451 / 942
2年生1学期
6月28日(火)晴れ 夢想する岸本路子その8
しおりを挟む
すっかり夏天気の火曜日。この日は先週の約束通り、路ちゃんから誘われた勉強会に参加する。参加者は僕、花園さん、大山さん、迷いに迷ってやって来た野島さんで、場所は図書室だ。相変わらずこの学校の図書室はテスト期間中の人気はそれほど高くないようで、5人の席も十分に確保できた。
「み、皆さん、本日はお集り頂きありがとうございます」
「ミチ、そんな畏まらなくても大丈夫だよ? のじぃはこう見えても優しくて絡みやすいから」
「そうそう……って、こう見えてってどう見えてるの? 褒められてた内容通りの見た目だと思うけど?」
大山さんと野島さんの早速の絡みを見て路ちゃんは何とも言えない笑いを見せる。どうやら路ちゃんと野島さんはほぼ初対面のようだ。
「リョウスケ。なぜわざわざ路ちゃんが緊張するような状況を作ってしまうんですか」
「ご、ごめん。野島さん、大山さんの友達だからてっきり繋がりがあるものかと……」
「まったく……」
花園さんにやや呆れながら言われて僕は反省する。昨日は反射的に野島さんを誘ってしまったけど、一旦立ち止まって考えるべきだった。
「はい、お喋り終わりー お勉強始めるよ~」
そんな場をまとめてくれたのは何故か大山さんで、そこから各々勉強を始める。そういえば、前回大山さんを加えた3人での勉強会の様子はあまり聞いていなかった。でも、どちらかといえば大山さんが教える側に回りそうなので、今みたく中心になって進めいたのかもしれない。
「はい。大山先生、質問したいところがあります」
「えっ? アタシに聞くの?」
「いやまぁ、隣だから聞いただけであって……じゃあ、岸本先生に頼もうかな?」
「あっ、えっと……わたしよりも亜里沙ちゃんの方がいいと思う……」
路ちゃんがそう言うと、花園さんは僕の方へ冷ややかな視線を向ける。この状況を作ってしまったのは僕のせいだから、この場は僕がフォローすべきだろう。
「いやいや、み……岸本さんも十分教えられると思うよ」
「うぶクン。なんで無理矢理苗字呼びに戻してるの? せっかく慣れたのに」
「へー 岸本さんは名前呼びなんだ。産賀くん、全自動苗字呼びマシーンかと思ってた」
「その認識ひどくない? まぁ、それはそれとして、うぶクンは遠慮せずに名前で呼べばいいじゃん」
「う、うん。路ちゃんも頼りにしていいと思うよ」
そこをわざわざツッコまれてしまうのは僕が堂々としていないせいだろう。改めてフォローの言葉を入れるけど、それを聞いた路ちゃんはあまり芳しくない表情になる。
「ううん。わたしは本当に全然だから……何なら今日も良助くんや亜里沙ちゃんに教えて欲しいくらいで……」
「そうなの? まぁ、塾通い始めたのってちょっと前からだし、そんなすぐに効果が出るわけじゃないか」
「亜里沙、今のは無意識頭いいマウントになってるよ」
「ち、違うよ、ミチ。アタシだってこの前のテストは正直微妙だったし、教えられるほどじゃないっていうか……」
「大丈夫、亜里沙ちゃんが悪く言ってるわけじゃないのはわかってるから。だからこそ、わからないところ聞いてもいい?」
そう言った路ちゃんは大山さんを見た後、僕の方にも目線を向けた。それに対して僕は大山さんの返事に合わせて頷く。
それからは主に僕と大山さんが教える側になって、3人の質問に答えながら勉強会が進んでいった。
ただ、勉強会が終わった上での反省を書くと、僕の路ちゃんへのフォローは的外れだった。勝手に教えられると決めつけたのも良くないし、野島さんとは初絡みなわけだから、謙遜ではなく本当に遠慮していたことを読み取なければいけなかったのだ。
テスト勉強はできたのにごちゃごちゃしてしまったのは全部僕のせいだ。明日改めて路ちゃんに謝っておこう。
