてるんじゃん」
「気にするよ! 自宅に2人きりなんだし!」
その言葉を皮切りに珍しく僕はよく喋って、大山さんは程よく相槌を打ってくれた。アイスを奢っただけでこんな話を聞かされるのは、よく考えなくとも迷惑だったろうけど、アイスに免じて許して貰うしかない。
「……喋り過ぎた。ごめん、時間取って」
「全然。明莉ちゃんの最新情報はアタシも気になるところだし。ふー……あっ、もう12時じゃん」
「本当だ。アイス屋でたむろしたの初めてかもしれない」
「あんまり居座るとこじゃないもんね。じゃあ、2件目行きますかぁ」
「えっ? 2件目」
「ついでだからお昼も一緒に食べよ? アタシはどうせコンビニで買って帰るだけだったし」
「お、おう……いいの?」
「えー? 珍しくうぶクンから誘ったのにもういつもの遠慮モードになったの?」
「い、いや……わかった。どこで食べる?」
「そうだなぁ。今日は結構がっつりいきたいから……」
その後、僕はお昼を食べ終えてからも大山さんに連れまわされて、気付いた時には17時を過ぎていた。具体的に何をしていかというと、午前中と同じように店に立ち寄っては出ていく感じだったけど、大山さんが喋り続ける分、まるで退屈はしなかった。
「た、ただいまぁ……」
「おかえり。今日はありがとね、りょうちゃ……なんでそんなに疲れてるの?」
でも、この夏休み中で一番体力を使ったので僕はヘロヘロだった。これで大山さんは部活後だというのだから体力の差がはっきりわかる。そろそろ向き合うべきだろうか……筋トレの件。
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