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2年生1学期
7月4日(月)雨時々曇り 松永浩太との歓談その4
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テスト開始の月曜日。台風の影響で天気は微妙に悪いけど、おかげで先週よりもかなり涼しく感じられた。それがテストに影響するかと言われたら……まぁ、特に関係はないけど、暑い中やるよりは環境としていいような気がする。
そんな今日は雨がそれほどひどくないので、先週から引き続き松永と駄弁りながら下校していた。
「今日は伊月さんに何か用事あったの?」
「うん。詳しくは聞いてないけど、勉強会でもあるんじゃない?」
何だか素っ気ない感じで松永が言うので、僕は訝しげな目で見てしまう。
「な、なんでそんな目で見るの」
「いや、ちょっと前までは伊月さんが構ってくれないと嫌だーって感じだったのが随分変わったなと思って」
「まー、そういう時期は過ぎたってことよ。いつまでもベタベタしてたらカッコ悪いし」
「ふーん。倦怠期とかじゃなく?」
「は~ わかってないな、りょーちゃん。イチャイチャするだけが恋人じゃないんですよ」
松永は煽るような顔で言う。確かに僕はわかっていないが、直近までの松永は距離間近めだったから、急にそんなアピールをするようになったのは少し驚きである。
「そういうもんか。言われてみれば最近は伊月さんから松永についての愚痴もあんまり聞かされてないし」
「そうそう。信頼関係ができたって言うのかな? 言葉多く語らずとも自然と通じ合えるようになったんだよ。そういう話、茉奈ちゃんから聞いてるでしょ?」
「いや、そもそも松永の話を聞かなくなったな。どっちかというと文芸部のことで忙しそうだし……」
「…………」
「松永?」
「どうしよう、りょーちゃん!? 俺、飽きられてるかも!?」
「さっきの自信はどこへ行った!?」
うろたえる松永を見て先ほどまでの発言が単なるイキリだったことに気付く。僕に言う手前ちょっと話を盛ってしまったのか。
「いやさ、ベタベタし過ぎないようにしてるのは本当なんだけど、りょーちゃんに話しなくなるレベルなら飽きられてる可能性あるんじゃないかと……」
「いやいや、愚痴りたくなるようなことが無くなっただけでしょ。たぶん、その心がけのおかげだし、いい傾向だよ」
「そうかなぁ……テスト期間中はテストに集中しなさいって言われてるから最低限しか連絡してないし……」
「それで言葉少なくても通じ合えてるんだろ? 心配ないって」
いつの間にか励ます側に回っている僕。ちょっと気になって聞いてしまったけど、今のタイミングで伊月さんの話を振るのは失敗だったかもしれない。
「そもそも何でそんな自信無くなるんだ。松永らしくもない」
「そりゃあ……茉奈ちゃんのこと好きだから」
「えっ」
「付き合ってても好きな子にちゃんと恋人として見られてるか気になるもんなんだよ」
「そ、そうなんだ……」
「なんでりょーちゃんが照れるんだよ」
「だって、そんなはっきり言うと思わなかったから」
「俺は恥ずかしい台詞結構言うよ、茉奈ちゃんの前でも」
「わお……」
「りょーちゃんも参考にしていいぜ?」
「お、おう……」
「お? 参考にするような相手がいるの?」
松永は揚げ足を取ろうとそう言うけど、僕はまだ松永の発言の恥ずかしさが抜けずにふわふわしていて何も返せなかった。
松永は伊月さんが絡むと変なテンションになることもあるけど、その根本は伊月さんが好きだからこそのものだろう。しかも2人が並んでいる時は伊月さんの方がベタ惚れしているように見えるのだから、やっぱりお似合いのカップルだと思う。
いや、何でテスト初日で2人の惚気について考えさせられているんだ。今度からテスト期間中に松永へ伊月さんの話は振らないようにしようと思った。
そんな今日は雨がそれほどひどくないので、先週から引き続き松永と駄弁りながら下校していた。
「今日は伊月さんに何か用事あったの?」
「うん。詳しくは聞いてないけど、勉強会でもあるんじゃない?」
何だか素っ気ない感じで松永が言うので、僕は訝しげな目で見てしまう。
「な、なんでそんな目で見るの」
「いや、ちょっと前までは伊月さんが構ってくれないと嫌だーって感じだったのが随分変わったなと思って」
「まー、そういう時期は過ぎたってことよ。いつまでもベタベタしてたらカッコ悪いし」
「ふーん。倦怠期とかじゃなく?」
「は~ わかってないな、りょーちゃん。イチャイチャするだけが恋人じゃないんですよ」
松永は煽るような顔で言う。確かに僕はわかっていないが、直近までの松永は距離間近めだったから、急にそんなアピールをするようになったのは少し驚きである。
「そういうもんか。言われてみれば最近は伊月さんから松永についての愚痴もあんまり聞かされてないし」
「そうそう。信頼関係ができたって言うのかな? 言葉多く語らずとも自然と通じ合えるようになったんだよ。そういう話、茉奈ちゃんから聞いてるでしょ?」
「いや、そもそも松永の話を聞かなくなったな。どっちかというと文芸部のことで忙しそうだし……」
「…………」
「松永?」
「どうしよう、りょーちゃん!? 俺、飽きられてるかも!?」
「さっきの自信はどこへ行った!?」
うろたえる松永を見て先ほどまでの発言が単なるイキリだったことに気付く。僕に言う手前ちょっと話を盛ってしまったのか。
「いやさ、ベタベタし過ぎないようにしてるのは本当なんだけど、りょーちゃんに話しなくなるレベルなら飽きられてる可能性あるんじゃないかと……」
「いやいや、愚痴りたくなるようなことが無くなっただけでしょ。たぶん、その心がけのおかげだし、いい傾向だよ」
「そうかなぁ……テスト期間中はテストに集中しなさいって言われてるから最低限しか連絡してないし……」
「それで言葉少なくても通じ合えてるんだろ? 心配ないって」
いつの間にか励ます側に回っている僕。ちょっと気になって聞いてしまったけど、今のタイミングで伊月さんの話を振るのは失敗だったかもしれない。
「そもそも何でそんな自信無くなるんだ。松永らしくもない」
「そりゃあ……茉奈ちゃんのこと好きだから」
「えっ」
「付き合ってても好きな子にちゃんと恋人として見られてるか気になるもんなんだよ」
「そ、そうなんだ……」
「なんでりょーちゃんが照れるんだよ」
「だって、そんなはっきり言うと思わなかったから」
「俺は恥ずかしい台詞結構言うよ、茉奈ちゃんの前でも」
「わお……」
「りょーちゃんも参考にしていいぜ?」
「お、おう……」
「お? 参考にするような相手がいるの?」
松永は揚げ足を取ろうとそう言うけど、僕はまだ松永の発言の恥ずかしさが抜けずにふわふわしていて何も返せなかった。
松永は伊月さんが絡むと変なテンションになることもあるけど、その根本は伊月さんが好きだからこそのものだろう。しかも2人が並んでいる時は伊月さんの方がベタ惚れしているように見えるのだから、やっぱりお似合いのカップルだと思う。
いや、何でテスト初日で2人の惚気について考えさせられているんだ。今度からテスト期間中に松永へ伊月さんの話は振らないようにしようと思った。
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