「み、皆さん、本日はお集り頂きありがとうございます」
「ミチ、そんな畏まらなくても大丈夫だよ? のじぃはこう見えても優しくて絡みやすいから」
「そうそう……って、こう見えてってどう見えてるの? 褒められてた内容通りの見た目だと思うけど?」
大山さんと野島さんの早速の絡みを見て路ちゃんは何とも言えない笑いを見せる。どうやら路ちゃんと野島さんはほぼ初対面のようだ。
「リョウスケ。なぜわざわざ路ちゃんが緊張するような状況を作ってしまうんですか」
「ご、ごめん。野島さん、大山さんの友達だからてっきり繋がりがあるものかと……」
「まったく……」
花園さんにやや呆れながら言われて僕は反省する。昨日は反射的に野島さんを誘ってしまったけど、一旦立ち止まって考えるべきだった。
「はい、お喋り終わりー お勉強始めるよ~」
そんな場をまとめてくれたのは何故か大山さんで、そこから各々勉強を始める。そういえば、前回大山さんを加えた3人での勉強会の様子はあまり聞いていなかった。でも、どちらかといえば大山さんが教える側に回りそうなので、今みたく中心になって進めいたのかもしれない。
「はい。大山先生、質問したいところがあります」
「えっ? アタシに聞くの?」
「いやまぁ、隣だから聞いただけであって……じゃあ、岸本先生に頼もうかな?」
「あっ、えっと……わたしよりも亜里沙ちゃんの方がいいと思う……」
路ちゃんがそう言うと、花園さんは僕の方へ冷ややかな視線を向ける。この状況を作ってしまったのは僕のせいだから、この場は僕がフォローすべきだろう。
「いやいや、み……岸本さんも十分教えられると思うよ」
「うぶクン。なんで無理矢理苗字呼びに戻してるの? せっかく慣れたのに」
「へー 岸本さんは名前呼びなんだ。産賀くん、全自動苗字呼びマシーンかと思ってた」
「その認識ひどくない? まぁ、それはそれとして、うぶクンは遠慮せずに名前で呼べばいいじゃん」
「う、うん。路ちゃんも頼りにしていいと思うよ」
そこをわざわざツッコまれてしまうのは僕が堂々としていないせいだろう。改めてフォローの言葉を入れるけど、それを聞いた路ちゃんはあまり芳しくない表情になる。
「ううん。わたしは本当に全然だから……何なら今日も良助くんや亜里沙ちゃんに教えて欲しいくらいで……」
「そうなの? まぁ、塾通い始めたのってちょっと前からだし、そんなすぐに効果が出るわけじゃないか」
「亜里沙、今のは無意識頭いいマウントになってるよ」
「ち、違うよ、ミチ。アタシだってこの前のテストは正直微妙だったし、教えられるほどじゃないっていうか……」
「大丈夫、亜里沙ちゃんが悪く言ってるわけじゃないのはわかってるから。だからこそ、わからないところ聞いてもいい?」
そう言った路ちゃんは大山さんを見た後、僕の方にも目線を向けた。それに対して僕は大山さんの返事に合わせて頷く。
それからは主に僕と大山さんが教える側になって、3人の質問に答えながら勉強会が進んでいった。
ただ、勉強会が終わった上での反省を書くと、僕の路ちゃんへのフォローは的外れだった。勝手に教えられると決めつけたのも良くないし、野島さんとは初絡みなわけだから、謙遜ではなく本当に遠慮していたことを読み取なければいけなかったのだ。
テスト勉強はできたのにごちゃごちゃしてしまったのは全部僕のせいだ。明日改めて路ちゃんに謝っておこう。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
檸檬色に染まる泉
鈴懸 嶺
青春
”世界で一番美しいと思ってしまった憧れの女性”
女子高生の私が、生まれてはじめて我を忘れて好きになったひと。
雑誌で見つけたたった一枚の写真しか手掛かりがないその女性が……
手なんか届かくはずがなかった憧れの女性が……
いま……私の目の前ににいる。
