424 / 942
2年生1学期
6月1日(水)曇り 拡散する大山亜里沙その8
しおりを挟む
6月が始まった水曜日。つまりは今年も残すところあと半年ということになり、何度目かわからない時間の流れの早さを感じる。
だからこそ、高校2年生のうちにできることはもっとやっておこう……と心の中では思うけど、なかなか動き出すのは難しいものだ。
でも、今日でテスト結果も全てわかったので、次のテストまで時間がある今こそ動き出す時なのかもしれない。
「ねぇねぇ、うぶクンは合計何点だったの?」
そんな日の最後のテストが返却された休み時間。僕の左斜め後ろの席から大山さんは話しかけてくる。
「えっと……865点」
「うそぉ!? アタシは832点だから負けてる……」
「まぁ、平均点で見たら僅差だから」
「いや、何気にアタシがうぶクンに負けるの初じゃなかったっけ? あれ? 実力テストとかだと負けてる?」
「どうだったかな。おごってる印象しかないからいつも負けてた気もする」
「でも、毎回そういうのかけてたワケじゃないから……惜しかったねぇ、うぶクン」
大山さんは憐れむようにそう言うけど、仮に今回勝負していたとして勝った後に困るのは僕の方だ。きっと何をおごって貰えばいいかテストの問題以上に悩んでいたに違いない。
「思ったよりもリアクションが薄い……勝者の余裕ってヤツ?」
「そ、そう言われても別に戦ってたわけじゃないし」
「……そういえばさ。うぶクンって大喜びすることあるの?」
「僕のことなんだと思ってるの……?」
「ゴメンゴメン。感情がないとか言いたいワケじゃなくて、見た覚えがなかったから。焦ったり、ツッコんだりしてる時はテンション上がってそうだケド」
「それはテンションと違う気もするけど……大喜びかぁ」
言われてみると僕はわかりやすく喜ぶよりも噛みしめて喜ぶタイプな気がする。たとえば……ゲームで強敵や倒したりレアな素材がドロップしたりした時は小さくガッツポーズするとか。
「じゃあ、今うぶクンの買ってた100万円の宝くじが当たりました。その時のリアクションをどうぞ」
「えっ……よ、よっしぁー」
「言い慣れてないカンある」
「たぶんそうなったら現実かどうか疑うところから始めると思う」
「それもそうか……結構違うんだね」
「何が?」
「ほら、明莉ちゃんは大喜びする時とかめっちゃわかりやすいリアクションするでしょ?」
大山さんは当然のことのように言うけど、そんなに我が妹が歓喜するところを見たことがあるのだろうか。
いや、LINEでのやり取りからそういうところを読み取ったのかもしれないけれど。
「うぶクンもお兄ちゃんなんだからリアクションで多少似た部分があるのかなーって思ってた」
「あんまり意識したことはないけど、大山さんが言うなら違うんだろうね」
「逆にアタシの兄貴とお姉ちゃんは結構同じリアクションするんだよね。1人くらい違っても良さそうなのに」
「へー 自分でわかるくらいには似てるんだ。明莉と同じところ……」
もう一度考えてみるけど、リアクションに限って言えばやっぱり似ているところは思い付かない。普段の会話の多くは僕がツッコミ寄りで、明莉はボケ寄りだからだろうか。
「まぁ、うぶクンもいつかは大喜びするようなことが起こったら今までにないリアクションを見せてくれるかもしれないし、期待しとこー」
「何の期待なの……それより大山さん、最近明莉とやり取りしてる件なんだけど」
「あっ。それは……乙女の秘密ということで、黙秘します」
「ええっ!?」
「あははっ。やっぱりうぶクンは驚いたりしてる時の方がテンション上がってるね!」
大山さんはそう言いながらその場を離れていくので、僕はそれ以上追及できなかった。
素直に聞かせて貰えるとは思ってなかったけど、秘密と言われてしまうとちょっと気になってしまう。
でも、明莉のリアクションまで把握し始めた大山さんなら何も問題ない……けど、兄として気になる……何とも複雑な気持ちだ。
だからこそ、高校2年生のうちにできることはもっとやっておこう……と心の中では思うけど、なかなか動き出すのは難しいものだ。
でも、今日でテスト結果も全てわかったので、次のテストまで時間がある今こそ動き出す時なのかもしれない。
「ねぇねぇ、うぶクンは合計何点だったの?」
そんな日の最後のテストが返却された休み時間。僕の左斜め後ろの席から大山さんは話しかけてくる。
「えっと……865点」
「うそぉ!? アタシは832点だから負けてる……」
「まぁ、平均点で見たら僅差だから」
「いや、何気にアタシがうぶクンに負けるの初じゃなかったっけ? あれ? 実力テストとかだと負けてる?」
「どうだったかな。おごってる印象しかないからいつも負けてた気もする」
「でも、毎回そういうのかけてたワケじゃないから……惜しかったねぇ、うぶクン」
大山さんは憐れむようにそう言うけど、仮に今回勝負していたとして勝った後に困るのは僕の方だ。きっと何をおごって貰えばいいかテストの問題以上に悩んでいたに違いない。
「思ったよりもリアクションが薄い……勝者の余裕ってヤツ?」
「そ、そう言われても別に戦ってたわけじゃないし」
「……そういえばさ。うぶクンって大喜びすることあるの?」
「僕のことなんだと思ってるの……?」
「ゴメンゴメン。感情がないとか言いたいワケじゃなくて、見た覚えがなかったから。焦ったり、ツッコんだりしてる時はテンション上がってそうだケド」
「それはテンションと違う気もするけど……大喜びかぁ」
言われてみると僕はわかりやすく喜ぶよりも噛みしめて喜ぶタイプな気がする。たとえば……ゲームで強敵や倒したりレアな素材がドロップしたりした時は小さくガッツポーズするとか。
「じゃあ、今うぶクンの買ってた100万円の宝くじが当たりました。その時のリアクションをどうぞ」
「えっ……よ、よっしぁー」
「言い慣れてないカンある」
「たぶんそうなったら現実かどうか疑うところから始めると思う」
「それもそうか……結構違うんだね」
「何が?」
「ほら、明莉ちゃんは大喜びする時とかめっちゃわかりやすいリアクションするでしょ?」
大山さんは当然のことのように言うけど、そんなに我が妹が歓喜するところを見たことがあるのだろうか。
いや、LINEでのやり取りからそういうところを読み取ったのかもしれないけれど。
「うぶクンもお兄ちゃんなんだからリアクションで多少似た部分があるのかなーって思ってた」
「あんまり意識したことはないけど、大山さんが言うなら違うんだろうね」
「逆にアタシの兄貴とお姉ちゃんは結構同じリアクションするんだよね。1人くらい違っても良さそうなのに」
「へー 自分でわかるくらいには似てるんだ。明莉と同じところ……」
もう一度考えてみるけど、リアクションに限って言えばやっぱり似ているところは思い付かない。普段の会話の多くは僕がツッコミ寄りで、明莉はボケ寄りだからだろうか。
「まぁ、うぶクンもいつかは大喜びするようなことが起こったら今までにないリアクションを見せてくれるかもしれないし、期待しとこー」
「何の期待なの……それより大山さん、最近明莉とやり取りしてる件なんだけど」
「あっ。それは……乙女の秘密ということで、黙秘します」
「ええっ!?」
「あははっ。やっぱりうぶクンは驚いたりしてる時の方がテンション上がってるね!」
大山さんはそう言いながらその場を離れていくので、僕はそれ以上追及できなかった。
素直に聞かせて貰えるとは思ってなかったけど、秘密と言われてしまうとちょっと気になってしまう。
でも、明莉のリアクションまで把握し始めた大山さんなら何も問題ない……けど、兄として気になる……何とも複雑な気持ちだ。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。
スタジオ.T
青春
幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。
そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。
ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。
令嬢の名門女学校で、パンツを初めて履くことになりました
フルーツパフェ
大衆娯楽
とある事件を受けて、財閥のご令嬢が数多く通う女学校で校則が改訂された。
曰く、全校生徒はパンツを履くこと。
生徒の安全を確保するための善意で制定されたこの校則だが、学校側の意図に反して事態は思わぬ方向に?
史実上の事件を元に描かれた近代歴史小説。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる