産賀良助の普変なる日常

ちゃんきぃ

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2年生1学期

6月29日(水)晴れ 花園華凛との日常その15

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 梅雨明け後の水曜日。それどころか全国的に危険な暑さだというのだから大変な状況である。僕も行き帰りの自転車で汗だくになってしまうので、特に行きで教室に入る前は色々気を遣わないといけない。

 そんな本日の始まりは昨日のことを路ちゃんに謝罪するところから始まる。野島さんを連れて来てしまって……と言うと、野島さんに失礼なので僕の急な思い付きで行動したことを謝った。

「ううん、全然大丈夫。おかげで野島さんと話せるきっかけになったし」

 しかし、路ちゃんは昨日のことを好意的に取ってくれたようで、僕はひとまず安心する。
 そして、そのまま席へ戻ろうとすると、途中で後ろからカッターシャツの首元を掴まれた。

「ぐえっ!」

「リョウスケ、ストップ」

「な、なんでそんな止め方するの花園さん!?」

「声を出すのも億劫になるほど暑いからです」

 絶対嘘だと思いながらも僕は花園さんと向かい合う。

「何か用事?」

「……ここでは何なので一旦廊下に出ましょう」

 そう言われて花園さんへ付いて行くと同時に僕はデジャヴを感じた。先週の金曜に水原先輩から話があると言われた時に似ている気がしたからだ。しかも花園さんからの話になれば十中八九路ちゃんのことになる。

「最近のミチちゃんなのですが……」

「やっぱりそうか」

「何も言っていませんが?」

「あっ、ごめん。どうぞ」

「はい。最近のミチちゃんなのですが……うーん」

 続きを言う前に花園さんは悩み始める。

「なんと言ったらいいんでしょうか。とても難しいです」

「あれ? 疲れてるように見えるって話じゃないの?」

「色々やっているのですから疲れることもあるでしょう。それとは別に……違和感があるのです。リョウスケは何か心当たりがありませんか?」

「違和感? それで言うなら疲れ気味なのがいつもと違う感じだったけど、そうじゃないならわからないな」

「まぁ、華凛がわからないならリョウスケもわかりませんよね」

「否定はできないよ。僕よりも花園さんの方が接する時間長いだろうし」

「その自覚があるなら……いえ、それはこの際置いておきます」

「そういえば部活の先輩もミチちゃんのことを気にかけてたけど、それも違和感の話だったのかな?」

「といいますと?」

「その先輩から紹介された塾に通っているけど、その時も疲れている……というか、ちょっと様子が違ったみたいなんだ」

 僕の言葉を聞いて花園さんは再び考え始めるので、僕もここ最近の路ちゃんを思い返してみる。けれど、やっぱり僕の印象は疲労で眠たげにしている姿だった。

「……華凛の思い過ごし、だといいのですが」

「ごめん。僕が違和感に気付いてないから今のところ何とも言えなくて」

「いえ。少しすっきりしました。持つべきものは吐き出す場所ですね」

「悩みをって付けてくれないと別の意味に聞こえるよ」

「華凛は悩んでいません。悩んでいるとしたら……良くないですね。これも全部暑さのせいです」

 そこで花園さんの話は終わったけど、まだ納得していないように見えた。

 花園さんは性格や感性が僕とかなり違う方だと思うから、今の路ちゃんから覚える違和感があるのは本当のことだろう。その違和感の正体がわからないのは、絶対に花園さんの悩みになっているはずだけど、残念ながら今の僕ではいい答えが思い付かない。
 水原先輩から言われたように、路ちゃんの様子を気にかけるようにしておかなければ。
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