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2年生1学期
6月8日(水)晴れ時々曇り 松永浩太との歓談その2
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爽やかな気温の水曜日。この日の昼休みは久しぶりに隣の4組で松永や本田くんと一緒に昼食を取ることになった。というのも、一応明莉と昔馴染みである松永には彼氏ができたことを報告しておこうと思ったからだ。
明莉に許可も取っておいたので、僕は教室に入ってからさらりと松永に告げる。
「はあぁぁぁ!? なんでもっと早く言ってくれなかったの!?」
それに対して松永は一瞬だけ4組内にいる全ての視線が集まるくらいの大きな声で返してきた。
「いや、つい先週の話だし」
「先週わかった時点で知らせても良かったでしょ!? 何なら学校始まってからも2日寝かせてるし!」
「明莉に送れて知らされた時の僕とだいたい同じこと言ってるな。でも、すぐ身内以外に広めるのもどうかと思って」
「明莉ちゃんは俺の妹みたいなもんなんだから、そこに遠慮はいらないよ!」
別に松永へ遠慮したわけではなく、明莉に対する配慮なんだけど、そう言えないくらいに松永は興奮していた。伝えられた直後の僕もこんな感じだったんだろうか。
一方、フラットに聞いていた本田くんはそのままのテンションで僕に質問する。
「それでどういう奴と付き合ったんだ? 同級生?」
「うん、同級生らしい。でも、それ以外のことはまだ聞けてないんだ」
「なんで聞いてないの!? 一番重要なとこでしょうが!?」
「まぁ、焦らなくてもそのうち紹介されるだろうと思って」
「それだと俺が暫く気になって仕方なくなるじゃん!」
「良ちゃん。松永ってこんなに良ちゃんの妹に対して必死な感じだったっけ?」
あまりにうるさいせいか本田くんはそう聞いてくるので、僕は首を横に振った。確かに妹みたいなものだという言葉は何回も聞いたけど、こんな感じになるのは初めてのことだ。
すると、松永は聞かれてないのに自分で答え始める。
「だって、あんなに小さい頃から見てきた明莉ちゃんにいきなり彼氏できましたなんて言われても想像付かないんだもん。そりゃあ、俺に彼女できた時は興味あり気に聞いてたけど、それはあくまで野次馬的なやつだと思ってたし……本当にいつからそんな素振りあったの!?」
「4月頃から何か悩んでる風ではあったけど、僕は全く気付いてなかったよ」
「そ、そうか……りょーちゃんが気付かないなら俺も気付かないわな」
急に落ち着いた松永を見て、僕は少しだけ心が傷付く。いや、本当にどうして気付けないのだろうかと思うけど、仮に気付いたところで僕からアドバイスできることは何もなかった。
そう考えると、この件に関して僕は兄として何もできていなかったのでは……と改めて思い始めてしまう。
「とりあえず良ちゃんの妹さんはおめでとうってことで。ほら、2人とも早く弁当に手を付けないと昼休み終わるぞ」
「いや、ぽんちゃん。衝撃が大きくてちょっと手付けられない。あの明莉ちゃんがなぁ……」
「そう、あの明莉がだよ……」
「……倉さん。もしかしなくてもここ2日間の良ちゃんってこんな感じだった?」
「う、ううん。あんまり気にして無さそうだったけど……口にすると気になっちゃうんだと思う」
そんな2人の言葉があんまり耳に入らないほど、僕と松永はセンチな感じになってしまった。恐らく今回のそれは松永の空気に釣られてしまったところがある。
ただ、それと同時にこの何とも言えぬ感情を松永と共有できたのは良かったと思った。
「そうだよな。もう中学3年生だもんな、明莉ちゃん……」
「知らない間に大人の階段昇ってるよ、ほんと……」
明莉に許可も取っておいたので、僕は教室に入ってからさらりと松永に告げる。
「はあぁぁぁ!? なんでもっと早く言ってくれなかったの!?」
それに対して松永は一瞬だけ4組内にいる全ての視線が集まるくらいの大きな声で返してきた。
「いや、つい先週の話だし」
「先週わかった時点で知らせても良かったでしょ!? 何なら学校始まってからも2日寝かせてるし!」
「明莉に送れて知らされた時の僕とだいたい同じこと言ってるな。でも、すぐ身内以外に広めるのもどうかと思って」
「明莉ちゃんは俺の妹みたいなもんなんだから、そこに遠慮はいらないよ!」
別に松永へ遠慮したわけではなく、明莉に対する配慮なんだけど、そう言えないくらいに松永は興奮していた。伝えられた直後の僕もこんな感じだったんだろうか。
一方、フラットに聞いていた本田くんはそのままのテンションで僕に質問する。
「それでどういう奴と付き合ったんだ? 同級生?」
「うん、同級生らしい。でも、それ以外のことはまだ聞けてないんだ」
「なんで聞いてないの!? 一番重要なとこでしょうが!?」
「まぁ、焦らなくてもそのうち紹介されるだろうと思って」
「それだと俺が暫く気になって仕方なくなるじゃん!」
「良ちゃん。松永ってこんなに良ちゃんの妹に対して必死な感じだったっけ?」
あまりにうるさいせいか本田くんはそう聞いてくるので、僕は首を横に振った。確かに妹みたいなものだという言葉は何回も聞いたけど、こんな感じになるのは初めてのことだ。
すると、松永は聞かれてないのに自分で答え始める。
「だって、あんなに小さい頃から見てきた明莉ちゃんにいきなり彼氏できましたなんて言われても想像付かないんだもん。そりゃあ、俺に彼女できた時は興味あり気に聞いてたけど、それはあくまで野次馬的なやつだと思ってたし……本当にいつからそんな素振りあったの!?」
「4月頃から何か悩んでる風ではあったけど、僕は全く気付いてなかったよ」
「そ、そうか……りょーちゃんが気付かないなら俺も気付かないわな」
急に落ち着いた松永を見て、僕は少しだけ心が傷付く。いや、本当にどうして気付けないのだろうかと思うけど、仮に気付いたところで僕からアドバイスできることは何もなかった。
そう考えると、この件に関して僕は兄として何もできていなかったのでは……と改めて思い始めてしまう。
「とりあえず良ちゃんの妹さんはおめでとうってことで。ほら、2人とも早く弁当に手を付けないと昼休み終わるぞ」
「いや、ぽんちゃん。衝撃が大きくてちょっと手付けられない。あの明莉ちゃんがなぁ……」
「そう、あの明莉がだよ……」
「……倉さん。もしかしなくてもここ2日間の良ちゃんってこんな感じだった?」
「う、ううん。あんまり気にして無さそうだったけど……口にすると気になっちゃうんだと思う」
そんな2人の言葉があんまり耳に入らないほど、僕と松永はセンチな感じになってしまった。恐らく今回のそれは松永の空気に釣られてしまったところがある。
ただ、それと同時にこの何とも言えぬ感情を松永と共有できたのは良かったと思った。
「そうだよな。もう中学3年生だもんな、明莉ちゃん……」
「知らない間に大人の階段昇ってるよ、ほんと……」
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