奇跡的な出会いを果たしてしまった私の人生は、大きく動き出す……
少女が過去を取り戻すまで
tiroro
青春
小学生になり、何気ない日常を過ごしていた少女。
玲美はある日、運命に導かれるように、神社で一人佇む寂しげな少女・恵利佳と偶然出会った。
初めて会ったはずの恵利佳に、玲美は強く惹かれる不思議な感覚に襲われる。
恵利佳を取り巻くいじめ、孤独、悲惨な過去、そして未来に迫る悲劇を打ち破るため、玲美は何度も挫折しかけながら仲間達と共に立ち向かう。
『生まれ変わったら、また君と友達になりたい』
玲美が知らずに追い求めていた前世の想いは、やがて、二人の運命を大きく変えていく────
※この小説は、なろうで完結済みの小説のリメイクです
※リメイクに伴って追加した話がいくつかあります
内容を一部変更しています
※物語に登場する学校名、周辺の地域名、店舗名、人名はフィクションです
※一部、事実を基にしたフィクションが入っています
※タグは、完結までの間に話数に応じて一部増えます
※イラストは「画像生成AI」を使っています
片思いに未練があるのは、私だけになりそうです
珠宮さくら
青春
髙村心陽は、双子の片割れである姉の心音より、先に初恋をした。
その相手は、幼なじみの男の子で、姉の初恋の相手は彼のお兄さんだった。
姉の初恋は、姉自身が見事なまでにぶち壊したが、その初恋の相手の人生までも狂わせるとは思いもしなかった。
そんな心陽の初恋も、片思いが続くことになるのだが……。
冤罪をかけられ、彼女まで寝取られた俺。潔白が証明され、皆は後悔しても戻れない事を知ったらしい
一本橋
恋愛
痴漢という犯罪者のレッテルを張られた鈴木正俊は、周りの信用を失った。
しかし、その実態は私人逮捕による冤罪だった。
家族をはじめ、友人やクラスメイトまでもが見限り、ひとり孤独へとなってしまう。
そんな正俊を慰めようと現れた彼女だったが、そこへ私人逮捕の首謀者である“山本”の姿が。
そこで、唯一の頼みだった彼女にさえも裏切られていたことを知ることになる。
……絶望し、身を投げようとする正俊だったが、そこに学校一の美少女と呼ばれている幼馴染みが現れて──
18禁NTR鬱ゲーの裏ボス最強悪役貴族に転生したのでスローライフを楽しんでいたら、ヒロイン達が奴隷としてやって来たので幸せにすることにした
田中又雄
ファンタジー
『異世界少女を歪ませたい』はエロゲー+MMORPGの要素も入った神ゲーであった。
しかし、NTR鬱ゲーであるためENDはいつも目を覆いたくなるものばかりであった。
そんなある日、裏ボスの悪役貴族として転生したわけだが...俺は悪役貴族として動く気はない。
そう思っていたのに、そこに奴隷として現れたのは今作のヒロイン達。
なので、酷い目にあってきた彼女達を精一杯愛し、幸せなトゥルーエンドに導くことに決めた。
あらすじを読んでいただきありがとうございます。
併せて、本作品についてはYouTubeで動画を投稿しております。
より、作品に没入できるようつくっているものですので、よければ見ていただければ幸いです!
光のもとで1
葉野りるは
青春
一年間の療養期間を経て、新たに高校へ通いだした翠葉。
小さいころから学校を休みがちだった翠葉は人と話すことが苦手。
自分の身体にコンプレックスを抱え、人に迷惑をかけることを恐れ、人の中に踏み込んでいくことができない。
そんな翠葉が、一歩一歩ゆっくりと歩きだす。
初めて心から信頼できる友達に出逢い、初めての恋をする――
(全15章の長編小説(挿絵あり)。恋愛風味は第三章から出てきます)
10万文字を1冊として、文庫本40冊ほどの長さです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる